日本語と文化

科目基礎情報

学校 富山高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 日本語と文化
科目番号 0070 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 電気制御システム工学科 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 授業者作成テキスト・講義資料
担当教員 高熊 哲也,足立 繭子

到達目標

【近代文学分野:高熊担当分】人間や人間社会に関して、健全でバランスの取れた幅広いものの見方を育成する。文化や芸術に関心や興味を持つ。1講義資料に示した語注や語彙・漢字のポイントを手引きとして、テキストのあらすじが理解できる。2作品が現代とは異なる文化や社会を舞台にしていることを理解して作品読解にあたる。3作者の表現の意図や、作品の構成に表れた世界観(幻想性や神秘性)について興味を持って作品を読解する。
【古典分野:足立担当分】伝統的な言語文化への興味・関心を広く持ち、単なる古文常識的な「知識」にとどまらない、生き生きとしたことばの働きについて理解し、その特徴を説明できる。規範と逸脱によって、曰本の「イ云統文化」が更新されていくことについて、自分の意見を述べることができる。
これを具体化すると、以下のようになる。1教材の文章中の学術用語・古文の語彙・文法について、説明したり、使用したりすることができる。2平安時代の文学史的な知識や背景となる時代習俗について、説明することができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
【近】テキストの読解(文語小説の特徴の理解、語彙)講義資料に示した語注や語彙・漢字のポイントを十分に理解しつつ、文語体のテキストを円滑に読み解くことができる。講義資料に示した語注や語彙・漢字のポイントを手引きとして、テキストのあらすじを追える。講義資料に示した語注や語彙・漢字のポイントを参照しても、テキストのあらすじを追えない。
【近】時代背景の理解明治初期から中期の社会状況や人々の生活を具体的かつ豊かに想像しつつ作品を読める。作品が現代とは異なる文化や社会を舞台にしていることを理解できる。時代状況を視野に入れて作品を読むことができない。
【近】作品読解上の問題点の理解(鑑賞)作者の表現の意図や、作品の構成に表れた世界観に主体的に思いをはせ、深く理解できる。作者の表現の意図や、作品の構成に表れた世界観について理解できる。展開される物語の世界について、想像力を働かせて捉えることができない。
【古】教材の文章に用いられている学術用語・語彙・文法について、説明・使用することができる。教材の文章中の学術用語・語彙を用いて、曰本の古代のことばの特徴についての文章作成ができる。教材の文章中の学術用語・古文の語彙・古文の文法について、説明できる。教材の文章中の学術用語・古文の語彙・古文の文法について、説明できない。
【古】平安時代の文学史的な知識や時代習俗について、説明できる。平安時代の文学史的な知識や時代習俗について、テキストの内容に即して、現代との違いを説明することができる。それぞれのテキストや歌人についての文学史的な知識や、背景となる時代習俗に関する質問に答えることができる。それぞれのテキストや歌人についての文学史的な知識や、背景となる時代習俗に関する質問に答えることができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 C-1 説明 閉じる
JABEE 1(2)(a) 説明 閉じる
ディプロマポリシー 3 説明 閉じる

