ユークリッド空間の抽象化である線形空間の基礎的な理論(部分空間、生成系、基底、次元、線形写像の像と核、内積等)を理解し、とくに関数空間におけるフーリエ変換の理論に応用できるようになる。さらに、高速フーリエ変換(FFT)のアルゴリズムの仕組みを線形代数で解明することを目標とする。また、工学的な事例、物理現象への応用を通して、線形空間論の理解を深める。空間や次元といった概念を抽象化する手法を学び、その考え方を各分野における実験方法や理論に適用し、研究開発能力を推進する力を養う。
概要:
線形空間論の基礎的知識を体系的に学んだ後、内積の意義と直交という性質の重要性を解説する。とくに、グラム・シュミットの直交化法は汎用性が広く、使い勝手が良い手法であり、それをマクローリン多項式に適用し、直交多項式系(ルジャンドル多項式、エルミート多項式、ラゲール多項式、チェビシェフ多項式等)を生成する。直交関数系による級数展開の代表例として、フーリエ級数の考え方を学び、その連続化としてフーリエ変換を考える。複素解析を用いる計算手法や、超関数の概念にも触れ、フーリエ変換の概念を深化させる。最後は、高速フーリエ変換のアルゴリズムの仕組みを解説する。
授業の進め方・方法:
講義は板書を中心に行うが、視覚的な理解を促すため補助的にICT機器を用いることがある。講義の最後には演習問題を出すので、講義終了後にその講義の内容を復習し、次の講義までに問題を解いてくること。
注意点:
本科の線形代数I~IV、微分積分I,II、解析I,II、微分方程式の知識が必要になるので、教科書の内容を復習しておくこと。後半は、フーリエ解析を扱うため、基本的な関数について、フーリエ変換が計算できることが望ましい。予習を行い、講義に臨むこと。また講義終了後は、復習を行い、次の講義に向けて自学自習をしっかり行うこと。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
n次元ユークリッド空間
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次元とは何か、空間とは何かが説明できる。
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2週 |
線形(ベクトル)空間の定義と具体例 |
線形空間の代数構造が説明でき、線形空間の具体例を5つ以上挙げることができる。またその抽象化の手法から、自身の研究分野への応用を考え、研究開発能力を高める。
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3週 |
部分空間および基底と次元 |
線形空間およびその部分空間の基底と次元が計算できる。
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4週 |
線形写像の定義と具体例 |
線形性とは何かが説明でき、線形写像の具体例を5つ以上挙げることができる。
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5週 |
線形写像の像と核 |
線形写像の像、および核の基底と次元を計算できる。
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6週 |
内積の定義と具体例 |
内積の定義を説明でき、内積の具体例を5つ以上挙げることができる。
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7週 |
内積の判定条件とグラム・シュミットの直交化法 |
双一次形式が内積であるかどうかを判定できる。また、グラム・シュミットの直交化法を用いて、正規直交基底を生成できる。
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8週 |
関数展開とフーリエ級数展開 |
フーリエ級数展開を直交関数系の級数展開としての視点から説明できる。
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2ndQ |
9週 |
直交多項式の具体例 |
ロドリゲスの公式および、グラム・シュミットの直交化法を用いて。マクローリン多項式から様々な直交多項式を計算できる。
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10週 |
直交多項式による関数の級数展開 |
直交多項式を用いて、関数を級数展開できる。
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11週 |
フーリエ変換とフーリエの積分定理 |
フーリエ変換が計算でき、フーリエの積分定理を用いて、フーリエ逆変換が計算できる。
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12週 |
複素解析を用いたフーリエ変換の計算 |
複素解析の考え方を用いて、フーリエ変換が計算できる。
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13週 |
超関数のフーリエ変換 |
超関数の概念を説明でき、超関数の具体例を3つ挙げることができる。またそのフーリエ変換が計算できる。
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14週 |
高速フーリエ変換のアルゴリズム |
高速フーリエ変換のアルゴリズムを説明できる。
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15週 |
期末試験 |
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 数学 | 数学 | 数学 | ベクトルの定義を理解し、ベクトルの基本的な計算(和・差・定数倍)ができ、大きさを求めることができる。 | 3 | |
平面および空間ベクトルの成分表示ができ、成分表示を利用して簡単な計算ができる。 | 3 | |
平面および空間ベクトルの内積を求めることができる。 | 3 | |
問題を解くために、ベクトルの平行・垂直条件を利用することができる。 | 3 | |
空間内の直線・平面・球の方程式を求めることができる(必要に応じてベクトル方程式も扱う)。 | 3 | |
行列の定義を理解し、行列の和・差・スカラーとの積、行列の積を求めることができる。 | 3 | |
逆行列の定義を理解し、2次の正方行列の逆行列を求めることができる。 | 3 | |
行列式の定義および性質を理解し、基本的な行列式の値を求めることができる。 | 3 | |
線形変換の定義を理解し、線形変換を表す行列を求めることができる。 | 3 | |
合成変換や逆変換を表す行列を求めることができる。 | 3 | |
平面内の回転に対応する線形変換を表す行列を求めることができる。 | 3 | |
簡単な場合について、関数の極限を求めることができる。 | 3 | |
微分係数の意味や、導関数の定義を理解し、導関数を求めることができる。 | 3 | |
積・商の導関数の公式を用いて、導関数を求めることがができる。 | 3 | |
合成関数の導関数を求めることができる。 | 3 | |
三角関数・指数関数・対数関数の導関数を求めることができる。 | 3 | |
逆三角関数を理解し、逆三角関数の導関数を求めることができる。 | 3 | |
不定積分の定義を理解し、簡単な不定積分を求めることができる。 | 3 | |
置換積分および部分積分を用いて、不定積分や定積分を求めることができる。 | 3 | |
定積分の定義と微積分の基本定理を理解し、簡単な定積分を求めることができる。 | 3 | |
分数関数・無理関数・三角関数・指数関数・対数関数の不定積分・定積分を求めることができる。 | 3 | |
簡単な1変数関数の局所的な1次近似式を求めることができる。 | 3 | |
1変数関数のテイラー展開を理解し、基本的な関数のマクローリン展開を求めることができる。 | 3 | |
オイラーの公式を用いて、複素数変数の指数関数の簡単な計算ができる。 | 3 | |
定数係数2階斉次線形微分方程式を解くことができる。 | 3 | |