この講義では,現代社会に大きな役割を持っている「科学技術」(Science Based Technology)の諸特徴を,歴史学的手法(世界史の知識)の学習を通して,読み解くことを目標とする.科学技術は,生産力発展に関わる「技術」,やがて新技術開発に利用される「科学」,の2つを構成要素としているが,現在は両者が融合していると考えられる.この融合までの過程を,「歴史学」(過去の事実を分析する学問),および「科学技術社会論」(科学技術と社会・経済との関連を理解する学問)に関わる基礎概念を学ながら,歴史順に学習してゆく.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
A1.現代の科学技術について考える -科学技術は現代社会にとって必要か?-
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科学技術史の方法、現状分析と歴史分析の違いを理解する.
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2週 |
A2.科学と技術の概念区分-技術とはなにか- |
最古の技術について、技術の基本的な定義を理解したうえで、事例を理解する.
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3週 |
A3.古代文明と技術-灌漑技術が古代文明を作り上げたのは本当か?- |
技術が与える社会的影響について、古代文明の登場を事例に理解する.
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4週 |
A4.古代の鉄器技術 -鉄器の登場により何が大きく変わったか?- |
古代技術における鉄器登場の社会的意味について、理解する.
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5週 |
A5.科学の起源-なぜ,科学は古代ギリシャで誕生したのか?- |
科学の起源を社会的条件、歴史的条件に注目することで理解する.
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6週 |
A6.ギリシャ科学の変質-ギリシャ科学の伝統は,なぜアレクサンドリアで変質したのか?- |
自然科学の発展が、地理的、思想的な条件により、大きく変質することを理解する.
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7週 |
A7.ローマ帝国の技術-ローマ時代最盛期に生産技術が発展しなかった理由は?- |
技術発展は社会的条件により推進、阻害されることを事例を通して理解する.
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8週 |
A8.ローマ帝国の科学-ギリシャ科学の変質- |
科学のあり方が社会的諸条件により大きく変化することを、ギリシャとローマを比較することで理解する.
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2ndQ |
9週 |
B1.近代科学の源流 -なぜギリシャ科学は弾圧され,どのようにアラビア科学登場したか?- |
17世紀に登場する近代科学の源流を、アラビア科学に求め、その役割と限界を理解する.
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10週 |
B2.中世の西欧世界とギリシャ科学-「ヨーロッパ優位の時代」はどのように生まれたか? - |
西欧で誕生した近代科学の直接の期限を、12世紀ルネサンス登場に求め、その背景を理解する.
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11週 |
B3.ルネサンスと「新しい科学」-ダ・ヴィンチは「近代科学」にどんな貢献をしたのか? - |
近代科学の直接的起源を、職人的伝統の役割に注目して理解する.
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12週 |
B4.科学革命の起源-地動説は科学革命にどんな役割をもったか? - |
17世紀科学革命とは、スコラ科学から近代科学への転換として現れる事例を、天文学を中心に理解する.
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13週 |
B5.科学革命の勃発-ガリレイは誰と戦ったのか? - |
近代科学が成立するプロセスにおいてい地上の力学と天上の力学との融合過程として理解する.
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14週 |
B6.科学革命の完了-科学の中心がイギリスに移動したのはなぜ?- |
近代科学が完成するには、科学理論と科学制度の両面が必要であることを理解する.
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15週 |
B7.ニュートン力学の拡張-力学的自然観の普及- |
近代科学は天体力学をモデルとして、他の自然現象の理解につながる特徴を理解する.
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16週 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
C1.熟練工と「道具」-マニュファクチュアの利点と限界は何か? - |
生産力向上の第1の要素に分業がある点を、マニュファクチュアの事例から理解する.
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2週 |
C2.道具と機械の概念区分- 紡糸作業体験から道具の限界を知る - |
生産力向上の第2の要素に労働手段としての機械の登場があることを、産業革命を事例に理解する.
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3週 |
C3.紡績機の発明に始まる産業革命-機械における作業機の登場の意味 - |
産業革命の直接の起源である綿紡績工場を通して、作業機械の役割を理解する.
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4週 |
C4.産業革命における動力機(1)-動力機としての水車の役割と限界はなにか? - |
発達した機械の3要素における、動力機の意味を、水車の役割と限界を通して理解する.
