概要:
我々が社会生活を送る上で従うべきルールである法がどのような内容を持っているか,また法が設計している各種の社会制度がどのような仕組になっているかを知ることは,法学を専門としない人にとっても不可欠である。この授業ではまず,公民科(現代社会)で学んだ法やルールに関する知識をさらに充実させる。これにより,社会と自分の様々な関わりに気づき,社会の中で生きる人間としての自分を理解し,社会や環境に配慮できるようになる。次に,既存の法(ルール)や制度についての知識を詰め込むのではなく,それらが「何のためにあるのか」,あるいは「なぜそうなっているのか」を考える。その際には,法やルールの背後にある,法やルールが守ろうとする価値を理解する必要がある。国際社会には多様な価値観を持つ人々が生活しており,そんな人々と共生するには,法(ルール)の視点から社会を考え,合意によって自律的にルールを形成するスキルが求められるからである。
授業の進め方・方法:
【授業の進め方など】テキストの問題の検討をベースにして進めるが,学生どうしでペアやグループとなって検討してもらう場をできるだけ多く設け,教員からの一方的な講義だけにならないようにする。「法」というと,白か黒か,あるいは唯一の正解が存在して,それを詰め込むことが求められるようにイメージされるかもしれないが,この授業ではむしろ,結論に至るまでの筋道,理由づけを自分の頭で考え,発表するとともに,他の人の考えを理解することを大切にする。
【事前事後学習など】事前に授業で取り上げる問題を提示するので,各自,ペアやグループでの活動を十分に成り立たせることができる程度までに準備をしておくこと。
【関連科目】現代社会
注意点:
「現代社会」の授業で学んだ内容を復習しておくこと。法律の条文が必要な場合は,抜粋して配布するが,ポケット六法(有斐閣)またはデイリー六法〔三省堂〕の平成30年版を持っていると便利である。また,インターネット上の無料で使える法令データベースを初回に紹介する。
【評価方法・評価基準】成績の評価基準として60点以上を合格とする。
中間試験(50%),期末試験(50%)を実施する。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
イントロダクション |
授業の進め方,内容等についての詳細を把握する。
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2週 |
法知識・法意識 |
自分の法知識・法意識がどのようなものかを知る。
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3週 |
紛争とその解決(テキスト:問題1 ケーキの分け方) |
紛争解決の方法,紛争解決の基準の利害得失を理解し,紛争の態様に応じた選択ができる。
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4週 |
合意形成(テキスト:問題2 マンションのエレベータの修理) |
利害を異にする多数人の間で,みんなが納得のゆく合意を形成するために考慮すべきことが理解できる。
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5週 |
社会常識と法(テキスト:問題3 爆発装置付き金庫の偽物) |
社会常識にてらして「感覚的に」正しいと思われる結論を,(賛成するかどうかは別として)みんなが納得のゆく理由で裏付けることができる。
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6週 |
人の人情と法(テキスト:問題4 イタリアからの子供の連れ去り) |
心情的にあるいは「感情的に」正しいと思われる結論を,(賛成するかどうかは別として)みんなが納得のゆく理由で裏付けることができる。
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7週 |
ルール作り(テキスト:問題5 好意同乗者に対する損害賠償責任についての法律を作る) |
社会的なルールを作る上で考慮すべきことが理解できる。
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8週 |
法による利害調整(テキスト:問題6 シャガールの絵の行方) |
関係者の利害を公平に考慮・調整するための法(ルール)のあり方を理解する。
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2ndQ |
9週 |
契約(テキスト:問題7 契約書を作ってみる) |
現代社会を成り立たせる基本的な制度のひとつである「契約」がもつ社会的役割を理解するとともに,契約を結ぶ際の留意点を知る。
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10週 |
判例(テキスト:問題8 判例を信じていたのに・・・) |
法律と並ぶ重要性を持つ判例の社会的役割を理解するとともに,ルールを変更する場合の留意点を知る。
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11週 |
法の解釈(テキスト:問題9 大家の言い分) |
法(ルール)の解釈という作業の必要性と,その際の留意点を知る。
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12週 |
民事法と刑事法(テキスト:問題10 懲らしめとしての損害賠償) |
民事法と刑事法の違いや関係を理解する。
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13週 |
国境を越える法(テキスト:問題11 日米訴訟合戦) |
国際的な取引をめぐる紛争において法(ルール)がどのように機能しているかを理解する。
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14週 |
法律家(テキスト:問題12 弁護士の数を三倍にする) |
法(ルール)のユーザーの視点から,法の専門家である弁護士のあるべき姿を理解する。
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15週 |
前期復習 |
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 社会 | 地歴 | 産業活動(農牧業、水産業、鉱工業、商業・サービス業等)などの人間活動の歴史的発展過程または現在の地域的特性、産業などの発展が社会に及ぼした影響について理解できる。 | 3 | |
人間活動と自然環境との関わりや、産業の発展が自然環境に及ぼした影響について、地理的または歴史的観観点から理解できる。 | 3 | |
社会や自然環境に調和した産業発展に向けた現在までの取り組みについて理解できる。 | 3 | |
日本を含む世界の様々な生活文化、民族・宗教などの文化的諸事象について、歴史的または地理的観点から理解できる。 | 3 | |
