概要:
開国以後、近代産業社会の構築が急務であった明治期にあって、どのようなことが要請され、どのような試みの中に、どのような矛盾や課題が起き、時代の進展の中にどのようなことが置き去りにされていったか、その諸相をとらえ理解する。実学の奨励、新しい芸術観の移入と取り組み、そのひずみと限界、産業社会の進展、新しい家族や社会意識の形成、忘れ去られていく旧時代の世界、などをテキスト講読を通して明らかにする。
授業の進め方・方法:
担当者の単独講義、演習
注意点:
明治期の文語テキストの講読は、初めての経験に近いと思われる。しっかりと音読し、そのリズムになれること。現代語とのギャップを埋めるために、語彙やタームを綿密に調べること。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
ガイダンス 福澤諭吉「学問のすすめ」Ⅰ |
講義の狙い、全体概要・計画について説明 「学問のすすめ」第1編講読
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2週 |
「学問のすすめ」Ⅱ |
実学の奨励が要請された背景に考察を加えながら、福澤の思想の先見性とその限界について考える。
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3週 |
坪内逍遙「小説神髄」Ⅰ |
「小説神髄」(小説の主眼)の講読
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4週 |
坪内逍遙「小説神髄」Ⅱ |
西欧からの芸術観の移入を背景に、坪内が唱えた新しい小説のあり方を捉える。旧来の読本や稗史との比較して展開される坪内の主張の自然主義への方向性を押さえつつ、文学表現の多様な可能性についても考察する。
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5週 |
幸田露伴「文明の庫」Ⅰ |
「文明の庫」講読演習
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6週 |
幸田露伴「文明の庫」Ⅱ |
演習問題の解答と解説による「文明の庫」講読
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7週 |
幸田露伴「文明の庫」Ⅲ |
マニュファクチャーから、分業と自動化(機械化)による産業技術の進展を背景に、ものづくりの進歩・文明史を説く露伴の思想を把握する。翻って、産業技術の進展が疑いなき善であった時代の思想から、現代の問題を透視してみる。
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8週 |
樋口一葉「十三夜」Ⅰ |
教科書に採録されていない、上/中も含めて、作品全体を講読する。
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4thQ |
9週 |
樋口一葉「十三夜」Ⅱ |
西欧の新思潮の移入に伴い、人権思想、民主主義的主張、新しい社会意識・家族観・結婚(恋愛)が知識人層に浸透し始めた。旧来の伝統的(封建的)な価値観との軋轢に苦しむ女性たちの姿を捉えた作品の先見性について考察を加える。
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10週 |
樋口一葉「十三夜」Ⅲ |
ジェンダーの概念について略説し、明治期の過渡期のテキストには、性差別意識などが無意識のうちにすり込まれていることを、今日的視点から捉え得ることについて考察する。
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11週 |
石川啄木「性急なる思想」Ⅰ |
「性急なる思想」を講読し、大逆事件に対する啄木の立ち位置に着目しながら、皮相な近代化に対する厳しい批判意識をとらえる。
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12週 |
石川啄木「性急なる思想」Ⅱ |
啄木の詠んだ和歌の読解を踏まえて、作者の伝記的事実と対照しながら、その思想と実人生の齟齬について考察する。
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13週 |
森鷗外「妄想」Ⅰ |
「妄想」を初期作品「舞姫」と対照しながら講読する。
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14週 |
森鷗外「妄想」Ⅱ |
ドイツ留学の意味づけが、「舞姫」から「妄想」いたる間にどのように深化したかを把握しながら、巨人鷗外が自身を時代にどう位置づけていたかを探る。
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15週 |
全体のまとめ |
近代化の歴史は産業技術の進展とともにあるという意味で、高専に学ぶ学生はその歴史やひずみについて自覚的であるべきこと。また産業技術のみならず、文化・社会に幅広く関心を持って、真の人間の幸福に資することが技術者の社会的責任であること、について考える。
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16週 |
期末試験 |
試験は実施しない
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 国語 | 国語 | 論理的な文章を読み、論理の構成や展開の把握にもとづいて論旨を客観的に理解し、要約し、意見を表すことができる。また、論理的な文章の代表的構成法を理解できる。 | 3 | |
代表的な文学作品を読み、人物・情景・心情の描写ならびに描写意図などを理解して味わうとともに、その効果について説明できる。 | 3 | |
文章を客観的に理解し、人間・社会・自然などについて考えを深め、広げることができる。 | 3 | |
文学作品について、鑑賞の方法を理解できる。また、代表的な文学作品について、日本文学史における位置を理解し、作品の意義について意見を述べることができる。 | 3 | |
鑑賞にもとづく批評的な文章の執筆や文学的な文章(詩歌、小説など)の創作をとおして、感受性を培うことができる。 | 3 | |
読書習慣の形成をとおして感受性を培い、新たな言葉やものの見方を習得して自らの表現の向上に生かすことができる。 | 3 | |
現代日本語の運用、語句の意味、常用漢字、熟語の構成、ことわざ、慣用句、同音同訓異義語、単位呼称、対義語と類義語等の基礎的知識についての理解を深め、その特徴を把握できる。また、それらの知識を適切に活用して表現できる。 | 3 | |
代表的な古文・漢文を読み、言葉や表現方法の特徴をふまえて人物・情景などを理解し、人間・社会・自然などについて考えを深めたり広げたりすることができる。 | 3 | |
古文・漢文について、音読・朗読もしくは暗唱することにより、特有のリズムや韻などを味わうことができる。 | 3 | |
代表的な古文・漢文について、日本文学史および中国文学史における位置を理解し、作品の意義について意見を述べることができる。また、それらに親しもうとすることができる。 | 3 | |
教材として取り上げた作品について、用いられている言葉の現代の言葉とのつながりや、時代背景などに関する古文・漢文の基礎的知識を習得できる。 | 3 | |
情報の収集や発想・選択・構成の方法を理解し、論理構成や口頭によるものを含む表現方法を工夫して、科学技術等に関する自らの意見や考えを効果的に伝えることができる。また、信頼性を重視して情報を分析し、図表等を適切に活用・加工してコミュニケーションに生かすことができる。 | 3 | |
他者の口頭によるものを含む表現について、客観的に評価するとともに建設的に助言し、多角的な理解力、柔軟な発想・思考力の涵養に努めるとともに、自己の表現の向上に資することができる。 | 3 | |
相手の意見を理解して要約し、他者の視点を尊重しつつ、建設的かつ論理的に自らの考えを構築し、合意形成にむけて口頭によるコミュニケーションをとることができる。また、自らのコミュニケーションスキルを改善する方法を習得できる。 | 3 | |
社会で使用される言葉を始め広く日本語を習得し、その意味や用法を理解できる。また、それらを適切に用い、社会的コミュニケーションとして実践できる。 | 3 | |