到達目標
ユークリッド空間の抽象化である線形空間の基礎的な理論(部分空間、生成系、基底、次元、線形写像の像と核、内積等)を理解し、とくに関数空間におけるフーリエ変換の理論に応用できるようになる。さらに、高速フーリエ変換(FFT)のアルゴリズムの仕組みを線形代数で解明することを目標とする。また、工学的な事例、物理現象への応用を通して、線形空間論の理解を深める。空間や次元といった概念を抽象化する手法を学び、その考え方を各分野における実験方法や理論に適用し、研究開発能力を推進する力を養う。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 最低限の到達レベルの目安(可) | 未到達レベルの目安 |
線形空間の基礎 | 線形空間における部分空間の基底と次元、および線形写像の像と核を求めることができる。 | 線形空間における部分空間の基底と次元を求めることができる。 | ユークリッド空間における部分空間の基底と次元を求めることができる。 | ユークリッド空間における部分空間の基底を求めることができない。 |
内積の性質 | 線形空間における内積が計算できて、適当に与えた双一次形式が内積であるかどうかを判定できる。 | ユークリッド空間における内積が計算できて、適当に与えた双一次形式が内積であるかどうかを判定できる。 | ユークリッド空間における内積が計算できる。 | ユークリッド空間における内積を計算できない。 |
関数空間 | 直交多項式により級数展開可能な関数の多項式展開を求めることができる。 | グラム・シュミットの直交化法を用いて直交多項式を計算できる。 | ロドリゲスの公式を用いて、直交多項式を計算できる。 | ロドリゲスの公式を用いて、直交多項式を計算できない。 |
フーリエ変換 | 超関数のフーリエ変換を求めることができる。 | 複素解析を用いてフーリエ変換が計算できる。 | 基本的な関数のフーリエ変換、およびフーリエの積分定理を用いてフーリエ逆変換が計算できる。 | 基本的な関数のフーリエ変換が計算できない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
線形空間論の基礎的知識を体系的に学んだ後、内積の意義と直交という性質の重要性を解説する。とくに、グラム・シュミットの直交化法は汎用性が広く、使い勝手が良い手法であり、それをマクローリン多項式に適用し、直交多項式系(ルジャンドル多項式、エルミート多項式、ラゲール多項式、チェビシェフ多項式等)を生成する。直交関数系による級数展開の代表例として、フーリエ級数の考え方を学び、その連続化としてフーリエ変換を考える。複素解析を用いる計算手法や、超関数の概念にも触れ、フーリエ変換の概念を深化させる。最後は、高速フーリエ変換のアルゴリズムの仕組みを解説する。
授業の進め方・方法:
講義は板書を中心に行うが、視覚的な理解を促すため補助的にICT機器を用いることがある。講義の最後には演習問題を出すので、講義終了後にその講義の内容を復習し、次の講義までに問題を解いてくること。
注意点:
本科の線形代数I~IV、微分積分I,II、解析I,II、微分方程式の知識が必要になるので、教科書の内容を復習しておくこと。後半は、フーリエ解析を扱うため、基本的な関数について、フーリエ変換が計算できることが望ましい。予習を行い、講義に臨むこと。また講義終了後は、復習を行い、次の講義に向けて自学自習をしっかり行うこと。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
n次元ユークリッド空間
|
次元とは何か、空間とは何かが説明できる。
|
2週 |
線形(ベクトル)空間の定義と具体例 |
線形空間の代数構造が説明でき、線形空間の具体例を5つ以上挙げることができる。またその抽象化の手法から、自身の研究分野への応用を考え、研究開発能力を高める。
|
3週 |
部分空間および基底と次元 |
線形空間およびその部分空間の基底と次元が計算できる。
|
4週 |
線形写像の定義と具体例 |
線形性とは何かが説明でき、線形写像の具体例を5つ以上挙げることができる。
|
5週 |
線形写像の像と核 |
線形写像の像、および核の基底と次元を計算できる。
|
6週 |
内積の定義と具体例 |
内積の定義を説明でき、内積の具体例を5つ以上挙げることができる。
|
7週 |
内積の判定条件とグラム・シュミットの直交化法 |
双一次形式が内積であるかどうかを判定できる。また、グラム・シュミットの直交化法を用いて、正規直交基底を生成できる。
|
8週 |
関数展開とフーリエ級数展開 |
フーリエ級数展開を直交関数系の級数展開としての視点から説明できる。
|
2ndQ |
9週 |
直交多項式の具体例 |
ロドリゲスの公式および、グラム・シュミットの直交化法を用いて。マクローリン多項式から様々な直交多項式を計算できる。
|
10週 |
直交多項式による関数の級数展開 |
直交多項式を用いて、関数を級数展開できる。
|
11週 |
フーリエ変換とフーリエの積分定理 |
フーリエ変換が計算でき、フーリエの積分定理を用いて、フーリエ逆変換が計算できる。
|
12週 |
複素解析を用いたフーリエ変換の計算 |
複素解析の考え方を用いて、フーリエ変換が計算できる。
|
13週 |
超関数のフーリエ変換 |
超関数の概念を説明でき、超関数の具体例を3つ挙げることができる。またそのフーリエ変換が計算できる。
|
14週 |
高速フーリエ変換のアルゴリズム |
高速フーリエ変換のアルゴリズムを説明できる。
|
15週 |
期末試験 |
|
16週 |
|
|
モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
評価割合
| 試験 | レポート | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 75 | 25 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100 |
基礎的能力 | 75 | 25 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100 |
専門的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |