無機化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 無機化学Ⅱ
科目番号 0059 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 齋藤 勝裕,長尾 宏隆「ステップアップ 大学の無機化学」,裳華房 (2009)
担当教員 吉田 麗娜

到達目標

無機化学はすべての元素に対する化学である.本講義では電子配置に基づく分子構造の理解,固体の構造や性質,各ブロック元素の各論,錯体を扱う.これまでに学習した物質についての理解をより一層深めることを目的とする.また,物質についての単なる知識の暗記ではなく理解まで進めることを目標とする.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
原子核の構造と反応核反応に関する詳しい説明とそれに関連した計算ができる核反応に関する説明とそれに関連した計算ができる核反応に関する簡単な説明とそれに関連した計算ができる核反応に関する説明もそれに関連した計算もできない
電子配置と周期律電子配置に基づき,元素の様々な性質について説明できる電子配置に基づき,元素のいくつかの性質について説明できる電子配置について説明できる.元素の性質について説明できる電子配置が説明できず,元素の性質について説明できない
分子構造と結合分子軌道法や原子価結合法に基づき共有結合の説明や分子構造の予測ができる共有結合の説明や簡単な分子構造の予測ができる共有結合の簡単な説明や分子構造の説明ができる共有結合の説明や分子構造の説明ができない
イオン性固体と金属結晶構造やイオン結合,金属結合の性質について詳しく説明できる結晶構造やイオン結合性固体,金属の性質について説明できる結晶構造やイオン結合性固体,金属の性質について簡単な説明ができる結晶構造やイオン結合性固体,金属の性質について説明できない
基本的な無機反応ルイス酸やHSAB則について詳しく説明できる.酸化還元反応について電気化学的側面から説明できるルイス酸やHSAB則について説明できる.酸化還元反応について説明できるルイス酸やHSAB則について簡単な説明ができる.酸化還元反応について簡単な説明ができるルイス酸やHSAB則について説明できない.酸化還元反応について説明できない
各ブロック元素の各論各元素の性質について詳しく説明することが出来る各元素の性質について説明することが出来る各元素の性質について簡単な説明をすることが出来る各元素の性質について説明することができない
錯体化学の基礎錯体の酸化数や配位結合,軌道の分裂や光吸収について詳しく説明できる錯体の酸化数や配位結合,軌道の分裂や光吸収について説明できる錯体の酸化数や配位結合,軌道の分裂や光吸収について簡単な説明ができる錯体の酸化数や配位結合,軌道の分裂や光吸収について説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本講義では,原子の構造や周期律,分子や固体の構造,無機反応化学,金属元素・非金属元素の化学の基本,錯体化学を網羅的に取り扱う.前半では電子論に基づく分子・固体構造や性質について理解する.後半では様々な元素の反応性等について広く学習する.
授業の進め方・方法:
基本的にはプリントにしたがった講義形式で授業を行う.また適宜練習問題やPCを用いた課題などを行い理解を深める.
注意点:
化学I~化学IV,無機化学Iを十分理解していること.情報処理演習I,IIで学習した内容も使用するので復習しておくこと.物質工学実験IIIをはじめ,他の科目,実験と関連のある内容も含まれることから,学習内容を理解して定着させる必要がある.これまでの化学にくらべて進度が速いから,理解度を高めるための自学自習が必須となる.また,睡眠不足では十分な学習が期待できないから常日頃から8時間程度の睡眠を心がけること.なお,授業では関数電卓が必要になることもあるので持参すること.PCまたはスマートフォン・タブレットにTeams,Excel,Maximaをインストールして持参すること.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス・原子の構造・原子核と核反応 原子の構造を理解し,核反応についての説明と関連した計算(例えば炭素14法や質量欠損)ができる
2週 電子配置・元素の一般的性質と周期律(1) シュレーディンガー方程式や量子数について知り,原子軌道や量子数について理解する.パウリの排他原理やフントの規則を説明できる
3週 電子配置・元素の一般的性質と周期律(2) 原子半径,イオン化エネルギー,電子親和力,電気陰性度,磁性などについて説明できる
4週 分子の構造と結合(1) 価電子のルイス構造を理解する.分子軌道法や原子価結合法について知り,混成軌道,共有結合について説明できる
5週 分子の構造と結合(2) 分子の立体構造を予測できるようになる.分子の対称性について理解する
6週 イオン性固体 結晶構造について説明でき,充填率やイオン半径比等について計算できる.イオン結合や格子エネルギーについて説明できる.イオン結合と共有結合の関連について理解する.
7週 金属と半導体 金属結合とエネルギーバンドについて理解する.電気伝導性,熱伝導について説明できる
8週 中間試験 これまでに学習した内容を定着させる.試験で十分に得点する
2ndQ
9週 基礎的な無機反応:ルイス酸,HSAB則,酸化還元反応,溶媒 酸化還元反応や溶媒和について理解する
10週 調査発表(1) 非金属元素を中心に班ごとに担当箇所を発表する
11週 調査発表(2) 金属元素を中心に班ごとに担当箇所を発表する
12週 遷移金属錯体(1) 命名法など錯体の基本について説明できる
13週 遷移金属錯体(2) 遷移金属錯体の構造について説明できる
14週 遷移金属錯体(3) 配位結合やd軌道の結晶場分裂について説明できる
15週 遷移金属錯体(4) 錯体の色と吸収スペクトルについて説明できる
16週 期末試験返却 無機化学Ⅱの理解度を確認する.

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4前4,前5
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4前3,前5
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4
配位結合の形成について説明できる。4前5
水素結合について説明できる。4
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4前5
錯体の命名法の基本を説明できる。4前2,前5
配位数と構造について説明できる。4前5
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4前5
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4
分析化学錯体の生成について説明できる。4
物理化学放射線の種類と性質を説明できる。4
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。4
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。4
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。4

評価割合

試験課題・発表合計
総合評価割合6040100
基礎的能力15520
専門的能力452570
分野横断的能力01010