物理化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 長岡工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 物理化学Ⅰ
科目番号 0044 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 P. Atkins, 他 著,千原秀昭, 他 訳, アトキンス物理化学要論 第7版, 東京化学同人, 2020
担当教員 熱海 良輔

到達目標

(科目コード:41300、英語名:Physical Chemistry Ⅰ)
この科目は長岡高専の教育目標(D)と主体的に関わる。この科目の到達目標と、長岡高専の学習・教育到達目標との関連を、到達目標、評価の重み、学習教育目標との関連の順で示す。この科目では「授業計画・内容」に示した各項目の到達目標を目指し、化学現象の定量的な取り扱いと数値計算能力を学習すると共に、化学熱力学および反応速度論を基礎とした化学反応の定量的な予測方法について学習し、化学分野の基礎を修得する。100%(d1)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安未到達レベルの目安
気体のPVT関係完全気体と実在気体の乖離を理解し、状態方程式を用いて気体のPVT関係を予測できる。熱力学の第零法則により温度を定義することができる。1成分または多成分の完全気体について、状態方程式を用いて気体のPVT関係を予測できる。完全気体の状態方程式を用いて、気体のPVT関係を予測できる。左記に達していない
気体分子運動論簡単な力学的前提から、気体分子運動のモデルを構築できる。誘導の下、気体分子運動のモデルを構築できる。気体分子運動のモデルから、分子の平均速度などを計算できる。左記に達していない
熱力学の第一法則エネルギ保存則を立式できる。気体の膨張仕事などを計算し、内部エネルギの変化を計算できる。熱力学の第一法則から、内部エネルギの変化を計算できる。熱と仕事の変化を定量的に記述することができる。左記に達していない
熱力学第二法則 カルノーサイクルのモデルを立式することができ、カルノー効率を計算できる。エントロピ変化・自由エネルギ変化を計算し、現象の自発的な進行方向を予測できる。カルノーサイクルにおける効率やエントロピ変化を計算できる。カルノーサイクルにおいて、カルノー効率等を計算できる。左記に達していない
化学平衡化学反応における平衡定数・平衡組成が計算できる。定圧反応における反応熱を計算できる。自由エネルギ変化から反応の自発的な進行方向を予測できる。定圧反応における反応熱を計算できる。自由エネルギ変化から反応の自発的な進行方向を予測できる。定圧反応における反応熱を計算できる。左記に達していない
電気化学水素燃料電池の動作原理を、電極反応により記述することができる。化学電池・水素燃料電池・水電解について、Nernstの式により標準電位を計算することができる。化学電池・水素燃料電池・水電解について、Nernstの式により標準電位を計算することができる。Nernstの式により、水素燃料電池の標準電位を計算することができる。左記に達していない
化学反応速度微分方程式を解き、任意の時刻における組成を予測することができる。工業的に重要な種々の触媒反応について、反応速度式を立式し、解くことができる。Arrheniusの法則を利用し、反応速度データから速度論パラメータを計算することができる。微分方程式を解き、任意の時刻における組成を予測することができる。Arrheniusの法則を利用し、反応速度データから速度論パラメータを計算することができる。Arrheniusの法則を利用し、反応速度データから速度論パラメータを計算することができる。左記に達していない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
熱力学第一法則・第二法則を通して化学平衡の概念を理解し、反応の方向と平衡組成を予測する。また、反応速度論により、任意の時間における組成の予測、反応機構の理解、さらに簡単な反応器の設計に関して学習する。
授業の進め方・方法:
熱力学の知識体系は非常に抽象的であるため、適宜実際の反応系に対して計算を行い、理解を深める。平衡組成の計算には関数電卓が必要であるため、必ず抗議の際に持参すること。また、速度定数や活性化エネルギの計算においても、関数電卓の統計機能を利用し、定期試験でも関数電卓を使用する。
注意点:
熱力学を学習する際に気を付けなければならないことは、熱力学が非常に抽象的な知識体系であり普遍性が高く、またMacroscopicな学問であるということである。必ず手を動かして計算し、熱力学関数がMacroscopicにどのような意味を持つのか考えること。熱力学を習得するには、化学・化学工学系のエンジニアを志望していても安易に分子論のイメージに飛びつかないことが重要である。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 気体のPVT関係 状態量・状態方程式について学習し、気体のPVTを計算できる。
2週 気体分子運動論 気体の分子運動の物理モデルから、分子の平均運動速度・平均自由行程・衝突頻度が気体の分子量・状態量に対してどのように変化するか記述できる。
3週 実在気体 分子の相互作用を理解し、van der Waals状態方程式を記述し、実在気体についてPVT関係を計算できる。
4週 熱と仕事 気体に出入りする熱・仕事の量を状態量で表現することができる。
5週 熱力学第一法則 熱と仕事に関するエネルギ保存則を理解し、様々な条件における熱力学関数を数式で表現できる。
6週 エンタルピ エンタルピの概念を導入し、反応エンタルピを計算し、定圧条件における反応熱を計算できる。
7週 総合演習 状態方程式、気体分子運動論、熱力学第一法則に関する演習を行う。
8週 中間試験 試験時間:50分
2ndQ
9週 Carnotサイクル Carnotサイクルにおける熱の投入量と仕事量に関して数式で表現することができ、Carnot効率を定義できる。
10週 熱力学第二法則
CarnotサイクルからClausiusの不等式を導き、エントロピを導入する。種々の条件におけエントロピ変化を計算できる。また、分子論的なイメージを通して熱力学第三法則について説明する。