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5週 |
C5.産業革命における動力機(2)-蒸気機関:ポンプから工場用動力へ - |
発達した機械の3要素における、動力機の意味を、蒸気機関と水車とを比較して、理解する.
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6週 |
C6.産業革命の確立と工作機械-機械を作る機械の登場 - |
産業革命完成の3要素における、工作機械の役割について理解する.
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7週 |
C7.産業革命の確立と製鉄技術-鉄の時代の始まり - |
産業革命後の発展を支える新素材としての鋼鉄の役割を、製鉄技術を通して理解する.
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8週 |
D1.エンジニア教育の登場-職人からエンジニアへの転換 - |
イギリス産業革命を追う各国の産業発展政策を、エンジニア養成を事例に理解する.
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4thQ |
9週 |
D2.第二次科学革命-応用可能な「物理学」の登場- |
第二次科学革命がどのように登場したか、その起源に関わる事象、背景を理解する.
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10週 |
D3.科学依存型技術の登場-化学工業と電信工業- |
科学依存型技術は19世紀に登場する.この登場のプロセスを化学工業、電気工業を事例に理解する.
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11週 |
D4.アメリカ的生産方式の登場 -アメリカ産業革命から大量生産システム確立まで - |
大量生産システムは19世紀アメリカで登場する。その登場プロセスをアメリカンシステムを事例で理解する.
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12週 |
D5.アメリカンシステムを映像資料で理解する. |
映像資料を利用して、アメリカ独立革命から第1次世界大戦までの経過を通して、アメリカンシステム形成過程を理解する.
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13週 |
D6.ドイツ産業革命とその後-ドイツ型科学大国への道- |
科学依存型産業を拡大させて成長した国家の事例として19世紀ドイツの姿を理解する.
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14週 |
D7.帝国主義による世界分割と科学技術-通信主権獲得を巡る世界無線通信設置競争- |
20世紀という「科学技術の世紀」を、エレクトロニクス技術を事例に理解する.
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15週 |
D8.総括 |
1年間の講義を通して、科学技術と社会との関わりについて、再確認する.
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 社会 | 地歴 | 産業活動(農牧業、水産業、鉱工業、商業・サービス業等)などの人間活動の歴史的発展過程または現在の地域的特性、産業などの発展が社会に及ぼした影響について理解できる。 | 3 | |
人間活動と自然環境との関わりや、産業の発展が自然環境に及ぼした影響について、地理的または歴史的観観点から理解できる。 | 3 | |
社会や自然環境に調和した産業発展に向けた現在までの取り組みについて理解できる。 | 3 | |
日本を含む世界の様々な生活文化、民族・宗教などの文化的諸事象について、歴史的または地理的観点から理解できる。 | 3 | |
国家間や国家内で見られる、いわゆる民族問題など、文化的相違に起因する諸問題について、地理的または歴史的観点から理解できる。 | 3 | |
文化の多様性を認識し、互いの文化を尊重することの大切さを理解できる。 | 3 | |
公民 | 哲学者の思想に触れ、人間とはどのような存在と考えられてきたかについて理解できる。 | 2 | |
諸思想や諸宗教において、自分が人としていかに生きるべきと考えられてきたかについて理解できる。 | 2 | |
諸思想や諸宗教において、好ましい社会と人間のかかわり方についてどのように考えられてきたかを理解できる。 | 2 | |
民主政治の基本的原理、日本国憲法の成り立ちやその特性について理解できる。 | 2 | |
資本主義経済の特質や財政・金融などの機能、経済面での政府の役割について理解できる。 | 2 | |
現代社会の政治的・経済的諸課題、および公正な社会の実現に向けた現在までの取り組みについて理解できる。 | 2 | |
地歴・公民 | 現代科学の考え方や科学技術の特質、科学技術が社会や自然環境に与える影響について理解できる。 | 4 | |
社会や自然環境に調和し、人類にとって必要な科学技術のあり方についての様々な考え方について理解できる。 | 4 | |
今日の国際的な政治・経済の仕組みや、国家間の結びつきの現状とそのさまざまな背景について理解できる。 | 3 | |
環境問題、資源・エネルギー問題、南北問題、人口・食糧問題といった地球的諸課題とその背景について理解できる。 | 3 | |
国際平和・国際協力の推進、地球的諸課題の解決に向けた現在までの取り組みついて理解できる。 | 3 | |
工学基礎 | 技術史 | 技術史 | 歴史の大きな流れの中で、科学技術が社会に与えた影響を理解し、自らの果たしていく役割や責任を理解できる。 | 4 | |
技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を理解し、社会における技術者の役割と責任を説明できる。 | 2 | |
