到達目標
①天然物や化学物質が示す性質をその分子構造から説明できるようになること。②種々の物性を付与するために導入すべき化学構造を提案し、その作用を予測できるようになること。③物性発現のための構造制御が可能な合成反応についても種類と特徴を説明できるようになること。これらの知識を体系的に獲得すれば、求められる物性を示す物質を環境負荷をかけずに開発する方法を考案する能力が高まり、持続可能な社会の実現に貢献することができる。
ディプロマ・ポリシー及びSDGsとの関係:ディプロマ・ポリシー:(1), (2), (3)、SDGs:9, 12,13,14,15
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安(A評価) | 標準的な到達レベルの目安(B評価) | 最低限の到達レベルの目安(C評価) | 未到達レベルの目安(D評価) |
評価項目1 | 材料物性とその分子の構造の関連について具体例を挙げて、かつ、他と比較をしながら説明することができる。 | 材料物性とその分子の構造の関連について具体例を挙げて説明ができる。 | 材料物性は分子の構造と密接に関係していることを説明できる。 | 材料物性は物質の構造と密接な関係があることを理解できていない。 |
評価項目2 | 種々の材料物性の発現のメカニズムについて説明ができる。 | 種々の材料物性について、その発現に関わる官能基・原子団等を説明することができる。 | 材料物性には、熱的性質、力学的性質、電気的性質、光学的性質などがあることを説明できる。 | 材料物性にはどのような種類があるか列挙することができない。 |
評価項目3 | 高分子化合物と低分子化合物の物性の差について、具体例を挙げながら詳細に説明することができる。 | 高分子化合物と低分子化合物の物性の差が化学構造に基づくものであることを説明できる。 | 高分子化合物と低分子化合物には顕著な物性の差があることを説明できる。 | 高分子化合物と低分子化合物には顕著な物性の差があることを理解していない。 |
評価項目4
| 高分子化合物を例に、合成方法の変えれば得られる物質の構造が変化する理由を説明することができる。 | 高分子化合物を例に、合成方法と得られる物質の性質の関係について、具体例を説明することができる。 | 物性制御のためには、その物質を合成する方法も重要になることを説明できる。 | 物性制御のためには、その物質を合成する方法も重要になることを理解できていない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
近年さまざまな機能を有する材料が開発され、生活を豊かにしてくれている。化学・生物分野での材料開発においては、物質の合成-物質の構造ー物性の発現の関連性を十分に理解していることが求められる。すなわち、これまでにない性質をもつ材料を開発しようとすれば、その物質のつくり方および構造にも着目しなければならない。この講義では、材料物性の分類および種々の物性が発現するメカニズムを理解しながら、分子構造との関連性および物性制御を実現させるための合成方法についても、高分子化合物を題材に取り上げて学習していく。
授業の進め方・方法:
この科目は、企業において高分子材料の研究開発の経験を有する教員がその経験を活かし、ただ物性を理解するだけではなく、構造やその合成方法まで掘り下げて理解することを目的とした学修単位の授業である。12週目までは教科書等を読み進めながら、高分子材料の主要な性質の分類、化学構造との関係、構造制御のための合成方法についての基礎的な理解を深めていく。13週目からは一人ずつ発表・討論する機会を設けるので、今後の研究活動に生かせるよう、合成-構造ー物性の関連性を自身で確かめてもらいたい。
注意点:
物性の理解においては官能基特有の性質が重要で、本科の一般化学および有機化学の学習内容が関連している。電気的な性質や光学的な特性については物理化学、工業化学などの専門科目を復習しながら学習を進めてほしい。高分子化合物の性質については、本科の化学Ⅵ、高分子化学で扱っている。物性化学は独立した専門科目ではなく、いわば、化学の知識の集大成である。理解を深めるためには、学修時間を活用して自学自習(予習・復習)にしっかり取組んでほしい。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
高分子化合物と低分子化合物の物性の違いを確認する。 |
分子量の大小や分子量分布が物性に及ぼす影響を説明できるようになること。
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2週 |
高分子化合物の構造と性質の関係ついて学ぶ。 |
高分子化合物の分子の形の違いがどのような物性の差としてあらわれるかを説明できるようになること。
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3週 |
高分子化合物の構造と合成方法について学ぶ。 |
高分子化合物の物性を決定づけることになる重合反応について理解し、重合反応の種類と得られる高分子の構造について説明できるようになること。
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4週 |
高分子化合物の熱的性質について学ぶ。 |
高分子化合物の状態変化を理解したうえで、耐熱性などの性質と化学構造の関係を説明できるようになること。
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5週 |
高分子化合物の力学的性質について学ぶ。 |
高分子化合物に特徴的なゴム弾性、粘弾性など、力学的な性質を説明できるようになること。
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6週 |
高分子化合物の電気的性質について学ぶ。 |
誘電性・導電性高分子などの特徴を化学構造と関連付け説明できるようになること。
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7週 |
高分子化合物の光学的性質について学ぶ。 |
光機能性材料の機能について概略を説明できるようになること。
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8週 |
生体高分子の機能について学ぶ。 |
生体高分子の機能を構造とともに説明できるようになること。
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2ndQ |
9週 |
生体機能材料について学ぶ。 |
分離膜、生体適合性合成高分子などの性質を化学構造と関連付けて説明できるようになること。
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10週 |
高分子の立体構造と物性の関係について学ぶ。 |
高分子化合物の立体構造について理解し、立体構造の差が物性に及ぼす影響を説明できるようになること。
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11週 |
高分子の精密構造制御について学ぶ。 |
高分子化合物の物性発現に関係が深い立体構造を制御できる重合方法の種類、特徴を説明できるようになること。
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12週 |
共重合体、ポリマーブレンドを利用した物性制御の方法を学ぶ。 |
高分子材料の物性制御の手段としての共重合体およびポリマーブレンドについて基本的なことがらを説明できるようになること。
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13週 |
発表討論会 |
持続的発展に寄与できると考えられる材料を取り上げ、その特徴的な機能と化学構造の関連性、機能発現の理由などを説明する。
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14週 |
発表討論会 |
持続的発展に寄与できると考えられる材料を取り上げ、その特徴的な機能と化学構造の関連性、機能発現の理由などを説明する。
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15週 |
発表討論会 講義まとめ |
持続的発展に寄与できると考えられる材料を取り上げ、その特徴的な機能と化学構造の関連性、機能発現の理由などを説明する。
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16週 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 有機材料 | 有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。 | 5 | 前1 |
σ結合とπ結合について説明できる。 | 5 | 前6 |
混成軌道を用い物質の形を説明できる。 | 5 | 前6 |
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。 | 5 | 前2,前10,前11 |
構造異性体、幾何異性体、鏡像異性体などについて説明できる。 | 5 | 前2,前10,前11 |
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。 | 5 | 前5,前6,前7,前8,前9 |
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。 | 5 | 前11 |
高分子化合物がどのようなものか説明できる。 | 5 | 前1 |
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。 | 5 | 前2 |
高分子の分子量、一次構造から高次構造、および構造から発現する性質を説明できる。 | 5 | 前1,前2 |
高分子の熱的性質を説明できる。 | 5 | 前4 |
評価割合
| 試験 | レポート | 発表 | 合計 |
総合評価割合 | 60 | 20 | 20 | 100 |
基礎的能力 | 20 | 0 | 10 | 30 |
専門的能力 | 40 | 20 | 10 | 70 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 |