応用物理Ⅰ

科目基礎情報

学校 富山高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 応用物理Ⅰ
科目番号 0150 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械システム工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 高専の応用物理第2版(森北出版株式会社:小暮陽三監修:ISBN978-4-627-15102-4)
担当教員 豊嶋 剛司

到達目標

下記に挙げる物理現象を数式を用いて表現するだけでなく、それらが数学的に連動し、解析可能な事象であることを理解することを目標とする。
・力学(運動方程式、仕事と力、剛体、運動量保存則、角運動量、慣性モーメント)
・流体力学(剛体と弾性体の差異、完全流体、連続の方程式、ベルヌーイの定理)
・波動(干渉、反射、屈折、回折)
・光学(粒子性と波動性)
・電磁気学(クーロン力、電界、電位、ガウスの法則、静電容量、絶縁体、電気的エネルギー)
具体的には下記ルーブリックの各項目が到達目標になる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
力学についてⅠ運動の3法則を理解し、問題文中から該当する式を導出し、計算ができる運動の3法則を説明でき、順序立った問題に課せられた式を導出し、計算ができる運動の3法則に基づく式の導出ができない
力学についてⅡ仕事と力の関係を理解し、微積分を活用して双方の導出ができる仕事と力が対応することを理解し、順序立った問題に課せられた式を導出し、計算ができる仕事と力の関係を理解せず、式の導出ができない
質点系の力学についてⅠ剛体の形状を微小部に分割して重心の導出ができる剛体の形状を分割した微小部に対し、重心を導出する式に適用ができる重心の導出ができない
質点系の力学についてⅡ運動量の導出と保存則を理解し、多次元空間において物体の衝突前後の挙動を正しく記述できる運動量の導出と保存則を理解し、1次元軸上での物体の衝突挙動を正しく記述できる運動量が説明できない
質点系の力学についてⅢ運動量と角運動量、並進運動と回転運動における力学的エネルギーの対応関係が説明できる角運動量や回転運動における運動エネルギーの導出ができる並進運動と回転運動の違いが説明できない
剛体の力学についてⅠ剛体を正しく理解し、質点等の集合体に分割・結合が使いこなせる剛体の力学的性質が微小部の集合として式に表し、計算ができる質点と剛体の区別がつかない
剛体の力学についてⅡ典型的な剛体の慣性モーメントを導出し、回転の運動方程式の計算と挙動を正しく記述ができる簡便な剛体の慣性モーメントを導出し、回転の運動方程式導出や計算ができる簡便な剛体の慣性モーメントの導出ができない
変形する物体についてⅠ剛体と弾性体の差異を理解し、材料の力学的挙動について説明ができる剛体と弾性体の差異を説明できる剛体と弾性体の差異を説明できない
変形する物体についてⅡ完全流体における連続の方程式やベルヌーイの定理を用いて流体の運動が導出できる完全流体における連続の方程式やベルヌーイの定理を記述し、簡便なケースにおける導出ができる連続の式やベルヌーイの定理が説明できない
波について波の諸性質(干渉や反射、屈折、回折)について理解し、式や条件の計算や説明ができる波の諸性質(干渉や反射、屈折、回折)について理解し、式の導出と計算ができる波の諸性質(干渉や反射、屈折、回折)について説明ができない
光学について光の粒子性と波動性を正しく理解し、波の諸性質の式が摘要できる光の波動性を理解し、波の諸性質の式の導出と計算ができる光の波動性が説明できない
静的な電磁気についてⅠ点電荷や仮想的な点磁荷に対するクーロンの法則や電磁場とクーロン力、位置エネルギーの導出ができる点電荷や仮想的な点磁荷に対するクーロンの法則や電磁場とクーロン力、位置エネルギーの計算ができるクーロンの法則や力場、位置エネルギーの対応関係が説明できない
静的な電磁気についてⅡガウスの法則を理解し、電界や電位の導出ができるガウスの法則を理解し、簡便な電荷配置における電界や電位の計算ができるガウスの法則が説明できない
静的な電磁気についてⅢ電荷と電位、静電容量の関係を理解し、式の導出ができる電荷と電位、静電容量の関係を理解し、式の計算ができる電荷と電位、静電容量の関係が説明できない
静的な電磁気についてⅣ導体と絶縁体の特徴を列挙し、図もしくは式を用いて説明ができる導体と絶縁体の特徴を列挙できる導体と絶縁体の差異が説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
