実用法律学

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 実用法律学
科目番号 0144 科目区分 一般 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 情報工学科 対象学年 4
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 岩志和一郎編著『新版 法学の基礎』成文堂
担当教員 宮崎 英生

到達目標

社会の複雑化に伴い、一般市民も社会生活を送る上で正しい法律知識を身につけておくことが必要であることをふまえて、我が国の憲法、民法及び刑法に関する基本的な仕組みと解釈の基礎的事項について理解することを目的とする。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
憲法について基本的な用語や概念を用いて具体的事象を説明できる。基本的用語や概念を説明できる。基本的な用語や概念を説明できない。
民法について基本的な用語や概念を用いて具体的事象を説明できる。基本的用語や概念を説明できる。基本的な用語や概念を説明できない。
刑法について基本的な用語や概念を用いて具体的事象を説明できる。基本的用語や概念を説明できる。基本的な用語や概念を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

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学習・教育目標 A2 説明 閉じる
学習・教育目標 D3 説明 閉じる

教育方法等

概要:
我々は、社会生活を営む上でさまざまな法律に囲まれている。法律を守って生活する限り、社会からとがめを受けることはなく、また、なにかトラブルにあったとき、法律はその解決策を示してくれる。法律とはどのようなものか、実際にどのように用いられるのか、についての正確な理解は、常識ある社会人として身につけておくべき基本的な教養である。
この授業は、法制度のなかで最も基本的な役割を果たしている憲法、民法および刑法について入門的な解説を行うことにより、前記の基本的教養を習得し、法律文書を読解・解釈する力と法律問題について的確に分析・思考する力を養うことを目標とする。法律を支えているのは健全な社会常識であり、筋道の通った理屈であるから、本講座は、社会生活を送るうえで必要な「ものの見方・考え方」を学ぶのに最適の科目である。
さらに、社会問題に対する洞察を深めるために、刑事法に関わる分野からいくつかの項目を取り上げて掘り下げた説明を加える。
授業の進め方・方法:
教科書『新版 法学の基礎』を用いて講義する。法律の初学者であることを考慮して、具体的なイメージがわくように事例を用いて解説するが、法律の議論は、性質上、抽象的にならざるを得ないことも確かである。専門用語や必要な基礎知識を覚えることは当然であるが、なぜそうなるのかという理念や根拠も大事にして学習すること。わからないところは気軽に質問してほしい。
注意点:
将来、工業専門職に従事した折には、特別の法律知識を要することになるが、ただ断片的に覚えこもうとしても、実際に役立つことは少ない。それらは、多くの場合、民法や刑法の原則の上に成り立っており、いわば応用問題であるから、直面した問題を法律的に筋道立てて考えるためには、まずもって基本的な法律知識を正確に習得し、法律解釈の基礎をしっかりと理解することが肝要である。
法律に関する判断は、感情に流されず、論理則・経験則に基づいて合理的に行うところに真価があるので、その意味で客観的・科学的なものである。(ただ、実証の世界で完結するものではなく、一定の価値判断を伴う点に特色があるが、本講義ではいわゆる通説的な理解を基本とする。)。この機会に、法律の議論を通して、物事を概念的・抽象的に思考することの面白さを味わっていただければ幸いである。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 【オリエンテーション】身近な事例をもとに、法律に関する導入的説明を行い、「実用法律学」という科目の全体像を紹介する。 法とは何か、道徳や慣習とどこが違うか、など法の意義・特徴を理解する。
2週 【法の解釈】現行法律体系の仕組、裁判所の判例について説明する。 法の解釈の仕方を学び、自分でルールの解釈・適用を行うことができる。
3週 【憲法(1)】日本国憲法の制定経過をたどりつつ、明治憲法との違いを説明する。 国民主権(天皇の役割)、平和主義(憲法9条の解釈)について正確に理解する。
4週 【憲法(2)】基本的人権のうち、精神的自由権について説明する。 信教の自由(政教分離)、表現の自由の意義について正確に理解する。
5週 【憲法(3)】平等権及び幸福追求権の内容について説明する。 尊属殺重罰規定、非嫡出子法定相続分規定に関する最高裁判例の意義と憲法判断の仕組を理解する。
