言語と文化

科目基礎情報

学校 富山高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 言語と文化
科目番号 0001 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 エコデザイン工学専攻 対象学年 専2
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 授業担当者作成の教材・資料
担当教員 足立 繭子

到達目標

1.現代評論の読解を通じて、言語の機能や性質について理解し、説明できる。
2.さまざまなテキストの読解を通じて、世の中には多元的な文化や価値観があることを認識し、同時に、自己の拠って立つ文化や価値観の何たるかを、特に言語に着目することによって深く認識し直すことができるようになる。
3.近代以降、現代に至る日本人が喪失しつつある、言語との密接な関係性について、自分なりの問題意識や考えを持てるようにする。
4.日本の古代のことばの分析を通じて、伝統と革新から成る文学表現の歴史を認識する。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
テキストの読解教材の文章中の学術用語や語彙を用いて、日本の古代のことばの特徴について、文章で自分の考えを説明できる。資料の学術用語・古文の語意や文法を理解した上で読解ができ、テキストの内容を説明できる。資料や古文のテキストに出現する語意や文法について、説明できない。
古典の文学史的な知識や古代の時代習俗についての理解テキストに関わる文学史的な知識や時代習俗に基づき、古代のことばを取り巻く状況と、現代との違いについて、文章で自分の考えを説明できる。それぞれのテキストの文学史的な知識や、背景となる時代習俗について、説明できる。テキストに関わる文学史的な知識や時代習俗について、説明できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる
学習・教育到達度目標 C-1 説明 閉じる
JABEE 1(2)(a) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
現代語の評論の読解を通じて、「言語とは何か」について理解した後、日本の古典文学の具体的なテキストをいくつか読解し、掛詞などの古代語に特徴的なことばの分析を通して、人間とことばとの関わりの深さについて、理解を深める。そして、こうした人間とことばの関わりの深さが、現代においては失われつつあることについて、自分なりの問題意識を持って考える。
授業の進め方・方法:
担当者による講義、演習
理解度を確認する確認テストを適宜実施することがある。
事前に授業内容を予習することや、事後に復習としての課題に取り組むことが求められる。
注意点:
テキストのいくつかは古文だが、現代の理系学生の読みやすさを考えて、現代語訳をはじめ、さまざまな形での参考・補助資料を提示するつもりである。恐れず、諦めず、古代のことばと、じっくり付き合って、具体的な事物と人間の心とが緊密に関わり合っている古代のことばが、慌ただしく消費され、すっかり人々の信頼を失いつつある現代のことばとは違っていることを実感してほしい。そこから、私たちが今後どのようにことばと付き合ってゆけばよいのかが見えてくるはずである。学修単位のため、60時間相当の授業外学習が必要である。(授業外学習・事前:授業内容を予習する。授業外学習・事後:週ごとの到達目標に記された授業内容に関する課題に取り組む。課題のいくつかについては、レポートとして評価する。)なお、学生の理解度により、適宜授業計画は変更されることがある。また、成績評価はレポート課題を主とする。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンス
/「言語とは何か」①鈴木孝夫「ものとことば」
授業の目的、進め方、評価方法などについて、理解し説明できる。/現代の評論の読解を通じて、「もの」と「ことば」の関係・「ことば」と世界認識の関係について理解し、言語の機能や性質について説明できる。
授業外学習・事後:多和田葉子「『ふと』と『思わず』」の文章の読解。
2週 「言語とは何か」②内田樹「他者の言葉」 他者の言語・他の言語を学ぶ意義について、説明できる。
授業外学習・事後:多和田葉子の「国境を越えることば」の読解。
3週 「言語とは何か」③内田樹「ことばとは何か」
言語の性質・機能について理解し、説明できる。
授業外学習・事後:永井均の「マンガの哲学」の読解。
4週 「言語とは何か」④まとめ 言語とはどういうものか、整理してまとめることができる。
授業外学習・事後:レポート課題。
5週 藤原道綱母『蜻蛉日記』中巻の天禄2(971)年2月および6月の条① 『蜻蛉日記』の文学史的な知識について、説明できる。当該の場面の前後の夫妻の状況について、当時の「通ひ婚」の習俗も併せて、説明できる。当該場面の古語の意味を理解し、場面内容を説明できる。
授業外学習・事後:筆者の歌「さむしろの~」の解釈(現代語訳)を調べる。
6週 藤原道綱母『蜻蛉日記』中巻の天禄2(971)年2月および6月の条② なぜ筆者の「さむしろの」歌の語の解釈が問題になるのか、説明できる。「さむしろ」の「筵」とはどういうものか、さまざまな和歌の用例から理解し、説明できる。
授業外学習・事後:「筵」の和歌の用例に頻出する動詞を調べる。
7週 藤原道綱母『蜻蛉日記』中巻の天禄2(971)年2月および6月の条③ 「筵」の属性について理解した上で、それを「敷く」行為や「返す」行為がどういう意味を持つのか、説明できる。活字本の底本の表記を確認した上で、通説とは異なる「おかむ」の解釈の可能性について、説明できる。
授業外学習・事後:「をく」という動詞の意味を調べておく。
8週 藤原道綱母『蜻蛉日記』中巻の天禄2(971)年2月および6月の条④ 筆者の「さむしろの」の歌が、どのような意味をもって詠まれていたのかを理解し、説明できる。
授業外学習・事後:レポート課題。
4thQ