力学、流体力学、波動、電磁気学における物理現象(ニュートンの運動法則・質点の運動・エネルギー保存則・剛体の運動・弾性体と完全流体・光の波動性と粒子性・静的な電磁気)を数式を用いて表現するだけでなく、それらが数学的に連動し、解析可能な事象であることを理解し、説明ができることを目標と定める。
授業の進め方・方法:
講義内容を振り返る演習や課題を通じて学生の理解度を適宜確認する。
注意点:
応用物理は物理学で学んできた知識を数学(特に微分・積分)の見地から見直し,基本的な概念を理解することが大切である.このことは,単に式を覚えるのではなく,演習問題を自分で考え,解いてみることが必要であり,関連図書や関連する参考書などを活用して自学習にも望んで欲しい.「応用」物理とあるように,この講義は物理学を基本とする科目であることから1~2年時に学んだ物理を再度勉強するつもりで臨むこと.本教科の内容に疑問が生じた時点で積極的に質問をすることが望ましい.なお,授業計画は学生の理解度に応じて変更する場合がある。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
位置と速度、加速度の関係の復習
物理学で学んできた力学の基本式を復習する
2週 力学の基本Ⅰ
ニュートンの運動法則について学ぶ
運動の第一~第三法則の説明ができる
3週 力学の基本Ⅱ
重力と万有引力、慣性の法則について
万有引力の式から重力加速度の導出ができる。また慣性系について説明ができる
4週 力学の基本Ⅲ
仕事と運動エネルギー、位置エネルギーについて
保存力を理解し、位置エネルギーと力の関係を説明できる
5週 質点系の力学Ⅰ
重心の導出、運動量について
重心の導出ができる。運動量保存則を用いて物体の衝突前後の運動量が導出できる
6週 質点系の力学Ⅱ
力のモーメントと角運動量について
回転運動における運動方程式が記述できる
7週 前期中間試験
教科書の1~2章についての理解度・到達度を確認する
8週 答案返却・解説
2ndQ
9週 剛体の力学Ⅰ
剛体の回転軸周りの運動方程式について
剛体の定義が説明でき、微小部の回転運動方程式が記述できる
10週 剛体の力学Ⅱ
力のモーメントと慣性モーメントについて
回転運動の方程式から角速度の導出ができる
11週 剛体の力学Ⅲ
典型的な剛体における慣性モーメントの導出と回転運動における運動方程式の解法について
種々の形状をした剛体の慣性モーメントの導出ができる
12週 変形する物体Ⅰ
弾性体と完全流体について
剛体と弾性体の違いについて説明ができる
完全流体について説明ができる
13週 変形する物体Ⅱ
連続の方程式について
連続の方程式が記述でき、異なる地点における流速の計算ができる
14週 変形する物体Ⅲ
ベルヌーイの定理について
ベルヌーイの定理が記述でき、異なる地点における力学的エネルギーの導出ができる
15週 前期末試験
教科書の3~4章についての理解度・到達度を確認する
16週 答案返却・解説
後期
3rdQ
1週 波の性質Ⅰ
波の伝搬と重ね合わせ、干渉について
縦波と横波の違いを説明できる
波の伝搬と干渉について説明できる
2週 波の性質Ⅱ
波の反射、屈折、回折について
波の反射や屈折、回折現象について説明ができる
3週 波の性質Ⅲ
音波と定在波、ドップラー効果について
定在波について説明ができる
ドップラー効果について説明ができる
4週 光学Ⅰ
光の伝搬について
光の波長と振動数、光速の関係式が記述できる
反射や屈折の式が記述・計算できる
5週 光学Ⅱ
光の干渉について
光の干渉効果が説明できる
6週 光学Ⅲ
光の回折について
光の回折現象が説明できる
7週 後期中間試験
教科書の5章および波の諸性質についての理解度・到達度を確認する
8週 答案返却・解説
4thQ
9週 静的な電磁気Ⅰ
点電荷とクーロン力について
点電荷間に働くクーロン力の計算ができる
10週 静的な電磁気Ⅱ
電界とガウスの法則について
点電荷が作る電界が計算できる
ガウスの法則を用いて典型的な電界の導出ができる
11週 静的な電磁気Ⅲ
電位と電気的な位置エネルギーについて
クーロン力と位置エネルギーの関係を理解し、電位が導出できる
12週 静的な電磁気Ⅳ
静電容量とコンデンサーについて
電気容量の定義を理解し、コンデンサーに蓄えられる電荷やエネルギーの計算ができる
13週 静的な電磁気Ⅴ
導体と誘電体の差異について
導体と誘電体の違いが説明できる
14週 静的な電磁気Ⅵ
静的な磁界におけるクーロンの法則や磁気的エネルギーについて
仮想磁荷を導入することで電荷と同様にクーロンの法則が成立することを説明できる
15週 学年末試験
教科書の7章についての理解度・到達度を確認する
16週 試験返却、解説、授業アンケート