教育方法等

概要:
【近】泉鏡花の作品は、近代以前は自明の存在であったものを、神秘や不思議な存在(幻想)として、その存在を逆説的に示すところにその特徴の一つがある。いくつかを講読し、前近代的から近代へ動く時代の断面を捉える試みとする。あわせて、子供に愛情を注ぐ女性の本源的なあり方に思いを寄せる鏡花の感受性に考察を加え、母性愛に寄せる男性のあり方を成長や自立と重ねて描く手法を理解する。さらに下層民や社会矛盾への視点、ピカレスク小説の魅力などを、地元を舞台とした作品の講読を通して理解する。
【古】曰本文学における、いわゆる〈古典〉的なテキストをいくつか講読することで、曰本文学・曰本文化の変遷を理解し、現代にあっては喪失されつつある、人間とことばとの関わりの深さについて、理解を深める。
授業の進め方・方法:
担当者の単独講義、講読演習
注意点:
【近】テキスト読解の障壁を取り除くために、資料として配付する語釈を丹念に参照し、未知の語彙については綿密に調べること。
【古】テキストのほとんどは古文だが、現代の理系学生の読みやすさを考えて、現代語訳をはじめ、さまざまな形での参考・補助資料を出すつもりである。恐れず、諦めず、古代のことばと、じつくり付き合ってほしい。適宜、授業中にミニ・テストを実施し、理解度を確認する予定である。
 ※授業計画は、学生の理解度に応じて変更する場合がある。
本科目では、60点以上の評価で単位を認定する。成績評価は、期末試験100点のうち【近代】50点・【古文】50点の割合を主にし、その他に評価割合に応じて評価する。評価が60点に満たない者は、願い出により追認試験を受けることができる。追認試験の結果、単位の修得が認められた者にあっては、その評価を60点とする。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンス
ガイダンス
授業内容の説明、受講上の注意。
2週 「黒百合」講読① 泉鏡花の人と作品に関する概説。鏡花が富山を舞台とした作品を書いていることを知る。「蛇食ひ」の講読を通して、鏡花が文学的出発時にどのような社会的な問題意識を持っていたか考察する。
3週 「黒百合」講読② 「黒百合」の舞台背景をおさえつつ、浪漫的なピカレスク小説の魅力に触れる。
4週 「黒百合」講読③ 同上
5週 「黒百合」講読④ 同上
6週 「黒百合」講読⑤ 同上
7週 「黒百合」講読⑥ 同上
8週 「黒百合」講読⑥ 同上
4thQ
9週 ガイダンス 「ことばの連関」というテーマについて、どのようなアプローチで考えるのかを説明。具体例として、現代の歌詞について考える。
10週 言語とは何か 言語とは何であるかについて、現代思想の評論や現代美術の作品などを参照しつつ、理解する。
11週 「霞たち木の芽もはるの」(『古今和歌集』春上・紀貫之)の歌① 『古今和歌集』および紀貫之について、文学史的な概説。当該歌の単語レベルの意味説明。雪と梅花の「見立て」の類型性と、歴史的な背景(中国の漢詩文の影響)について、考えを深める。
12週 「霞たち木の芽もはるの」(『古今和歌集』春上・紀貫之)の歌② 中国の漢詩文や『万葉集』の「見立て」とは異なる、当該歌の独自な表現性について、考えを深める。現代では喪われてしまつた、「掛詞」や「序詞」・「見立て」という修辞が、古代の和歌においては何のためにあるのか、考える。
13週 「花の色はうつりにけりな」(『古今和歌集』春下・小野小町)と「色見えで」(『古今和歌集』恋五・小野小町)の歌① 小野小町について、文学史的な概説。当該歌の解釈の違いについて、諸説を参照し、問題点を提示。当該歌の単語レベルの意味説明。
14週 「花の色はうつりにけりな」(『古今和歌集』春下・小野小町)と「色見えで」(『古今和歌集』恋五・小野小町)の歌②、まとめ 「花の色はうつりにけりな」について、「うつる(うつろふ)」という語を詠み込んださまざまな歌の例から、意味を確定すべく考える。「我が身世にふる」の「ふる」について、さまざまな歌の例から、最もふさわしい意味を考える。
15週 「花の色はうつりにけりな」(『古今和歌集』春下・小野小町)と「色見えで」(『古今和歌集』恋五・小野小町)の歌③、まとめ 恋歌を参照することで、春歌の当該歌が、「掛詞」によつて、桜花・雨・人事を有機的に関連づけられていることについて考える。
ミニ・テストの返却・講評・解説。期末試験の出題予定問題について、確認。
16週 期末試験 泉鏡花に関する知識、「黒百合」テキストの理解度、作品の読解上の問題点について
第9回~第15回までの授業内容について確認する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験レポート音読評価ミニ・テスト合計
総合評価割合7010515100
【近】基礎的能力20105035
【近】専門的能力1500015
【古】基礎的能力20001030
【古】専門的能力1500520