9週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』① 天喜三(1055)年五月三日に開催された『六条斎院物語歌合』の文学史的な意義について理解し、説明できる。この『歌合』に残された和歌と、このときに新作された物語作品の関係について理解し、説明できる。
授業外学習・事後:五月五日の節句とあやめ草の関係について調べておく。
10週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』② 「あやめ草」をめぐる当時の習俗について理解し、説明できる。散佚した物語『あやめうらやむ中納言』の復元する手掛かりとなる、「あやめぐさなべてのつまとみるよりはよどのにのこるねをたづねばや」の和歌の現代語訳ができる。
授業外学習・事後:「あやめ」と「うらやむ」の語句を有する和歌の用例を読んでおく。
11週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』③ 散佚した物語の題名である、「あやめ(草)」を「うらやむ」ということはどういうことなのか・「あやめ」の属性の何を「うらやむ」のかについて、「あやめ」「うらやむ」の語句を有する他の和歌の用例から推測し、説明できる。
授業外学習・事後:題名の「うらやむ」と和歌の「~ばや」が、主人公とおぼしき「中納言」の心情を表現するものと考えると、「羨望」と「願望」という「中納言」の「望み」を表していることになるが、この二つの「望み」はどのように関係しているのか、考えておく。
12週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』④ 題名の「うらやむ」と和歌の「~ばや」から、主人公の「中納言」の心情を合理的に推測し、説明できる。「よどのにのこるね」と比較される、「なべてのつま」とはどういうことか、他の和歌の用例から考えて、説明できる。
授業外学習・事後:草の「根」を「刈る」ことが、「掛詞」として含意するもうひとつの意味とは何か、考えてくる。
13週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』⑤ 草の「根」を「刈る」ことと「仮り」との関係について、他の用例から考えて、合理的な説明ができる。「なべてのつま」がなぜ否定的な意味を帯びるのか、説明できる。
授業外学習・事後:「よどのにのこるね」の部分が、「掛詞」として含意するもうひとつの意味とは何か、考えてくる。
14週 『六条斎院物語歌合』所収の『あやめうらやむ中納言』⑥ 「よどのにのこるね」とはどういうことなのか、他の和歌の用例から考えて、説明できる。
授業外学習・事後:レポート課題。
15週 まとめ/レポート課題提出 言語の機能や性質、古代のことばと現代のことばのありようの違いなどについて、説明できる。
16週 レポート返却と講評 返却されたレポートとその講評から、現代のことばから失われつつあるものをどのようにしたら回復できるのかという問題について、自分なりの考えを持つことができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学国語国語論理的な文章(論説や評論)の構成や展開を的確にとらえ、要約できる。4後1,後2,後3,後4
論理的な文章(論説や評論)に表された考えに対して、その論拠の妥当性の判断を踏まえて自分の意見を述べることができる。4後4
文学的な文章(小説や随筆)に描かれた人物やものの見方を表現に即して読み取り、自分の意見を述べることができる。4後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
常用漢字の音訓を正しく使える。主な常用漢字が書ける。4後1,後2,後3,後4,後5,後9,後10
類義語・対義語を思考や表現に活用できる。4後1,後2,後3,後4,後5,後7,後9,後10,後12,後13
社会生活で使われている故事成語・慣用句の意味や内容を説明できる。4後1,後2,後3,後4,後5,後7,後9,後10,後11,後12,後13
専門の分野に関する用語を思考や表現に活用できる。4後1,後2,後3,後4,後5,後7,後9,後10,後11,後12,後13
実用的な文章(手紙・メール)を、相手や目的に応じた体裁や語句を用いて作成できる。4後4,後8,後15
報告・論文の目的に応じて、印刷物、インターネットから適切な情報を収集できる。4後4,後5,後7,後8,後10,後12,後13,後15
収集した情報を分析し、目的に応じて整理できる。4後4,後5,後6,後7,後8,後10,後11,後12,後13,後15
報告・論文を、整理した情報を基にして、主張が効果的に伝わるように論理の構成や展開を工夫し、作成することができる。4後4,後6,後7,後8,後11,後12,後13,後15
作成した報告・論文の内容および自分の思いや考えを、的確に口頭発表することができる。4後4,後6,後8,後11,後12,後13,後15
課題に応じ、根拠に基づいて議論できる。4後4,後6,後7,後8,後11,後12,後13,後14,後15,後16
相手の立場や考えを尊重しつつ、議論を通して集団としての思いや考えをまとめることができる。4後4,後8,後11,後14,後15,後16
新たな発想や他者の視点の理解に努め、自分の思いや考えを整理するための手法を実践できる。4後4,後8,後14,後15,後16
社会地理歴史的分野民族、宗教、生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会が共存することの重要性について考察できる。4後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後12,後13,後15,後16
公民的分野人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解し、これまでの哲学者や先人の考え方を手掛かりにして、自己の生き方および他者と共に生きていくことの重要性について考察できる。4後2,後3
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。4後4,後16

評価割合

確認テストレポート合計
総合評価割合3070100
基礎的能力3070100
専門的能力000
分野横断的能力000