物理化学特論

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 物理化学特論
科目番号 0002 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学専攻 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 配布資料とスライド
担当教員 井手 智仁

到達目標

量子化学の基礎を理解する.また,量子化学に基づいた計算手法を用い,化学反応における反応エンタルピー,自由エネルギー変化などの熱力学的諸量を計算できるようになる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安未到達レベルの目安
量子力学の基礎2次元井戸型ポテンシャルに基づき物質の吸収波長を予測できる.1次元井戸型ポテンシャルに基づき物質の吸収波長を予測できる.井戸型ポテンシャルと吸収波長の関係性について説明できる.井戸型ポテンシャルと吸収波長の関係性について説明できない.
ヒュッケル法簡単なコードを作成してヒュッケル法の計算ができる.炭素数4までの共役分子のヒュッケル法計算ができる.エチレンのヒュッケル法計算ができる.エチレンのヒュッケル法計算ができない.
水素原子・Hartree-Fock法Hartree-Fock法の説明ができる.Hartree-Fock法の簡単な説明ができる.原子軌道について簡単な説明できる.原子軌道について説明できない.
熱化学と速度論化学反応に関わる熱力学諸量を量子化学計算ソフトウエアを用いて求めることができる.化学反応に関わる熱力学諸量の一部を量子化学計算ソフトウエアを用いて求めることができる.量子化学計算ソフトウエアで計算できる熱力学諸量について説明ができる.量子化学計算ソフトウエアで計算できる熱力学諸量について説明ができない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
企業において量子化学計算を行っていた担当教員の経験を活かし,量子化学とその応用について学習する.前半では井戸型ポテンシャルからはじめ,ヒュッケル法,水素原子,Hatree-Fock法について詳しく学習する.また,計算手法として密度汎関数法を紹介する.後半では量子化学計算ソフトウエアを用いて実際に化学反応や分子間相互作用などについて計算し,熱力学的諸量を求める.
授業の進め方・方法:
配布資料とスライドを使って講義を行い,量子化学計算の基礎を勉強する.適宜演習や実習を行い理解を深める.本科目は学修単位であるので,量子論や各回に必要な数学に関する予習が必須である.また,復習も行われている前提で授業を進める.
注意点:
自分が興味のある現象について,実際に量子化学計算を行い,その結果をまとめて発表してもらう.また,発表は相互評価を行う.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 イントロダクション:量子化学 量子力学の基礎方程式とそれを厳密に解くことの困難さを理解する.
2週 シュレーディンガー方程式・不確定性原理 ド・ブロイの物質波を出発点としてシュレーディンガー方程式を構築できる.また,不確定性原理が量子化学において重要であることを理解する.
3週 井戸型ポテンシャル 井戸型ポテンシャルと化学の関連を理解する.また,その応用例を学ぶ.
4週 ヒュッケル法:エチレンの計算 分子軌道法の概念,ヒュッケル法の概要を理解し,エチレンについての計算ができるようになる.
5週 ヒュッケル法:ブタジエンとシクロブタジエン ブタジエンとシクロブタジエンのヒュッケル法計算を行い,2つの分子の性質の違いについて理解する.
6週 ヒュッケル法:一般的な解法とその応用(実習) Pythonを用いたヒュッケル法計算によりイオン化ポテンシャルや全π電子エネルギーなどを計算できる.
7週 ヒュッケル法:化学反応とヘテロ原子への拡張(実習) Pythonを用いたヒュッケル法計算によりフロンティア軌道理論に基づいた化学反応性の予測ができる.
8週 水素原子 水素原子の原子軌道について理解する.
2ndQ
9週 Hartree-Fock法 Hartree-Fock法がどのような計算式を解いているのかを理解する.
10週 密度汎関数法 分子軌道法とは異なる量子化学の手法について知る.
11週 量子化学の応用:熱力学諸量 量子化学計算において熱力学諸量がどのように求められているかを知る.
12週 量子化学の応用:計算の実行 興味がある化学反応や相互作用について計算のセットアップができる.
13週 量子化学の応用:計算結果の処理 興味がある系について計算結果を処理し,熱力学的諸量を求めることができる.
14週 量子化学の応用:発表 計算結果をまとめて説明できる.
15週 期末試験
16週 予備日

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。5前12
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。5前12
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。5前13
エンタルピーの温度依存性を計算できる。5前13
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。5前13
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。5前12
純物質の絶対エントロピーを計算できる。5前13
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。5前13
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。5前13
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。5前13
平衡定数の温度依存性を計算できる。5前13

評価割合

試験課題発表相互評価合計
総合評価割合4015405100
基礎的能力10510025
専門的能力30525060
分野横断的能力055515