物理化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 物理化学Ⅱ
科目番号 0095 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 アトキンス 物理化学要論 (第6版), P. W. Atkins, J. de Paula 著, 千原秀昭, 稲葉章 訳
担当教員 伊藤 未希雄

到達目標

化学IIおよび物理化学Iで学習した知識をもとに、
・複雑な化学反応の数式による記述およびより一般的な記述の導出
・溶液中のイオンの挙動の記述
・純物質の相転移の熱力学的な記述
ができるようになるのが本科目の目標である。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
速度定数・反応次数・反応時数の決定方法、(分離法、初速度法)の使い方を説明でき、実験データから反応次数を求めることができる。 ・任意の次数の反応の速度定数の単位を説明できる。・実験データから反応次数を求める具体的な方法を説明できる。 ・かつ任意の次数の反応の速度定数の単位を説明できる。反応次数の決定方法として、分離法および初速度法を列挙することができ、かつ任意の次数の反応の速度定数の単位を説明できる。反応次数の決定方法を説明できない。または任意の次数の反応の速度定数の単位を説明できない。
微分型速度式と積分型速度式・任意の次数の微分型速度式を積分型速度式に変換できる。 ・実験データから任意の次数の反応速度定数を求めることができる。 ・任意の次数の反応において反応物の半減期、寿命及び任意の割合に減少する時間を求めることができる・特定の次数の反応について、積分型速度式および反応物の半減期を答えることができる。 ・実験データから速度定数を求めることができる。特定の次数の反応について、積分型速度式および反応物の半減期を答えることができる。いずれの次数の反応についても、積分型速度式および反応物の半減期を答えることができない。
反応速度の温度依存性・アレニウスパラメーターの意味を衝突理論および遷移状態理論に基づいて説明できる。 ・複数の温度における速度定数からアレニウスパラメーターの導出、およびその逆の計算ができる。・アレニウスパラメーターの意味を衝突理論または遷移状態理論に基づいて説明できる。 ・複数の温度における速度定数からアレニウスパラメーターの導出、またはその逆の計算ができる。複数の温度における速度定数からアレニウスパラメーターの導出、またはその逆の計算ができる。複数の温度における速度定数からアレニウスパラメーターの導出、およびその逆の計算いずれもできない。
触媒触媒は反応の活性化エネルギーに影響を及ぼし、平衡に影響を与えない物質であることを説明することができる。同左同左触媒の作用を説明することができない。
複数の素反応からなる複雑な化学反応の反応速度(可逆反応、併発反応、連鎖反応等)・任意の複雑な化学反応の微分型速度式を、定常状態近似を用いて求めることができる。 ・それらの速度式が近似的に簡略化できる反応条件を説明することができる。任意の複雑な化学反応の微分型速度式を、定常状態近似を用いて求めることができる。特定の複雑な化学反応の微分型速度式を、定常状態近似を用いて求めることができる。いずれの複雑な化学反応の微分型速度式についても求めることができない。
デバイ - ヒュッケルの理論・平均活量係数とイオンの活量係数の関係を説明し、イオンの活量係数を求めることができる。 ・デバイ - ヒュッケルの極限法則を用いてイオン強度を求めることができる。・イオンの活量係数を求めることができる。 ・イオン強度を求めることができる。イオンの活量係数、イオン強度のいずれかを求めることができる。イオンの活量係数、イオン強度のいずれも求めることができない。
イオンの移動・強電解質の極限モル伝導率に関する計算ができる。 ・モル伝導率から弱酸の解離度の計算ができる。 ・水素結合がある系におけるプロトンの移動機構の説明ができる。理想的な到達レベルの目安における3項目のうちいずれか2項目が達成できる。理想的な到達レベルの目安における3項目のうちいずれか1項目が達成できる。理想的な到達レベルの目安における3項目のうちいずれも達成できない。
純物質の相図 (1)クラペイロンの式を用いて、純物質のp - T相図の相境界の式を求めて、任意の圧力における相転移点を求めることができる。クラペイロンの式を用いて、純物質のp - T相図の相境界の式を求めることができる。クラペイロンの式を書き表し使い方を説明することができる。クラペイロンの式を書き表すことができない。
純物質の相図 (2)・クラウジウス - クラペイロンの式を導出することができる。 ・同式を蒸気圧の問題(任意の温度における蒸気圧、任意の圧力における沸点)に適用できる。理想的な到達レベルの目安における2項目のうちいずれか1項目が達成できる。クラウジウス - クラペイロンの式を書き表すことができる。クラウジウス - クラペイロンの式を書き表すことができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
