【教養選択Ⅰ】現代物理学入門

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 【教養選択Ⅰ】現代物理学入門
科目番号 00720 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 電気工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 必要資料は、授業内で配布する。副読本を挙げるので、自分で買うか図書館で調べるかなどして、適宜参照してほしい。
優しい基礎物理(本校の応用物理の教科書):応用物理の授業で扱った内容を確認するのに使うのと、量子論を導入するのに使う。その他適宜参照用。(どこをやっているかを確認するための「地図」として利用)
副読本:キッテル 熱物理学、朝永振一郎:量子力学Ⅰ(みすず書房)、
シュッツ:相対論入門Ⅰ.特殊相対論,Ⅱ.一般相対論入門(丸善出版) (この本が相対論部分のメインです。)、
内山龍雄:一般相対性理論(裳華房) [一般相対論の本格的な本]、※相対性理論(岩波)は特殊相対論の方に紙数を割いているが違う本なので混同しないこと。佐藤文隆:相対論と宇宙論 [絶版の本、曲がった空間が慣れない人が読んでおくと特殊相対論との違いも分かる良い本]
Mathius Blau氏の講義ノート(英語、1000ページ) http://www.blau.itp.unibe.ch/newlecturesGR.pdf [どこまで取り入れられるか分からないが、講義内容を充実させるために参照予定]
担当教員 藤井 俊介

