有機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 長岡工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 有機化学Ⅰ
科目番号 0107 科目区分 専門 / 必履修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 PEL有機化学、粳間由幸編著、実教出版
担当教員 鈴木 秋弘

到達目標

この科目は長岡高専の教育目標の(D)と主体的に関わる。
この科目の到達目標と、成績評価上の重み付け、各到達目標と長岡高専の学習・教育到達目標との関連を以下に示す。①有機化合物の種類(分類)、命名法を理解する10%(d1)、②有機化合物の構造と物理的性質、化学的性質との関係を理解する30%(d1)、③有機化合物の電子的構造立体的構造を理解する30%(d1)、④有機化合物の合成法や反応性(官能基の化学)を理解する30%(d1)。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1有機化合物の種類(分類)、命名法を理解している。有機化合物の種類(分類)、命名法を概ね理解している。左記に達していない。
評価項目2有機化合物の構造と物理的性質、化学的性質との関係を理解している。有機化合物の構造と物理的性質、化学的性質との関係を概ね理解している。左記に達していない。
評価項目3有機化合物の電子的構造、立体的構造を理解している。有機化合物の電子的構造、立体的構造を概ね理解している。左記に達していない。
評価項目4有機化合物の合成法や反応性(官能基の化学)を理解している。有機化合物の合成法や反応性(官能基の化学)を概ね理解している。左記に達していない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
低学年でも化学を学習し、有機化合物の様々な性質や反応性を学んだはずですが、各物質の性質と反応性の違いについては素通りし、暗記に努めたのではないでしょうか?しかし、有機化合物の構造や性質を順序立てて学習していくと、一見複雑に見える多くの反応も簡単な官能基の化学であることに気付くはずです。本講義では、それぞれの反応機構を通して電子の動きを学び、丸暗記の化学からの脱却を図り「なぜそうなるのか」の理屈を理解し、原料から製品、すなわち有機化学と身の回りの化学物質とのつながりを学習します。
〇関連する科目:化学(1・2 学年通年)、有機化学 II(4 学年前期)
授業の進め方・方法:
教科書の内容説明に、例題、演習問題を組み入れ、学生による解答と説明、その後に教員による補足説明という形式で授業を展開する。章ごとに、演習問題資料を配付。
注意点:
有機化学の反応は数も多く、それを一つ一つ暗記するのは不可能です。しかし、物質の性質と密接に関係する官能基に注目すると、何故そのような性質を示し、そのような反応をするのか系統的に理解できるようになります。内容の十分な理解には、質問を含めた積極的な授業への参加とこれまでに学んだ化学の復習、日常的な自学自習の態度が必要です。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 有機化合物の化学結合 共有結合について理解する。
2週 有機化合物の化学結合(混成軌道) sp3, sp2, sp混成軌道を理解する。
3週 有機化学の酸と塩基 アレニウス、ブレンステッド・ローリー、ルイスの酸塩基の定義を理解する。
4週 アルカン(命名、構造、物理的性質) アルカンの命名、構造異性体、基本的性質を理解する。
5週 アルカン(反応) アルカンの主な反応(燃焼)について理解する。
6週 アルカン(ラジカル置換反応) アルカンの置換反応(ラジカル反応)について理解する。
7週 シクロアルカン(構造) シクロアルカンの構造とニューマン投影式について理解する。
8週 シクロアルカン(性質、反応) シクロアルカンの性質と反応性について理解する。
2ndQ
9週 アルケン (命名、構造) アルケンの命名と基本的性質を理解する。
10週 アルケン (立体配座、シス-トランス異性 アルケンの立体配座
11週 アルケンの合成と反応 アルケンの製法と反応性を理解する。
12週 共役ジエンの反応) 共役ジエンの反応性を理解する。
13週 アルキン(命名、構造) アルキンの命名と基本的性質を理解する。
14週 アルキン(合成と反応) アルキンの製法と反応性を理解する。
15週 期末試験 試験時間:50分
16週 試験解説、芳香族化合物(命名、構造、ベンゼンの安定性と共鳴) 試験の確認、芳香族化合物の命名と基本的性質を理解する。
後期
3rdQ
1週 求電子置換反応 求電子置換反応機構を理解する。
2週 ベンゼン誘導体の求電子置換反応、酸化と還元反応 ベンゼン誘導体の反応と配向性を理解する。
3週 立体化学(エナンチオマー) 不斉炭素と光学活性を理解する。
4週 ジアステレオマーとメソ体 光学活性化合物の分類と性質を理解する。
5週 ハロゲン化アルキル(命名、構造) ハロゲン化アルキルの命名と基本的性質を理解する。
6週 ハロゲン化アルキル:求核置換反応 SN1, SN2反応を理解する。
7週 ハロゲン化アルキル:脱離反応 E1, E2反応を理解する。
8週 ハロゲン化アルキル:グリニャール試薬、反応 グリニャール試薬の合成と反応性を理解する。
4thQ
9週 アルコールとフェノール(命名) アルコールとフェノールの命名と基本的性質を理解する。
10週 アルコール類の物理的性質 ヒドロキシ基の性質を理解する。
11週 アルコールの合成と反応 アルコールの製法と反応性を理解する。
12週 フェノールの合成と反応 フェノールの製法と反応性を理解する。
13週 エーテル(命名と構造) エーテルの命名と基本的性質を理解する。
14週 エーテルの合成と反応、エポキシドの合成と反応 エーテルおよびエポキシドの製法と反応性を理解する。
15週 期末試験 試験時間:50分
16週 試験解説と発展授業 試験の確認及び有機化学 I 総復習

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学化学(一般)化学(一般)電離度から酸・塩基の強弱を説明できる。3前3
酸化還元反応について説明できる。3後2
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。4前1
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4前4,前9,前13,前16,後5,後9,後13
σ結合とπ結合について説明できる。4前1,前2
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4前2
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4前1,前2
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4前1,前2
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4前1,前3
共鳴構造について説明できる。4前16
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4前1,前4,前9,前13,後5,後10,後13
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4前16
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。4前10,後3,後4
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。4前10,後3,後4
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。4後3,後4
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4前4,前7,前9,前13,前16,後5,後9,後10,後13
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4前5,前6,前8,前11,前14,後1,後2,後6,後7,後8,後11,後12,後14,後16
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4前5,前6,前8,前11,前14,後1,後2,後6,後7,後8,後11,後12,後14,後16
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4前4,前7,前9,前11,前12,前13,前16,後5,後9,後10,後13
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4前12

評価割合

試験合計
総合評価割合100100
基礎的能力2020
専門的能力8080
分野横断的能力00