応用物理

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 応用物理
科目番号 30160 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 電子工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 [教科書]やさしい基礎物理(森北出版) /課題プリント(10-13回分)・補充プリント(適宜配布)・[副教材]高専の応用物理(小暮陽三監修;森北出版)、物理学入門I (市村宗武ほか著;東京化学同人)、考える力学(兵頭俊夫著;学術図書)   ※副教材は買うことを勧める本。自分で適宜選択する。高専の応用物理は、微積分を使った「力学・電磁気・熱・波動・特殊相対性理論」などをコンパクトにまとめている。物理学入門Iは、力学のみであるが、一般論から丁寧に議論をしてあり、例題なども比較的多いため、手を動かしながら理解できる。考える力学は、巻末に解析力学などより高度の力学の内容も入っており、各問題にたいして巻末に簡単な解答がついている。
担当教員 藤井 俊介

到達目標

【目的】学生は、力学の物理量を微積分で表現することによって、力学が一般化できることを知りその体系に習熟することによって、より広いクラスの問題にも対応できる研究基礎力を身につけることを目的とする。微積分を用いた力学に習熟することによって、学生は物理が「工学の基礎」と位置づけられる背景を理解し、専門分野の深化につなげる素養を持つことも目的とする。線形代数(ベクトル、成分表示、内積)や解析学(微分、テイラー展開、積分)、微分方程式(特に変数分離型)と力学を組み合わせて、学生が使うことができるようになることも目的とする。

【目標】
1.1年生で習った力学の諸概念の定義や法則が、説明できること。(分からない場合、質問できること)
2.物理量を微分や積分で表現できること(グラフの傾きと微分、グラフの面積と積分、スカラー量とベクトル量の区別など)
3.問題に合わせて、運動方程式(=微分方程式)やエネルギー保存則を立てることができるだけでなく、初期条件に合わせて解を求めることができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
物理量の定義、物理法則が説明できる物理量の定義、物理法則が人に分かるように説明できる物理量の定義、物理法則が自分で説明できる教科書を見れば、定義や物理的背景の書いてある場所が分かる。復習するときに、教科書の言わんとすることが既習事項と結びつけながら読みこなすことができる。物理量の定義、物理法則が説明できない。
物理量を微分や積分で表現できるどんな物理量でも微分や積分で置き換えて表現できる物理量を微分や積分で表現できるグラフの縦軸・横軸の物理量が言える。傾きの物理的意味が説明できる。傾きと微分、面積と積分を関連付けることができる。物理量を微分や積分で表すことができない
問題に合わせて、数学的に解を求めることができる問題に合わせて、数学的に解を求めることができる問題に合わせて、微分方程式を立てることができる問題集の解答・解説の意味が分かる。分かっていない部分があることは自覚できる。方程式のイコールと計算結果のイコールの違いが説明できる。自分なりに微分方程式を間違っていても立てようとする意欲がある。グラフの傾きをイメージしながら微分方程式を作れるよう努力できる。問題に合わせて、微分方程式を立てることができない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
まずは、過去に習った力学、数学を総復習しながら、微積分を用いた力学を学ぶ準備を整える。1年生の力学で習った基礎概念の復習は、重点的にやってほしい。力学の言葉が、微積分を用いた言葉(表式)に書き換わって、一本の論理に整理されていくことを体感してほしい。細かな計算が多いとは思うが、常に何を目的としてこの話をやっているのか、物理的意味は何か?自問自答していく必要がある。その自問自答により、何をやっているのかを見失うことなく、全体を見渡しながら、力学が数学の言葉で拡張・一般化されていくことがわかるだろう。力学を十分に深め、味わい、現代の物理・工学への橋渡しをしていきたい。
授業の進め方・方法:
講義は対話的に進めるので、どんどん授業を止めて質問してほしい。質問のやり取りの中で、学生が主体的に学ぶ機会を提供したい。
速度と加速度、運動の法則、エネルギー・運動量・角運動量、万有引力・重力・慣性力の順に進めていく。問題は、あらかじめ予習しておいてもらい、当てられたら板書すること。
注意点:
中間テストは実施しない。前期末テストと提出物(課題プリント10-13回分、小または中テストなど)で成績を評価する。
課題プリントの10-13回分は、学修単位の証拠書類として利用するので、1枚でも課題を出していない者は、テストの点数に無関係に、D単位となる。必ず〇つけ・訂正の上、提出し、提出分に抜けがないようにすること。
授業の欠課数が1/3以上でD評価となる。

