物理化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 物理化学Ⅰ
科目番号 0032 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 アトキンス 物理化学要論 (第6版), P. W. Atkins, J. de Paula 著, 千原秀昭, 稲葉章 訳
担当教員 井手 智仁

到達目標

気体の性質を理解し,理想気体の状態方程式の利用,混合気体の分圧の計算,理想気体と実在気体との違いの説明などができる.
熱力学第一法則の定義と適用方法を説明し,エンタルピーの計算(標準生成エンタルピー,エンタルピーの温度依存性)ができる.また,熱容量の適用と使用方法を説明できる.
平衡の記述を説明したり,平衡に及ぼす諸条件の影響を説明したりできる.
熱力学第二,第三法則を定義しエントロピーの計算ができる.また,標準生成自由エネルギーを計算できる.さらに,平衡定数より標準生成自由エネルギーを計算できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
気体の性質気体の性質を理解し理想気体の状態方程式の高度な利用,分圧の計算,理想気体と実在気体の違いの詳細な説明ができる.気体の性質をある程度理解し,基本的な理想気体の状態方程式の利用,分圧の計算,簡単な理想気体と実在気体の違いの説明ができる.気体の性質を理解しておらず説明できない.
熱力学第一法則エンタルピー)標準生成エンタルピー,温度依存性)の計算ができる。熱容量の定義の説明ができる.化合物の標準生成エンタルピーおよび熱容量の計算ができる.エンタルピーの計算ができない.
熱力学第二法則熱力学第二・第三法則を定義し,エントロピー・自由エネルギーの計算ができる.エントロピー・自由エネルギーの計算が部分的にできる.エントロピー・自由エネルギーの計算ができない.
混合物の性質希薄溶液や混合気体の化学ポテンシャルを計算できる.希薄溶液や混合気体の化学ポテンシャルを部分的に計算できる.希薄溶液や混合気体の化学ポテンシャルを計算できない.
化学平衡化学平衡の記述ができ,諸条件の影響を説明できる.平衡定数との自由エネルギー相互の計算ができる.化学平衡の記述ができる.平衡定数との自由エネルギー相互の計算ができる.化学平衡が記述できない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
熱力学第一法則および第二法則を中心に物理化学における基本的な概念と理論の「考え方」に重点をおいて熱力学の基本を学ぶ.
授業の進め方・方法:
分野ごとに説明と演習を繰り返しながら進める.
定期試験前などに授業内容の振り返りの時間を設ける.
注意点:
初等関数の計算,特に微分積分は物理化学を学習する上で必要不可欠である.不安なものは十分復習して多くこと.
演習および定期試験では関数電卓を使用するので常に持参しておくこと.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 イントロダクションと基礎的概念 物理化学の基礎となる,物質の状態やエネルギーなどの概念を理解できる.
2週 気体の性質 1 完全気体と混合気体 気体の法則を理解し,理想気体の状態方程式を説明できる.また,ドルトンの法則と分圧を説明できる.
3週 気体の性質 2 気体の分子論的モデル 気体の分子運動論から,圧力を定義できる.
4週 気体の性質 3 気体の分子論的モデル 気体の分子運動論から理想気体の状態方程式を導出できる.
5週 気体の性質 4 実在気体 臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる.
6週 気体の性質 5 実在気体 実在気体の状態方程式を説明できる.
7週 振り返りの時間 前期中間試験範囲のまとめ
8週 前期中間試験
2ndQ
9週 熱力学第一法則 1 エネルギーの保存 熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。
10週 熱力学第一法則 2 内部エネルギー 仕事や熱と内部エネルギーの関係を説明できる
11週 熱力学第一法則 3 内部エネルギーとエンタルピー エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。
12週 熱力学第一法則 4 物理変化への適用 相転移のエンタルピー変化を説明し計算できる
13週 熱力学第一法則 5 化学変化への適用 化学反応エンタルピー変化を説明し計算でき,その計算値の意味が説明できる.
14週 振り返りの時間 前期末試験範囲のまとめ
15週 試験返却と解説
16週
後期
3rdQ
1週 熱力学第二法則 1 熱力学第二法則とエントロピー 熱力学の第二法則とエントロピーの定義が説明でき,温度や圧力変化に伴うエントロピー変化が計算できる.
2週 熱力学第二法則 2 エントロピーの分子論
的解釈と相変化
エントロピーの分子論的解釈を説明でき,相変化に伴うエントロピー変化を計算できる.
3週 熱力学第二法則 3 熱力学第三法則 熱力学第三法則について説明でき,物質の第三法則エンタルピーを説明できる.
4週 熱力学第二法則 4 化学反応とエントロピー 化学反応におけるエントロピー変化が計算でき,その計算値の意味が説明できる.
5週 純物質の相平衡 1 自由エネルギー ギブズ自由エネルギーの定義を説明できる.相変化におけるギブズエネルギー変化を計算できる.
6週 純物質の相平衡 2 自由エネルギー 圧力,温度の変化に伴うギブズエネルギーの変化を計算できる.
7週 振り返りの時間 後期中間試験範囲のまとめ
8週 後期中間試験
4thQ
9週 混合物の性質 1 自由エネルギーと化学ポテンシャル 部分モル量と化学ポテンシャルを説明できる.混合に伴う化学ポテンシャル変化を計算できる.
10週 混合物の性質 2 理想溶液と化学ポテンシャル ラウールの法則やヘンリーの法則を説明できる.希薄溶液の化学ポテンシャルを計算できる.
11週 化学平衡 1 自由エネルギーと化学反応 平衡定数とギブズエネルギーの間の関係を説明でき,実際に計算できる.
12週 化学平衡 2 自由エネルギーと化学反応 化学反応に伴うギブズエネルギー変化を計算でき,その値の意味を説明できる.
13週 化学平衡 3 平衡組成 平衡状態の化学組成を計算できる.
14週 化学平衡 4 ルシャトリエの原理 化学平衡に及ぼす諸条件(温度、圧力、濃度)の影響を説明できる.触媒の効果を説明できる.
15週 振り返りの時間 学年末試験範囲のまとめ
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4前2
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4前3
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4前4,前5
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4前6
混合気体の分圧の計算ができる。4前2
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4
束一的性質を説明できる。4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4前9
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4前10,前11,前12
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4前13
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4前11
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4後9
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4後13,後14
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4後9
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4後1,後2,後4
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4後2
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4後3
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4後5,後6
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後12
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後13,後14
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオ自習課題合計
総合評価割合80000020100
基礎的能力4000001050
専門的能力4000001050
分野横断的能力0000000