国家間や国家内で見られる、いわゆる民族問題など、文化的相違に起因する諸問題について、地理的または歴史的観点から理解できる。 | 3 | |
文化の多様性を認識し、互いの文化を尊重することの大切さを理解できる。 | 3 | |
公民 | 哲学者の思想に触れ、人間とはどのような存在と考えられてきたかについて理解できる。 | 4 | |
諸思想や諸宗教において、自分が人としていかに生きるべきと考えられてきたかについて理解できる。 | 4 | |
諸思想や諸宗教において、好ましい社会と人間のかかわり方についてどのように考えられてきたかを理解できる。 | 4 | |
民主政治の基本的原理、日本国憲法の成り立ちやその特性について理解できる。 | 4 | |
資本主義経済の特質や財政・金融などの機能、経済面での政府の役割について理解できる。 | 4 | |
現代社会の政治的・経済的諸課題、および公正な社会の実現に向けた現在までの取り組みについて理解できる。 | 4 | |
地歴・公民 | 現代科学の考え方や科学技術の特質、科学技術が社会や自然環境に与える影響について理解できる。 | 4 | |
社会や自然環境に調和し、人類にとって必要な科学技術のあり方についての様々な考え方について理解できる。 | 4 | |
今日の国際的な政治・経済の仕組みや、国家間の結びつきの現状とそのさまざまな背景について理解できる。 | 4 | |
環境問題、資源・エネルギー問題、南北問題、人口・食糧問題といった地球的諸課題とその背景について理解できる。 | 4 | |
国際平和・国際協力の推進、地球的諸課題の解決に向けた現在までの取り組みついて理解できる。 | 4 | |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 相手の意見を聞き、自分の意見を伝えることで、円滑なコミュニケーションを図ることができる。 | 3 | |
相手を理解した上で、説明の方法を工夫しながら、自分の意見や考えをわかりやすく伝え、十分な理解を得ている。 | 3 | |
集団において、集団の意見を聞き、自分の意見も述べ、目的のために合意形成ができる。 | 3 | |
目的達成のために、考えられる提案の中からベターなものを選び合意形成の上で実現していくことができ、さらに、合意形成のための支援ができる。 | 3 | |
ICTやICTツール、文書等を基礎的な情報収集や情報発信に活用できる。 | 3 | |
ICTやICTツール、文書等を自らの専門分野において情報収集や情報発信に活用できる。 | 3 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、そこから主要な原因を見出そうと努力し、解決行動の提案をしようとしている。 | 3 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、発見した課題について主要な原因を見出し、論理的に解決策を立案し、具体的な実行策を絞り込むことができる。 | 3 | |
事象の本質を要約・整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。 | 3 | |
複雑な事象の本質を整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。結論の推定をするために、必要な条件を加え、要約・整理した内容から多様な観点を示し、自分の意見や手順を論理的に展開できる。 | 3 | |
態度・志向性(人間力) | 態度・志向性 | 態度・志向性 | 身内の中で、周囲の状況を改善すべく、自身の能力を発揮できる。
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集団の中で、自身の能力を発揮して、組織の勢いを向上できる。 | 3 | |
日常生活の時間管理、健康管理、金銭管理などができる。常に良い状態を維持するための努力を怠らない。 | 3 | |
ストレスやプレッシャーに対し、自分自身をよく知り、解決を試みる行動をとることができる。日常生活の管理ができるとともに、目標達成のために対処することができる。 | 3 | |
学生であっても社会全体を構成している一員としての意識を持って、行動することができる。 | 3 | |
市民として社会の一員であることを理解し、社会に大きなマイナス影響を及ぼす行為を戒める。人間性・教養、モラルなど、社会的・地球的観点から物事を考えることができる。 | 3 | |
チームワークの必要性・ルール・マナーを理解し、自分の感情の抑制、コントロールをし、他者の意見を尊重し、適切なコミュニケーションを持つとともに、当事者意識を持ち協調して共同作業・研究をすすめることができる。 | 3 | |
組織やチームの目標や役割を理解し、他者の意見を尊重しながら、適切なコミュニケーションを持つとともに、成果をあげるために役割を超えた行動をとるなど、柔軟性を持った行動をとることができる。 | 3 | |
先にたって行動の模範を示すことができる。口頭などで説明し、他者に対し適切な協調行動を促し、共同作業・研究をすすめことができる。 | 3 | |
目指すべき方向性を示し、先に立って行動の模範を示すことで他者に適切な協調行動を促し、共同作業・研究において、系統的に成果を生み出すことができる。リーダーシップを発揮するために、常に情報収集や相談を怠らず自身の判断力をも磨くことができる。 | 3 | |
法令を理解し遵守する。基本的人権について理解し、他者のおかれている状況を理解することができる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識している。 | 3 | |
法令を理解し遵守する。研究などで使用する、他者のおかれている状況を理解できる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識し、身近で起こる関連した情報や見解の収集に努めるなど、技術の成果が社会に受け入れられるよう行動できる。 | 3 | |
未来の多くの可能性から技術の発展と持続的社会の在り方を理解し、自らのキャリアを考えることができる。 | 3 | |
技術の発展と持続的社会の在り方に関する知識を有し、未来社会を考察することができるとともに、技術の創造や自らのキャリアをデザインすることが考慮できる。 | 3 | |
総合的な学習経験と創造的思考力 | 総合的な学習経験と創造的思考力 | 総合的な学習経験と創造的思考力 | 工学的な課題を論理的・合理的な方法で明確化できる。 | 3 | |
公衆の健康、安全、文化、社会、環境への影響などの多様な観点から課題解決のために配慮すべきことを認識している。 | 3 | |
クライアントの要求を解決するための設計解を作り出すプロセス理解し、設計解を創案できる。さらに、創案した設計解が要求を解決するものであるかを評価しなければならないことを理解する。 | 3 | |
クライアントの要求を解決するための設計解を作り出すプロセスを理解し、設計解を創案できる。さらに、創案した設計解が要求を解決するものであるかを評価しデザインすることができる。 | 3 | |