無機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 無機化学Ⅰ
科目番号 0035 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 物質工学科 対象学年 2
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 森 正保 著, 大木 道則 編, ベーシック化学シリーズ1 入門無機化学, 朝倉書店
担当教員 伊藤 未希雄

到達目標

無機化学Iでは、特定の元素にのみ関係する性質よりは、気体の性質や化学平衡などすべての元素の単体および無機物に関係する理論や性質について学習し、関連する計算ができるようになること、または性質を説明できるようになることが目的である。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安未到達レベルの目安
化学反応の基本的な法則任意の化学反応式を書くことができる。各反応式から反応物・生成物間の量的関係を導くことができる。簡単な化学反応式を書くことができる。各反応式から反応物・生成物間の量的関係を導くことができる。簡単な化学反応式を書くことができる。化学反応式を書くことができない。
気体の性質化学的に正しい方法で数値を取り扱い、気体に関する法則を用いて問題を解決することができる。気体に関する法則を用いて問題を解決することができる。気体に関する法則を用いて基本的な問題を解決する方法を示すことができる。気体に関する法則を用いて問題を解決する方法を説明することができない。
電気分解科学的に正しい方法で数値を取り扱い、ファラデーの電気分解法則を用いて問題を解決することができる。ファラデーの電気分解法則を用いて問題を解決することができる。ファラデーの電気分解法則を用いて基本的な問題を解決する方法を示すことができる。ファラデーの電気分解法則を用いて問題を解決する方法を説明することができない。
化学平衡温度・圧力・濃度の変化による化学平衡の移動を定量的に説明できる。化学平衡にある系の平衡定数を求めることができる。化学平衡にある系の平衡定数を求めることができる。化学平衡にある系の量(濃度・圧力)の関係を示すことができない。化学平衡に関与する物質の量の関係を記述できない。
緩衝溶液化学的に正しい方法で数値を取り扱い、任意の緩衝溶液に関する計算ができる。緩衝溶液に関する計算ができる。緩衝溶液の酸塩基に対する緩衝作用ががはたらく仕組みを説明することができる。緩衝溶液のしくみを説明することができない。
酸塩基の定義ルイスの酸塩基の定義に基づき物質を酸と塩基に分類できる。ブレンステッド-ローリーの定義に基づき物質を酸と塩基に分類できる。3つの酸塩基の定義に必要十分な説明を与えることができる。3つの酸塩基の定義を十分な説明を与えることができない。
周期表・原子の電子配置原子番号30までの元素の周期表を書くことができ、これらの原子の電子配置を書くことができる。原子番号30までの原子の電子配置を書くことができる。原子番号20番までの元素の周期表を書くことがで、これらの原子の電子配置を書くことができる。原子番号20番までの原子の電子配置を書くことができない。
錯体錯体を命名することができ、構造を説明することができる。また錯体を形成するイオンの沈殿反応を説明することができる。錯体を命名することができ、構造を説明することができる。錯体を命名することができる。錯体の命名ができない。
酸化還元・電池の起電力任意の半電池を組み合わせた電池の起電力を求めることができる。酸化還元反応が進行するかどうかを予測することができる。簡単な電池の起電力を求めることができる。酸化還元反応の進行を予測することができる。酸化還元反応の進行を予測することができる。電池の起電力の計算や酸化還元反応の進行の予測ができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
無機化学はすべての元素の単体および主に無機物を対象とする化学の一分野であり、扱う元素の種類は化学の分野の中で最も広い。扱う元素の多様性から、無機化学の分野は他のすべての化学の分野と関連するとも言える。
無機化学Iでは、第1学年から学習している一般科目の化学のレベルから始めて、物質工学科の専門科目で必要となるレベルまでの化学理論を身に付けることを目的とし、一般化学から専門化学への橋渡しを行う。
授業の進め方・方法:
テキストに沿って解説し、理解度をより深めるために演習問題も随時行う。
注意点:
本科目は、予習・復習等の自学自習で効果が向上するので、必ず心がけること。自学自習の習慣を身に着けること。
化学1の基礎科学を十分理解しておくこと。元素の周期表、原子量を覚えておくこと。予習、復習をしっかりすること。授業の毎に電卓を持参すること。
本科目の学習内容は化学III・IVおよび分析化学Iと関連がある。これらの科目の教科書も参考にしながら学習をすすめること。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンス
化学の基本法則
本科目で学習する内容を確認する。
学問としての無機化学の重要性を確認する。
既習の化学反応式の書き方、量的計算を復習する。
2週 気体に関する法則 1 ボイル - シャルルの法則を用いて気体の圧力、体積、温度を求めることができる。
3週 気体に関する法則 2 気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、体積、温度、その他関係する諸量を求めることができる。
4週 電気分解の法則について ファラデーの電気分解の法則を使いて、電気化学反応に関係する諸量の計算ができる。
5週 化学平衡と質量作用の法則 質量作用の法則(化学平衡の法則)を用いて化学平衡の状態にある物質間の濃度の関係を説明できる。