6週 【憲法(4)】違憲審査制について説明する。【民法(1)】民法の基本原則について説明する。 刑法と民法の役割の違いについて正確に理解する。
7週 【民法(2)】売買契約の具体例で財産法の基本的仕組みを説明する。 物権と債権、法律行為、契約自由の原則と例外について正確に理解する。
8週 【民法(3)】物権変動の内容、債権の発生原因について説明する。 不動産登記の役割、契約の種類について正確に理解する。
4thQ
9週 【民法(4)】損害の賠償、借金の際の保証について説明する。 不法行為の成立要件、保証人制度、担保物権について正確に理解する。
10週 【刑法(1)】刑法の意義と機能、刑罰の本質、刑の執行について説明する。 刑法の基本原則(法益保護、責任主義、罪刑法定 )について正確に理解する。
11週 【刑法(2)】故意犯と過失犯、既遂犯と未遂犯について説明する。 殺人と過失致死、殺人と殺人未遂の違いについて正確に理解する。
12週 【刑法(3)】複数人で罪を犯す場合や、罪を犯しても適法とされる場合について説明する。 共犯の種類を正確に理解する。正当防衛と緊急避難について正確に理解する。
13週 【刑法(4)】個人の生命や身体、自由を侵害する罪について説明する。 暴行、傷害、傷害致死について正確に理解する。性暴力の刑法上の扱いについて理解する。
14週 【刑法(5)】個人の財産を侵害する各種犯罪について説明する。 窃盗、強盗、詐欺、恐喝、横領、盗品売買、器物損壊などについて正確に理解する。
15週 【刑事手続】民事訴訟と刑事訴訟の異同、刑事手続の流れについて説明する。 捜査の原則、起訴及び公判の手続、裁判員制度について正確に理解する。
16週 【刑事責任を問われない者、犯罪の被害を受けた者】 罪を犯した少年の手続、精神障害犯罪者の処遇、犯罪被害者への法的支援について理解する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会公民民主政治の基本的原理、日本国憲法の成り立ちやその特性について理解できる。2
資本主義経済の特質や財政・金融などの機能、経済面での政府の役割について理解できる。2
現代社会の政治的・経済的諸課題、および公正な社会の実現に向けた現在までの取り組みについて理解できる。3
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3
現代社会の具体的な諸問題を題材に、自ら専門とする工学分野に関連させ、技術者倫理観に基づいて、取るべきふさわしい行動を説明できる。3
技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を認識している。3
社会における技術者の役割と責任を説明できる。3
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。3
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。3
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。3
環境問題を考慮して、技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3
過疎化、少子化など地方が抱える問題について認識し、地域社会に貢献するために科学技術が果たせる役割について説明できる。3
知的財産の社会的意義や重要性の観点から、知的財産に関する基本的な事項を説明できる。3
知的財産の獲得などで必要な新規アイデアを生み出す技法などについて説明できる。3
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。3
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。3
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。4
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。3
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。3
科学技術が社会に与えてきた影響をもとに、技術者の役割や責任を説明できる。3
科学者や技術者が、様々な困難を克服しながら技術の発展に寄与した姿を通し、技術者の使命・重要性について説明できる。3
分野横断的能力汎用的技能汎用的技能汎用的技能日本語と特定の外国語の文章を読み、その内容を把握できる。3
他者とコミュニケーションをとるために日本語や特定の外国語で正しい文章を記述できる。3
他者が話す日本語や特定の外国語の内容を把握できる。3
日本語や特定の外国語で、会話の目標を理解して会話を成立させることができる。3
円滑なコミュニケーションのために図表を用意できる。3
円滑なコミュニケーションのための態度をとることができる(相づち、繰り返し、ボディーランゲージなど)。3