座学での教員による学習内容の説明を主たる授業形態とし、適宜設ける演習の時間および学生の自学自習により授業を進める。
授業の進め方・方法:
本科目では、到達目標を達成するために必要な理論の説明、数式の導出が授業時間のうち最も大きな割合を占める。
学生は、教員による例題の解説や、自ら練習問題を解くことにより、提示、導出された数式の使い方を確認する。
さらに、課題やその他の教科書の章末問題を解くことにより、数式の意味の理解、使用方法の理解の深化を促す。
注意点:
・本科目の学習内容をマスターするためには定期的な予習復習が大事である。特に教科書の章末問題は理解度を計る良い指標になるので、課題として指示された問題以外にも積極的にチャレンジすることが望まれる。
・数学の初等関数の計算、微分積分は物理化学および化学工学分野の科目にとって必要不可欠なツールである。十分復習してから臨むこと。
・演習および定期試験では関数電卓を使用するので常に持参しておくこと。
・より詳細な説明および発展的な内容を含む教科書として、「アトキンス物理化学(上・下)」(東京化学同人)などがある。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス・化学反応の速度 1 (反応次数) ・本授業のアウトラインを認識できる
・反応次数の求め方について説明することができる
2週 化学反応の速度 2 (微分型速度式と積分型速度式) ・微分型速度式と積分型速度式の相互変換ができる
・各次数の速度式の半減期と時定数を求めることができる
3週 化学反応の速度 3 (反応速度の温度依存性) 反応の温度依存性に関連する理論を説明し反応速度の温度依存性を説明することができる
4週 化学反応の速度 4 (複雑な化学反応) 定常状態や律速段階の近似を用いて逐次反応や連鎖反応などの複雑な反応の積分型速度式を導出できる
5週 化学反応の速度 5 (補足 表面の化学反応) 表面の化学反応の速度を説明できる。
6週 化学反応の速度 6 (触媒)
振り返りの時間
・触媒の作用について説明できる
・授業前半の内容を振り返りながら自身の知識の定着度合いを正しく認識し、中間試験に向けた勉強の方針を立てることができる
7週 純物質の相図 1 均一系の相図の復習を通して、相図を読み取り、純物質の相変化を説明できるようになる
8週 中間試験
2ndQ
9週 中間試験の解説、均一系および混合物 2 (クラペイロンの式) クラペイロンの式を利用し圧力などの外部条件が相転移点に及ぼす影響などを説明できる
10週 均一系および混合物 3 (クラウジウス - クラペイロンの式) クラウジウス - クラペイロンの式を用いて蒸気圧の計算をすることができる
11週 均一系および混合物 4 (補足 混合物の相平衡、相転移の分類) ・混合物の相平衡、相転移を熱力学を用いて説明できる
・相転移の分類(1次・2次)を説明することができる
12週 イオン性溶液の性質 1 (活量係数、イオン強度) 活量係数およびイオン強度の計算ができる
13週 イオン性溶液の性質 2 (モル伝導率) ・強電解質および弱電解質のモル伝導率に関する計算ができる
・溶媒和イオン半径がイオンの移動度に関係することを説明できる
14週 イオン性溶液の性質 3 (プロトンの移動、補足 移動度」) ・水素結合性の溶媒中におけるプロトン(およびOH-)の移動メカニズムについて説明することができる
・イオンの輸率に関する計算ができる
15週 振り返りの時間 授業後半の内容を振り返りながら自身の知識の定着度合いを正しく認識し、中間試験に向けた勉強の方針を立てることができる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4前10
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4前11
束一的性質を説明できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4前1
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4前1,前2
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4前2
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4前4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4前4

評価割合

試験自習課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力505
専門的能力752095
分野横断的能力000