11週 化学反応におけるエントロピ変化 化学反応におけるエントロピ変化を計算し、反応の方向を予測できる。
12週 化学反応におけるGibbs自由エネルギ変化 Gibbs自由エネルギ変化を導入し、反応Gibbs自由エネルギ変化から反応の方向を予測できる。また、反応に伴って出入りする非圧縮仕事を計算できる。

13週 化学平衡:平衡組成の計算 平衡定数の概念を導入し、Gibbs自由エネルギ変化の値から、平衡組成を計算できる。
14週 化学平衡:Le Chatelierの法則 van't Hoffの式を導入し、平衡定数の温度依存性を記述できる。また、温度・圧力に対する平衡組成の変化を予測できる。
15週 総合演習 カルノーサイクル・エントロピ変化・自由エネルギ変化の計算を中心に演習を行う。
16週 期末試験
17週:試験解説と発展授業
試験時間:50分
本授業の内容を総括する
後期
3rdQ
1週 化学平衡:平衡組成の計算に関する総括 Gibbs自由エネルギ変化、平衡定数、van't Hoff式について復習し、平衡組成の計算方法を概説する。
2週 化学ポテンシャル これまで学習した平衡定数とGibbs自由エネルギ変化の関係について、化学ポテンシャルを導入して説明する。
3週 相平衡の熱力学 相転移に伴うエンタルピ変化、温度・圧力依存性、相平衡について熱力学関数で記述できる。
相転移に伴うエンタルピ変化、温度・圧力依存性、相平衡について熱力学関数で記述できる。
4週 相図 純物質の相図について理解し、相境界をClausius-Clapeyronの式で予測できる。
5週 溶液の熱力学 溶液の熱力学における束一的性質を理解し、蒸気圧、沸点上昇、凝固点降下を予測できる。
6週 電気化学 電気化学セルの構成を理解し、化学電池・燃料電池の発電原理を理解し、さらに電極電位を計算できる。
7週 総合演習 化学平衡、相平衡の熱力学、電気化学について演習を行う。
8週 中間試験 試験時間:50分
4thQ
9週 反応速度の定義
反応速度・反応次数・反応速度定数について定義し、反応速度データと濃度データから速度定数が算出できる。
10週 積分型反応速度式
指数則で表現された簡単な微分型反応速度式から積分型速度式を導出できる。また、半減期を速度定数や初期濃度で記述できる。
11週 反応速度の温度依存性
Maxwel分布を導入し、衝突理論により反応速度の温度依存性を数式で表現できる。
12週 反応機構
分子の衝突によって化学反応が進行することを理解し、Lindemann機構について立式できる。また、遷移状態理論について学習する。
13週 均一触媒反応
触媒反応における反応速度式を理解し、各種パラメータを反応データから計算できる。
14週 不均一触媒反応
固体表面上の吸着と気固触媒反応について理解し、Langmuir-Hinshelwood式を記述できる。
15週 総合演習 反応速度論全般について演習を行う。
16週 期末試験
17週:試験解説と発展授業
試験時間:50分
本授業の内容を総括する

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学放射線の種類と性質を説明できる。2
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。2
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。2
気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4
混合気体の分圧の計算ができる。4
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4
束一的性質を説明できる。4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4
平衡定数の温度依存性を計算できる。4
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。3

評価割合

試験レポート課題合計
総合評価割合6040100
基礎的能力6040100
専門的能力000
分野横断的能力000