他者の意見を聞き合意形成することができる。3
合意形成のために会話を成立させることができる。3
グループワーク、ワークショップ等の特定の合意形成の方法を実践できる。3
書籍、インターネット、アンケート等により必要な情報を適切に収集することができる。3
収集した情報の取捨選択・整理・分類などにより、活用すべき情報を選択できる。3
収集した情報源や引用元などの信頼性・正確性に配慮する必要があることを知っている。3
情報発信にあたっては、発信する内容及びその影響範囲について自己責任が発生することを知っている。3
情報発信にあたっては、個人情報および著作権への配慮が必要であることを知っている。3
目的や対象者に応じて適切なツールや手法を用いて正しく情報発信(プレゼンテーション)できる。3
あるべき姿と現状との差異(課題)を認識するための情報収集ができる3
複数の情報を整理・構造化できる。3
特性要因図、樹形図、ロジックツリーなど課題発見・現状分析のために効果的な図や表を用いることができる。3
課題の解決は直感や常識にとらわれず、論理的な手順で考えなければならないことを知っている。3
グループワーク、ワークショップ等による課題解決への論理的・合理的な思考方法としてブレインストーミングやKJ法、PCM法等の発想法、計画立案手法など任意の方法を用いることができる。3
どのような過程で結論を導いたか思考の過程を他者に説明できる。3
適切な範囲やレベルで解決策を提案できる。3
事実をもとに論理や考察を展開できる。3
結論への過程の論理性を言葉、文章、図表などを用いて表現できる。3
態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性周囲の状況と自身の立場に照らし、必要な行動をとることができる。3
自らの考えで責任を持ってものごとに取り組むことができる。3
目標の実現に向けて計画ができる。3
目標の実現に向けて自らを律して行動できる。3
日常の生活における時間管理、健康管理、金銭管理などができる。3
社会の一員として、自らの行動、発言、役割を認識して行動できる。3
チームで協調・共同することの意義・効果を認識している。3
チームで協調・共同するために自身の感情をコントロールし、他者の意見を尊重するためのコミュニケーションをとることができる。3
当事者意識をもってチームでの作業・研究を進めることができる。3
チームのメンバーとしての役割を把握した行動ができる。3
リーダーがとるべき行動や役割をあげることができる。3
適切な方向性に沿った協調行動を促すことができる。3
リーダーシップを発揮する(させる)ためには情報収集やチーム内での相談が必要であることを知っている3
法令やルールを遵守した行動をとれる。3
他者のおかれている状況に配慮した行動がとれる。3
技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を認識し、技術者が社会に負っている責任を挙げることができる。3
自身の将来のありたい姿(キャリアデザイン)を明確化できる。3
その時々で自らの現状を認識し、将来のありたい姿に向かっていくために現状で必要な学習や活動を考えることができる。3
キャリアの実現に向かって卒業後も継続的に学習する必要性を認識している。3
これからのキャリアの中で、様々な困難があることを認識し、困難に直面したときの対処のありかた(一人で悩まない、優先すべきことを多面的に判断できるなど)を認識している。3
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業や大学等でどのように活用・応用されるかを説明できる。3
企業等における技術者・研究者等の実務を認識している。3
企業人としての責任ある仕事を進めるための基本的な行動を上げることができる。3
企業における福利厚生面や社員の価値観など多様な要素から自己の進路としての企業を判断することの重要性を認識している。3
企業には社会的責任があることを認識している。3
企業が国内外で他社(他者)とどのような関係性の中で活動しているか説明できる。3
調査、インターンシップ、共同教育等を通して地域社会・産業界の抱える課題を説明できる。3
企業活動には品質、コスト、効率、納期などの視点が重要であることを認識している。3
社会人も継続的に成長していくことが求められていることを認識している。3
技術者として、幅広い人間性と問題解決力、社会貢献などが必要とされることを認識している。3
技術者が知恵や感性、チャレンジ精神などを駆使して実践な活動を行った事例を挙げることができる。3
企業人として活躍するために自身に必要な能力を考えることができる。3
コミュニケーション能力や主体性等の「社会人として備えるべき能力」の必要性を認識している。3

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力800000080
専門的能力100000010
分野横断的能力100000010