到達目標

現代物理学の柱として重要な量子論の初等的入門と特殊相対性理論、一般相対性理論がどんなものなのかの概略をつかむことを目標とする。それぞれの理解に付随する、いくつかの線形代数やテンソル計算なども是非身に着けてほしい。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安可であるレベルの目安未到達レベルの目安
プランク定数の必要性が理解・説明できる。プランクの熱輻射(プランク分布)を、ボルルマン分布・アインシュタインの量子仮説・定常波の足し上げを通して導出できる。光電効果なども説明できる。プランクの熱輻射(プランク分布)を、ボルルマン分布・アインシュタインの量子仮説・定常波の足し上げの意味を説明できる。光電効果なども説明できる。プランクの熱輻射(プランク分布)を、ボルルマン分布・アインシュタインの量子仮説・定常波の足し上げの意味のいずれか2つ以上は説明できる。光電効果なども説明できる。プランクの熱輻射(プランク分布)を、ボルルマン分布・アインシュタインの量子仮説・定常波の足し上げの意味を何も説明できる。光電効果も説明できない。
特殊相対論のローレンツ変換とその応用作図を用いた特殊相対論のローレンツ変換の導出ができる。ローレンツ変換の関わる物理現象に応用ができる。作図を用いた特殊相対論のローレンツ変換の説明ができる。ローレンツ変換の関わる物理現象の定性的説明ができる。作図を用いた特殊相対論のローレンツ変換の状況設定が分かる。ローレンツ変換の関わる物理現象の状況設定が説明できる。作図を用いた特殊相対論のローレンツ変換について何も分からない。ローレンツ変換の関わる物理現象が何も分からない。
特殊相対論の一般相対論への一般化とその応用落下するエレベーターの思考実験を用いて、特殊相対論から一般相対論へ拡張できる。アインシュタイン方程式を導出できる。リッチテンソルの計算ができる。エネルギー運動量テンソルを用いた応用ができる。一般相対論的な現象の説明ができる。落下するエレベーターの思考実験を用いて、特殊相対論から一般相対論へ拡張の定性的説明ができる。アインシュタイン方程式の導出の流れが説明できる。リッチテンソルの定義が言える。エネルギー運動量テンソルの具体例が言える。一般相対論的な現象の定性的説明ができる。落下するエレベーターの思考実験を用いて、特殊相対論から一般相対論へ拡張の状況設定の説明ができる。アインシュタイン方程式の幾何学的特徴が言える。エネルギー運動量テンソルの意味を説明できる。一般相対論的な現象の例が挙げられる。落下するエレベーターの思考実験を用いて、特殊相対論から一般相対論へ拡張の状況設定の説明が何もできない。アインシュタイン方程式の幾何学的特徴が何も言えない。エネルギー運動量テンソルの意味を何も説明できない。一般相対論的な現象の例が1つも挙げられない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
現代物理学の扱う分野は、主に量子論と相対論の二本柱である。本講義は、量子論は、プランク輻射やプランク定数の導入にとどめ、特殊相対論、一般相対論に大部分の時間を割いて講義する。相対論は、数式の海のおぼれてしまわないように、物理的意味を確認しながら進める。授業の復習用に、現代物理学入門の基礎演習プリントも配るので、絶対にやってほしい。課題は、提出された基礎演習プリントの一部をピックアップしてノート課題として、範囲指定して指示する。
授業の進め方・方法:
教科書をベースに進めていく。学修単位で2単位相当なので、基礎演習プリントを10回ほど配布し知識の定着を図る。紛らわしい基礎概念の峻別とゆるぎない基礎を身につけるために数学的な復習ともふんだんに取り入れ、必要な新概念も導入ていく。相対論は、一見、複雑な計算が出てくるが、幾何学なので図形的イメージで難しい概念を整理して理解していくことを大切にしたい。
注意点:
基礎演習プリントは、学修単位としての成績根拠資料となるので、毎回、丸付け・訂正の上、提出すること。復習プリントが、1枚でも足りない場合は、学習単位分の根拠資料が不足するので、無条件にDとなるので、注意すること。成績は、基礎演習プリント(10枚提出は前提)+他の提出物で40%、定期テスト60%とする。前期中間試験は行わない。前期末試験のみ実施する。成績表の評価方法は、このシラバスの通りとする。再テストは、必ずしも行うとは限らな(行わないこともある)が、再テストを行う場合の基準は、再テストのみで60点以上が合格条件である。追加課題等の補填は一切行わない。再テストをやる場合は、1回のみであり、それ以外の再評価は行わない。初見の問題にも対応できるよう、普段から授業をよく聞き、暗記型学習から脱却することがとても大事なる。本試験も再テストも、テストで示される基準以上の物理的思考力を持っているかを確認することが趣旨なので、そこを理解しておいてほしい。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 現代物理学の概観と周辺専門分野の紹介、自然単位系とMKSA単位系、 現代物理学を支える基礎分野が概観できる。自然単位系とMKSA単位系の違いが説明できる。
2週 1円玉を10個を振って統計分布を調べる実験、微視状態の数え方、熱平衡状態、ボルツマン分布へ 熱・統計力学の背景を大づかみにつかむ。実験するので、レポート提出がある。翌週の朝に、物理実験室前のレポートボックスに表紙をつけて提出。
3週 溶鉱炉の問題、ウィーンの変位則。プランク分布の導出、プランクの量子仮説、アインシュタインの関係、粒子性と波動性、光子 定常波の個数のカウント、ボルツマン分布、プランクの量子仮説を用いてプランク分布の導出ができる。アインシュタインの関係とその物理的意味が説明できる。
4週 特殊相対論入門:特殊相対論の基本原理、マイケルソン・モーレーの実験、時空図、間隔の不変性 特殊相対論の基本原理が説明できる。この基本仮定を徹底的に推し進めることによって、ニュートン力学では前提となっていた絶対時間・絶対空間の考え方が、大きく揺らぐことを理解できる。
5週 ローレンツ変換の導出。双子のパラドックスを解く。線形代数の部分的復習(ベクトルの基底と成分、行列演算、行列式など)と微分・積分・3次元的内積の復習 光速不変の原理と時空の変換が時間と空間のみに正比例する(行列とベクトルの積で表現できる)ことを仮定すると、ローレンツ変換が得られることを理解できる。双子のパラドックスは何を見過ごしているのかについて説明できる。初等的な線形代数や微分積分を思い出せる。
6週 特殊相対論におけるベクトル代数:4元速度、4元運動量、4次元平坦時空における内積、質量ゼロ粒子としての光子 ローレンツ変換に基づきながら、4次元時空における速度や運動量の設定が説明できる。
7週 特殊相対論におけるテンソル解析1(初等的な微分幾何入門):1形式(双対ベクトル)の導入、4次元時空における1形式同士への内積への拡張 1形式の意味が説明できる。1形式の成分と基底を区別できる。
8週 特殊相対論におけるテンソル解析1(初等的な微分幾何入門):下つき2階テンソル,計量テンソル、一般のテンソル、添え字の上げ下げ ベクトルと1形式(双対ベクトル)の理解のもと、一般のテンソルがどんなものかを説明できる。
2ndQ
9週 流体の「連続体近似」という考え方、特殊相対論以前の流体力学(Eulerの運動方程式(完全流体に限る)、連続の方程式)、ガウスの法則とストークスの定理 相対論以前の流体力学の考え(連続の方程式やオイラーの運動方程式)が説明できる。ガウスの法則を駆使して単位面積当たりの力としての圧力が単位体積あたりの力に置き換えて表示できることを説明できる。
10週 特殊相対論における完全流体、ストレスエネルギーテンソルの導入、特殊相対論的流体力学 相対論以前の流体力学の知識を参考にしながら、特殊相対論的流体力学へ拡張できる。いくつかの保存則について説明できる。
11週 一般相対論入門-重力の幾何学化ー、重力と曲率の関係、Christoffel記号と重力、等価原理とエレベーターの思考実験、行列式の再復習、計量と時空の体積要素 一般相対論における重力の考え方について説明できる、エレベーターの思考実験について説明できる、行列式(3次元,4次元の行列,行列式展開ができる)、計量と時空の体積要素の説明ができる。
12週 共変微分の導入、4次元時空におけるガウスの法則、平行移動と測地線の方程式、補足:数学で習ってきた曲線の(位置ベクトルの)パラメーター表示 計量がMinkowski的(=平坦)でないときの微分では時空点ごとに座標を張り替える必要がある。その意味でのChristoffel記号の意味づけがわかる。応用物理等ででてくる位置ベクトルのパラメータ表示を導入し、平坦でない時空に対するパラメータ表示と一般座標での表示を説明、導出できる。
13週 地球表面のベクトルの平行移動のたとえ話、曲率テンソルの導入、Riemannテンソルの性質、共変微分を用いたJacobi恒等式からBianchi恒等式を導く Riemannの曲率テンソルの定義が言えて、少なくとも形式的に計算できる。Riemannテンソルの性質が示せる。Jacobi恒等式が証明できる。Jacobi恒等式から、Bianchi恒等式2種を導ける。
14週 測地線偏差方程式とEinstein方程式 測地線偏差方程式の意味と直感的な対応例を答えることができる。Bianchi恒等式からEinstein方程式を導ける
15週 後期末試験 後期末試験
16週 時間調整枠 できなかった分の補講 時間調整枠 できなかった分の補講

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合55000045100
基礎的能力3000003060
専門的能力2500001540
分野横断的能力0000000