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学速度と加速度の概念を説明できる。3前1,前2,前7
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。3前1,前7
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。3前2,前7
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。3前2,前7
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3前2,前3,前7
自由落下、及び鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前2,前3,前7
鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前3,前7
水平投射、及び斜方投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前3,前7
物体に作用する力を図示することができる。3前2,前4,前7
力の合成と分解をすることができる。3前2,前4,前7
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。3前3,前4,前7
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。3前3,前4,前7
慣性の法則について説明できる。3前3,前7
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。3前3,前7
運動方程式を用いた計算ができる。3前3,前7
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3前3,前7
静止摩擦力がはたらいている場合の力のつりあいについて説明できる。3前2,前7
最大摩擦力に関する計算ができる。3前4,前7
動摩擦力に関する計算ができる。3前4,前7
仕事と仕事率に関する計算ができる。3前4,前7
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。3前4,前7
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前4,前7
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前4,前7
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3前4,前7
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。3前5,前7
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。3前5,前7
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3前5,前7
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。3前6,前7
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。3前4,前7
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。3前4,前6,前7
万有引力の法則から物体間にはたらく万有引力を求めることができる.3前3,前7
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前4,前7
力のモーメントを求めることができる。3前6,前7,前10,前11,前15
角運動量を求めることができる。3前6,前7,前10,前11,前15
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3前6,前7,前10,前11,前15
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3前9,前15
重心に関する計算ができる。3前5,前7,前15
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3前9,前10,前11,前15
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3前10,前11,前15
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。3後1,後4,後7
横波と縦波の違いについて説明できる。3後1,後7
波の重ね合わせの原理について説明できる。3後1,後7
波の独立性について説明できる。3後1,後7
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。3後1,後5,後7
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。3後3,後7
ホイヘンスの原理について説明できる。3後2,後7
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。3後2,後5,後6,後7
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。3後3,後7
気柱の長さと音速から、開管、閉管の固有振動数を求めることができる(開口端補正は考えない)。3後3,後7
共振、共鳴現象について具体例を挙げることができる。3後3,後7
一直線上の運動において、ドップラー効果による音の振動数変化を求めることができる。3後3,後7
自然光と偏光の違いについて説明できる。3後4,後7
光の反射角、屈折角に関する計算ができる。3後4,後7
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。3後6,後7
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。3後9,後13,後15
クーロンの法則を説明し、点電荷の間にはたらく静電気力を求めることができる。3後9,後10,後11,後12,後14,後15

評価割合

定期試験レポート、課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力602080
専門的能力20020
分野横断的能力000