授業の予習・復習及び演習については自学自習で取り組むこと。
※コロナ感染症の社会情勢によっては、学校の状況が変わることがある。これに対応して成績評価方法を変えざるを得なくなった場合は、成績評価方法・授業内容・授業方法を変更することがある。ただし、基本的には変更しない方針である。成績表の評価方法は、このシラバスの通りとする。再テストは、必ずしも行うとは限らないが、再テストを行う場合の基準は、再テストのみで60点以上が合格条件である。再テストの合格者に対して追加課題等の補填は行わない。再テストをやる場合は、1回のみであり、それ以外の再評価は行わない。初見の問題にも対応できるよう、普段から授業をよく聞き、暗記型学習から脱却することがとても大事なる。本試験も再テストも、テストで示される基準に基づき、一定以上の物理的思考力を持っているかを確認することが趣旨なので、テストで普段の学習態度も含めた総合評価を行っている点は、共通理解としておいてほしい。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス、関数とは何か。物理と数学の記述法の違い。グラフの意味の違い(y-xグラフ、x-tグラフで大きく違うこと)、力学の基礎概念の復習。微積分の復習、ベクトルなどの復習、テイラー展開をベースとした関数の近似 力学の基礎概念を説明できる。基本的な数学を使えるようになる。
2週 瞬間の速度、加速度+演習 速度、加速度が説明できる。微分を用いて、どんな速度・加速度でも計算できる。
3週 等加速度運動の復習、様々なベクトル、ベクトルのスカラー倍・合成の復習 加速度=一定の場合の「公式」を
積分を用いて導ける、ベクトルの基本演算が使える
4週 等速円運動、運動方程式と微分方程式 等速円運動の速度・加速度を導ける。等速円運動する物体の運動を微積分を用いて計算できる。
5週 一様重力場中の運動(特に、斜方投射)の復習+演習 慣性の法則、運動方程式を人に説明できる。2物体の運動方程式の立て方が分かる。運動方程式を積分して、速度や位置を求められる。斜方投射の運動方程式を成分ごとに立てられる。
6週 摩擦力の復習、空気抵抗と運動方程式(変数分離型微分方程式)、演習 摩擦力が説明できる。空気抵抗のある場合の運動方程式を立てることができる。運動方程式を変数分離型の微分方程式として解くことができる。
7週 単振動と微分方程式、単振動の解、演習、運動量と運動エネルギーの違い、運動量の復習、演習 単振動と等速円運動の関係から、単振動の加速度や周期を求めることができる。単振動の運動方程式を解くことができる。運動量と運動エネルギーがベクトルかスカラーかで分類できる。運動量と力積の関係を導ける。力積を積分で書くことができる。
8週 前半のまとめと演習(先に進むこともあります)
2ndQ
9週 物理で出てくる微分方程式の解法のまとめ 両辺いきなり積分できるタイプ、変数分離型、単振動型の運動方程式の直接二階積分が自分でできる。
10週 運動量保存則、仕事の復習、仕事と内積、運動エネルギー、仕事と運動エネルギー変化の復習から微積分を用いた厳密な議論へ 運動量保存則を導くことができ、使うこともできる。仕事が説明できる。内積を使って仕事を求めることができる、運動エネルギーを導くことができる。仕事と運動エネルギーの関係を積分を用いて表現できる。運動エネルギーと運動量の違いを人に説明できる
11週 線積分と仕事、位置エネルギーと保存力、線積分による位置エネルギーの定義、万有引力・弾性力・クーロン力による位置エネルギー 線積分が分かる。位置エネルギーと保存力の関係を説明できる。線積分を用いて位置エネルギーを計算できる。
12週 エネルギーの変化、偏微分を用いた力と位置エネルギーの関係 偏微分を用いて、位置エネルギーから力を計算できる
13週 重心、角運動量、力のモーメントとそのつりあい、剛体(回転)の運動方程式 角運動量の定義が言える。(外積を用いて定義できる)慣性モーンメントと角運動
14週 剛体の運動方程式の応用、慣性モーメント、万有引力 力のモーメントのつり合い、剛体の運動方程式の問題が解ける。
15週 前期末テスト
16週 前期末テスト解説、万有引力演習、慣性力 万有引力の問題が解ける、慣性力を説明できる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。3前1,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3前2,前3,前4,前7,前8,前9,前10,前11,前12
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3前6,前7,前8,前9,前10,前12
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前11,前12,前13
力のモーメントを求めることができる。3前12,前13
角運動量を求めることができる。3前12,前13
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3前12,前13
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3前12,前13
重心に関する計算ができる。3前12,前13
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3前12,前14
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3前13,前14

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオ課題プリントなど合計
総合評価割合75000025100
基礎的能力75000025100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000