材料強度学

科目基礎情報

学校 富山高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 材料強度学
科目番号 0145 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 機械システム工学科 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 教科書は指定しません.プリントを配布します.
担当教員 増山 圭一

到達目標

材料の塑性変形挙動を微視的に考える転位論の基礎的事項について,力学的ならびに材料学的な観点よりそれらを理解することを目指す.また,各種の金属材料強化機構や,塑性加工の転位論的な理解を目指す.具体的には,下記の『評価(ルーブリック)』の『標準的な到達レベルの目安(良)』に記載された内容が,本科目の基本的な到達目標となる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
すべり面,すべり方向,すべり系fcc,bcc,hcpにおけるすべり面,すべり方向,すべり系を理解しており,正しく説明することができる.fcc,bcc,hcpにおけるすべり面,すべり方向,すべり系を説明できる.fcc,bcc,hcpにおけるすべり面,すべり方向,すべり系を説明できない.
シュミット因子シュミット因子を理解しており,任意の結晶面に作用するせん断応力を,正しく求めることができる.シュミット因子を理解しており,代表的な結晶面に作用するせん断応力を求めることができる.シュミット因子を理解しておらず,特定の結晶面に作用するせん断応力を求めることができない.
刃状転位,らせん転位,混合転位,バーガースベクトル刃状転位,らせん転位における原子配列を理解しており,転位線とバーガースベクトル,転位の移動方向との相関について,正しく説明することができる.刃状転位,らせん転位における原子配列がイメージでき,バーガースベクトルについても説明することができる.刃状転位,らせん転位における原子配列がイメージできない.
転位に働く力,転位どうしに働く力転位に働く力,転位どうしに働く力を正しく計算することができる.転位に働く力,転位どうしに働く力の求め方を知っている,転位に働く力,転位どうしに働く力の求め方を知らない.
転位と溶質原子の間に働く力転位と溶質原子の間に働く力を正しく求めることができる.転位と溶質原子の間に働く力の求め方を説明できる.転位と溶質原子の間に働く力の求め方を説明できない.
転位の増殖,交差すべり,二重交差すべり転位の増殖,交差すべり,二重交差すべりについて,正しく説明することができる.転位の増殖,交差すべり,二重交差すべりを知っている.転位の増殖,交差すべり,二重交差すべりを知らない.
ジョグ,キンク,転位の堆積ジョグ,キンク,転位の堆積について,正しく説明することができる.ジョグ,キンク,転位の堆積を知っている.ジョグ,キンク,転位の堆積を知らない.
冷間加工,熱間加工冷間加工と熱間加工の違いを理解しており,それらを正しく説明することができる.冷間加工と熱間加工の概要を説明することができる.冷間加工と熱間加工の概要を説明することができない.
固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化を理解しており,正しく説明できる.固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化を説明できる.固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化を説明できない.

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 A-2 説明 閉じる
JABEE 1(2)(d)(1) 説明 閉じる
JABEE 1(2)(d)(2) 説明 閉じる
JABEE 2.1(1) 説明 閉じる
ディプロマポリシー 1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
転位論は,材料学(固体力学)関連の分野で,難解なものの一つですが,金属材料の塑性変形のメカニズムの基になっている重要な概念の一つです.しっかりと理解して下さい.
授業の進め方・方法:
教員単独で行います.基礎科目なので,座学が中心になりますが,適宜,授業中に,演習問題等も取り入れます.
注意点:
材料工学関連の科目,塑性加工関連の科目,応力とひずみに関係する科目を修得していることが望ましい.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 すべり面,すべり方向,すべり系 種々の結晶構造によるすべり面,すべり方向,すべり系が説明できる.
2週 すべり面,すべり方向,すべり系・シュミット因子 シュミット因子および臨界せん断応力について説明できる
3週 シュミット因子 シュミット因子および臨界せん断応力について説明できる
4週 刃状転位,らせん転位,混合転位,バーガースベクトル 転位の種類について 定義と説明ができる.
5週 刃状転位,らせん転位,混合転位,バーガースベクトル 転位の種類について 定義と説明ができる.
6週 転位に働く力,転位どうしに働く力 結晶に応力が作用して転位が動くと 系のポテンシャルエネルギーを減少させるように応力は仕事をする
転位に働く力は エネルギー変化を転位の位置で微分したものとして定義できる.力の導出ができること.
7週 転位と溶質原子の間に働く力 結晶に応力が作用して転位が動くと 系のポテンシャルエネルギーを減少させるように応力は仕事をする
転位に働く力は エネルギー変化を転位の位置で微分したものとして定義できる.力の導出ができること.
8週 すべり,二重交差すべり 二重交差すべりによる転位の増殖機構をエネルギー的に説明できる.
2ndQ
9週 すべり,二重交差すべり 二重交差すべりによる転位の増殖機構をエネルギー的に説明できる.
10週 ジョグ,キンク,転位の堆積 キンクの発生する仕組みについて 理解する.
11週 ジョグ,キンク,転位の堆積 キンクの発生する仕組みについて 理解する.
12週 冷間加工,熱間加工 冷間加工おける硬化,熱間加工における転位の消滅 再結晶などの仕組みを理解する.
13週 固溶強化,加工(転位)硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化 結晶の塑性変形は、転位の増殖と運動によって起こる。従って、材料を強化するためには、転位源の活動を抑制したり、転位の運動を妨げればよいということになる。この強化手法として固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化などがあるが これら仕組みを理解する.
14週 固溶強化,加工(転位)硬化,析出強化,結晶粒の微細化による強化 結晶の塑性変形は、転位の増殖と運動によって起こる。従って、材料を強化するためには、転位源の活動を抑制したり、転位の運動を妨げればよいということになる。この強化手法として固溶強化,加工硬化,析出強化,結晶粒の微細化などがあるが これら仕組みを理解する.
15週 期末試験 上記内容について 定期試験を実施して評価する.
16週 試験返しと最終成績の提示・授業アンケート,達成度調査 試験返しと最終成績の提示・授業アンケート,達成度調査

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野複合材料強さの複合則、比強度、比剛性の観点から、複合化するメリットを説明できる。3
材料組織点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。3
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。3
面欠陥である積層欠陥について説明できる。3
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。3
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。3
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。3
降伏現象ならびに応力-歪み曲線から降伏点を求めることができる。3
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。3
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。3
力学荷重と応力、変形とひずみの関係について理解できる。3
応力-ひずみ曲線について説明できる。3
フックの法則を用いて、縦弾性係数(ヤング率)、応力およびひずみを計算できる。3
許容応力と安全率を説明できる。3
荷重の方向、性質と物体の変形様式との関係について説明できる。3
引張、圧縮応力(垂直応力)とひずみ、物体の変形量を計算できる。3
縦ひずみと横ひずみを理解し、ポアソン比およびポアソン数を説明できる。3
せん断応力(接面応力)とせん断ひずみ(せん断角)を計算できる。3
線膨張係数の意味を理解し、熱応力を計算できる。3
垂直応力、垂直ひずみ、縦弾性係数を用いてひずみエネルギーを計算できる。5

評価割合

試験レポート・課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力401050
専門的能力401050