技術者を目指す者として、社会での行動規範としての技術者倫理を理解し、問題への適切な対応力(どうのように問題を捉え、考え、行動するか)を身に付けて、課題解決のプロセスを実践できる。 | 2 | |
説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。 | 2 | |
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。 | 2 | |
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。 | 2 | |
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。 | 2 | |
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。 | 2 | |
知的財産の社会的意義や重要性の観点から、知的財産に関する基本的な事項を説明できる。 | 2 | |
知的財産の獲得などで必要な新規アイデアを生み出す技法などについて説明できる。 | 2 | |
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。 | 2 | |
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。 | 2 | |
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。 | 2 | |
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。 | 2 | |
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。 | 2 | |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 相手の意見を聞き、自分の意見を伝えることで、円滑なコミュニケーションを図ることができる。 | 3 | |
相手を理解した上で、説明の方法を工夫しながら、自分の意見や考えをわかりやすく伝え、十分な理解を得ている。 | 3 | |
集団において、集団の意見を聞き、自分の意見も述べ、目的のために合意形成ができる。 | 3 | |
目的達成のために、考えられる提案の中からベターなものを選び合意形成の上で実現していくことができ、さらに、合意形成のための支援ができる。 | 3 | |
ICTやICTツール、文書等を基礎的な情報収集や情報発信に活用できる。 | 3 | |
ICTやICTツール、文書等を自らの専門分野において情報収集や情報発信に活用できる。 | 3 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、そこから主要な原因を見出そうと努力し、解決行動の提案をしようとしている。 | 3 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、発見した課題について主要な原因を見出し、論理的に解決策を立案し、具体的な実行策を絞り込むことができる。 | 3 | |
事象の本質を要約・整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。 | 3 | |
複雑な事象の本質を整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。結論の推定をするために、必要な条件を加え、要約・整理した内容から多様な観点を示し、自分の意見や手順を論理的に展開できる。 | 3 | |
態度・志向性(人間力) | 態度・志向性 | 態度・志向性 | 身内の中で、周囲の状況を改善すべく、自身の能力を発揮できる。
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集団の中で、自身の能力を発揮して、組織の勢いを向上できる。 | 3 | |
学生であっても社会全体を構成している一員としての意識を持って、行動することができる。 | 4 | |
市民として社会の一員であることを理解し、社会に大きなマイナス影響を及ぼす行為を戒める。人間性・教養、モラルなど、社会的・地球的観点から物事を考えることができる。 | 4 | |
チームワークの必要性・ルール・マナーを理解し、自分の感情の抑制、コントロールをし、他者の意見を尊重し、適切なコミュニケーションを持つとともに、当事者意識を持ち協調して共同作業・研究をすすめることができる。 | 3 | |
組織やチームの目標や役割を理解し、他者の意見を尊重しながら、適切なコミュニケーションを持つとともに、成果をあげるために役割を超えた行動をとるなど、柔軟性を持った行動をとることができる。 | 3 | |
先にたって行動の模範を示すことができる。口頭などで説明し、他者に対し適切な協調行動を促し、共同作業・研究をすすめことができる。 | 3 | |
目指すべき方向性を示し、先に立って行動の模範を示すことで他者に適切な協調行動を促し、共同作業・研究において、系統的に成果を生み出すことができる。リーダーシップを発揮するために、常に情報収集や相談を怠らず自身の判断力をも磨くことができる。 | 2 | |
法令を理解し遵守する。基本的人権について理解し、他者のおかれている状況を理解することができる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識している。 | 3 | |
法令を理解し遵守する。研究などで使用する、他者のおかれている状況を理解できる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識し、身近で起こる関連した情報や見解の収集に努めるなど、技術の成果が社会に受け入れられるよう行動できる。 | 3 | |