物理化学特論(2022年度以降入学生・2021年度以前入学生用科目)

科目基礎情報

学校 東京工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物理化学特論(2022年度以降入学生・2021年度以前入学生用科目)
科目番号 0005 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学専攻 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 スライド資料
担当教員 皆本 千尋

到達目標

量子化学の基礎を理解し,井戸型ポテンシャルや単純ヒュッケル法により分子の性質を予測できるようになる.また,コンピュータを利用して量子化学計算を行い,化学反応における反応エンタルピー,反応ギブズエネルギーなどの熱力学的諸量や分子軌道,電子分布,光学特性などを計算できるようになることを目標とする.予め量子化学計算を行って物質の物性を予測し,合成の候補を絞っていくことで,研究開発段階の環境負荷を軽減することができるようになることを目指す.

【ディプロマ・ポリシー及びSDGsとの関係】ディプロマ・ポリシー:(1), (2), (3),SDGs:9, 13, 14, 15

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安未到達レベルの目安
量子力学の基礎2次元井戸型ポテンシャルに基づき物質の吸収波長を予測できる1次元井戸型ポテンシャルに基づき物質の吸収波長を予測できる井戸型ポテンシャルと吸収波長の関係性について説明できる井戸型ポテンシャルと吸収波長の関係性について説明できない
単純ヒュッケル法簡単なコードを作成して単純ヒュッケル法の計算ができる炭素数4までの共役分子の単純ヒュッケル法計算ができるエチレンの単純ヒュッケル法計算ができるエチレンのヒュッケル法計算ができない
水素原子と一般の計算方法水素原子や,一般の分子の計算方法について式を用いて説明することができる水素原子や,一般の分子の計算方法について説明することができる水素原子や、一般の分子の計算方法について概略を説明することができる水素原子や,一般の分子の計算方法について概略を説明することができない
コンピュータを利用した量子化学計算目的の物理量を量子化学計算ソフトウエアを用いて求めることができる目的の物理量の一部を量子化学計算ソフトウエアを用いて求めることができる量子化学計算ソフトウエアで計算できる物理量について説明ができる量子化学計算ソフトウエアで計算できる物理量について説明ができない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
量子化学とその応用について学習する.前半では井戸型ポテンシャルからはじめ,単純ヒュッケル法,水素原子とヘリウム原子,コンピュータを利用した量子化学計算について学習する.量子化学計算の手法としては分子軌道法と密度汎関数法を紹介する.後半では量子化学計算ソフトウエアを用いて実際に化学反応や分子間相互作用などについて計算できるようになることを目標とし,計算結果をまとめたプレゼンテーションを実施する.
授業の進め方・方法:
企業において量子化学計算を行っていた担当教員の経験を活かし,スライド資料を主に使って量子化学計算の基礎を勉強する.適宜演習として実際にコードを書いたり,既存の量子化学計算ソフトウエアを利用したりして実際に計算を行い,理解を深める.本科目は学修単位であるので,量子論や各回に必要な数学に関する予習が必須である.また,復習も行われている前提で授業を進める.
注意点:
授業の後半では自分が興味のある現象について,実際にコンピュータを利用した量子化学計算を行い,その結果をまとめて発表する.発表は相互評価も行う.上記の通り,予習・復習が行われている前提で講義を進めるので,必ず予習・復習を行うこと.後半では予習・復習の時間は興味がある系の量子化学計算の実施にあてる.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 シュレーディンガー方程式・不確定性原理 ド・ブロイの物質波を出発点としてシュレーディンガー方程式を構築できる.また,不確定性原理が量子化学において重要であることを理解する.
2週 井戸型ポテンシャル 井戸型ポテンシャルと化学の関連を理解する.また,その応用例を学ぶ.
3週 単純ヒュッケル法:エチレンの計算 分子軌道法の概念,ヒュッケル法の概要を理解し,エチレンについての計算ができるようになる.
4週 単純ヒュッケル法:ブタジエンとシクロブタジエン ブタジエンとシクロブタジエンのヒュッケル法計算を行い,2つの分子の性質の違いについて理解する.
5週 単純ヒュッケル法:一般的な解法とその応用 Pythonを用いたヒュッケル法計算によりイオン化ポテンシャルや全π電子エネルギーなどを計算できる.
6週 単純ヒュッケル法:化学反応とヘテロ原子への拡張 Pythonを用いたヒュッケル法計算によりフロンティア軌道理論に基づいた化学反応性の予測ができる.
7週 水素原子,一般の取り扱い(波動関数法) 水素原子の原子軌道について理解する。より一般化した取り扱い(Hartree-Fock法)の概要を説明できる.電子相関について知る.
8週 密度汎関数法・計算機実験と環境負荷・計算化学の実務 密度汎関数法について概要を説明できる.計算機実験の環境負荷について説明できる.また,計算化学の実務について説明ができる.
2ndQ
9週 熱力学諸量の計算方法・計算の実行と結果の解釈(1) 量子化学計算において熱力学諸量がどのように求められているかを説明できる.量子化学計算で求まる熱力学量の解釈方法を説明できる.
10週 計算の実行と計算結果の解釈(2) 高精度な計算の実行方法,溶媒和の扱いについて理解する.
11週 計算の実行と計算結果の解釈(3) 量子化学計算の結果求まる分子軌道,電子分布などの解釈方法を説明できる.
12週 興味のある対象の量子化学計算(1) 持続的発展の可能な社会の基盤となる化学反応・材料に関する計算の文献調査を行い,興味があるものについて先行研究の結果を説明できる.また,計算計画を立案できる.
13週 興味のある対象の量子化学計算(2) 興味がある化学反応や相互作用,光学特性について計算のセットアップと実施ができる.
14週 興味のある対象の量子化学計算(3) 興味がある系について計算結果を処理し,所望の値を求めることができる.また,これまでに修得した専門知識を元に結果の位置づけができる.
15週 計算結果の発表 計算を行った対象に関する背景・興味を持った理由,計算手法を具体的に説明し,専門知識を元に計算結果の解釈を行うことができる.
16週 予備日

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。5前10,前12,前13,前14
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。5前10,前12,前13,前14
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。5前10,前12,前13,前14
エンタルピーの温度依存性を計算できる。5前10,前12,前13,前14
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。5前10,前12,前13,前14
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。5前10,前12,前13,前14
純物質の絶対エントロピーを計算できる。5前10,前12,前13,前14
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。5前10,前12,前13,前14
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。5前10,前12,前13,前14
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。5前10,前12,前13,前14
平衡定数の温度依存性を計算できる。5前10,前12,前13,前14

評価割合

試験レポート発表相互評価合計
総合評価割合4015405100
基礎的能力10510025
専門的能力30525060
分野横断的能力055515