6週 化学平衡とルシャトリエの原理 ルシャトリエの法則を用いて温度、圧力、濃度の変化による化学平衡の移動を説明することができる
7週 ルシャトリエの原理と緩衝液 弱酸・弱塩基の化学平衡から、緩衝液のはたらきを説明することができる。
8週 中間テスト 7週目までの学習内容が定着したかどうかを確認する
4thQ
9週 緩衝液 様々な緩衝液のpHを計算することができる。
10週 3つの酸塩基の定義について アレーニウス・ブレンステッド-ローリー・ルイスの酸塩基の定義に基づき、酸塩基反応にかかわる物質を酸と塩基に分類できる
11週 周期表、電子配置 原子番号30までの元素の周期表を書くことができる。またこれらの原子の電子配置を示すことができる。
12週 電子軌道 電子殻が持つ電子軌道や、電子軌道の形を説明することができる。
13週 エネルギーの単位
イオン化エネルギー
eVの単位で表されたエネルギーの値を他のエネルギーの単位を用いた値との間で相互に変換することができる。
イオン化エネルギーの意味を説明することができる。
14週 錯体と配位化合物 基本的な錯体の名称をすること、および錯体の名称から構造式を描くことができる。配位化合物の特徴と性質を説明することができる。
15週 電池の起電力と電極電位 標準酸化還元電位を用いて電池の起電力を求め、また酸化還元反応が進行するかどうかを予測することができる。
16週 学年末試験の答案返却 学年末試験の結果より、本科目の目標が達成されたかを確認する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。1
σ結合とπ結合について説明できる。1
混成軌道を用い物質の形を説明できる。1
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。1
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。3
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。2
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。1
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4後11
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4後11
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4後11
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4後11
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4後11
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4後11,後13
イオン結合と共有結合について説明できる。4後4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
金属結合の形成について理解できる。4後11,後14
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4
配位結合の形成について説明できる。4後14
水素結合について説明できる。4
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4後14
錯体の命名法の基本を説明できる。4後14
配位数と構造について説明できる。4後14
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4
分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。3
電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。3
強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。3
強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。3
緩衝溶液とpHの関係について説明できる。3
錯体の生成について説明できる。3
陽イオンや陰イオンの関係した化学反応について理解し、溶液中の物質の濃度計算(定量計算)ができる。3
中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。3
酸化還元滴定についての原理を理解し、酸化剤及び還元剤の濃度計算ができる。3
キレート滴定についての原理を理解し、金属イオンの濃度計算ができる。3
光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。3
Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。3
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。3
無機および有機物に関する代表的な構造分析、定性、定量分析法等を理解している。3
物理化学平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。3
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。3
均一および不均一反応の平衡を説明できる。3
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。2

評価割合

試験課題・その他合計
総合評価割合8020100
基礎的能力000
専門的能力8020100
分野横断的能力000