公共社会Ⅰ

科目基礎情報

学校 福井工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 公共社会Ⅰ
科目番号 0008 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 『公共』(東京法令出版)、『倫理』(東京書籍)
担当教員 佐藤 勇一

到達目標

(1)人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解するとともに、成年年齢や選挙権について考察し、自らが公共的な空間に属する主体であることを理解する。
(2)歴史、文化、宗教的背景を踏まえて、先人の思想を正しく理解できること。また、先人の思想を手掛かりにして、自己の生き方や他者と共に生きていくことの重要性、公共的な空間における人間としての在り方生き方について考えることができる。
(3)「幸福」「自由」「正義」「公正」などの公共的な観点から多様な思想について学び、現代社会の特質やその制度、倫理的課題について様々な角度から理解できること。
(4)民族、宗教(キリスト教、イスラーム、仏教)や生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会を尊重することの重要性について考察できる。
(5)民主主義社会における市民の育成に資する哲学対話に参加し、問いを自分の世界に引き付けて主体的に探究し、自分や他人の論証を理解することができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1青年期の意義と自己形成の課題について、主体的に公共空間に参画することの重要性について十分に理解している青年期の意義と自己形成の課題について、主体的に公共空間に参画することの重要性について概ね理解している。青年期の意義と自己形成の課題について、主体的に公共空間に参画することの重要性についてほとんど理解できない。
評価項目2歴史、文化、宗教的背景を踏まえて、先人の思想を正しく理解し先人の思想を手掛かりにして、自己の生き方や他者と共に生きていくことの重要性、公共的な空間における人間としての在り方生き方について考えることができる。歴史、文化、宗教的背景を踏まえて、先人の思想を正しく理解し先人の思想を手掛かりにして、自己の生き方や他者と共に生きていくことの重要性、公共的な空間における人間としての在り方生き方について考えることが概ねできる。歴史、文化、宗教的背景を踏まえて、先人の思想を正しく理解し先人の思想を手掛かりにして、自己の生き方や他者と共に生きていくことの重要性、公共的な空間における人間としての在り方生き方について考えることがめったにできない。
評価項目3「幸福」「自由」「正義」「公正」などの公共的な観点から多様な思想について学び、現代社会の特質やその制度、倫理的課題について様々な角度から理解できる。「幸福」「自由」「正義」「公正」などの公共的な観点から多様な思想について学び、現代社会の特質やその制度、倫理的課題について様々な角度から概ね理解できる。「幸福」「自由」「正義」「公正」などの公共的な観点から多様な思想について学び、現代社会の特質やその制度、倫理的課題について様々な角度からめったに理解できない。
評価項目4民族、宗教(キリスト教、イスラーム、仏教)や生活文化の多様性を理解できる。民族、宗教(キリスト教、イスラーム、仏教)や生活文化の多様性を概ね理解できる。民族、宗教(キリスト教、イスラーム、仏教)や生活文化の多様性をめったに理解できない。
評価項目5民主主義社会における市民の育成に資する哲学対話に参加し、問いを自分の世界に引き付けて主体的に探究し、自分や他人の論証を理解することが十分にできる。 民主主義社会における市民の育成に資する哲学対話に参加し、問いを自分の世界に引き付けて主体的に探究し、自分や他人の論証を理解することが概ねできる。 民主主義社会における市民の育成に資する哲学対話に参加し、問いを自分の世界に引き付けて主体的に探究し、自分や他人の論証を理解することがめったにできない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
国際人として、専門人として必要となる基礎的な知識の獲得を目指し、様々な文化や社会の背景(エートス:倫理)となっている哲学や宗教、思想を中心に学習する。また、そうした哲学思想を「平和」「幸福」「自由」「正義」「公正」といった公共的観点からとらえることによって、現代社会の特質を理解するとともに、人権や生命の尊重など、現代の公共的な空間における人間の在り方について考察する。

次のことができるようになるよう、真剣に受講することを望む。
・思想家たちの用いた諸概念の連関について説明できる。
・思想家たちが、どのような時代背景や文化的背景のもとで、どのような倫理思想を構築したかを理解することにより、さまざまな地域の歴史や文化を多面的に認識できる。
・過去から現代までのさまざまな思想が、現代社会の特質やその制度、現代の倫理的課題、さらに、技術をとりまく問題を捉える際に多くの示唆を与えてくれることを理解し、「幸福」「自由」「正義」「公正」など、公共的な空間におけるさまざまなテーマについて考察できる。
・市民の育成に資する哲学対話に参加し、問いを自分の世界に引き付けて探究し、多様な視点・立場から考察することを経験する。
授業の進め方・方法:
『公共』と『倫理』の教科書を用いる。先人の思想を手掛かりにして、公共的な空間におけるさまざまなテーマについて課題を通じて考察することができる。板書やプリントを用いた講義を中心に行うとともに、p4cを行う。学生の理解度をはかり、思索の深化を促すために、授業中に複数回の小テストや自習プリント、感想文課題、p4cワークシートを行う。ノートの提出も義務づける。
注意点:
2回の定期試験の平均(30%)に、授業中に行う複数回行う小テストや要約レポートおよびサイレントダイアローグ用紙(25%)、哲学対話への参加(p4cワークシート 5%)、提出物(感想文や自習プリント)や態度などの平常点(30%)、ノート(10%)により評価する。評価したうえで必要な場合は、追加のテストや課題を課す。100点満点で60点以上を合格とする。授業中または課題として出す提出物の提出が滞らないようにすること。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 シラバス ガイダンス 平和、人間の尊厳、人権、生命、平等について
序 第1章 I人間
シラバスの説明とガイダンス、収容所における極限状況から人間や人間の尊厳について考察する。人間の尊厳や人権、生命について考察する課題を提出する。
2週 公共空間の変容、対話的理性、生命倫理、新しい人権(自己決定権)について
I人間
人間の尊厳、生命倫理、人種・民族・難民問題について、公共性、社会の多様性、公平性と関連して理解する。人間の定義とその社会的背景から現代社会の特質について理解する。
3週 自由、人権の歴史、法の支配と人権保障、多様化する社会の人権について
I人間
人間の尊厳、生命倫理、人権、法の支配、ジェンダーについて理解する。サルトルにおける人間の定義批判から自由について考察する課題を提出する。
4週 自由(幸福と自律)、新しい人権(プライバシーの権利)について
I人間 
フーコーにおける人間の定義批判から現代社会の特質や、プライバシーや忘れられる権利などの新しい人権について理解する。自由について帰結主義や動機主義を踏まえて考察する課題を提出する。
5週 公共空間における青年期、成年年齢、選挙権について
Ⅱ青年期
青年期の特徴、自己実現、自己理解について理解するとともに、成年年齢や選挙権について考察する課題を提出する。
6週 公共空間における人間としての在り方、選挙権、情報倫理について
Ⅱ青年期 Ⅲ自己 
成熟した人間像、欲求の階層理論、情報倫理、メディアリテラシーについて理解するとともに、簡単な模擬選挙を通じて選挙のしくみや意義を理解し、選挙結果について考察する課題を提出する。
7週 自己形成の課題、キャリア発達について
Ⅳ欲求 Ⅴ無意識
欲求や無意識の理論を通じて、キャリア発達や自己形成の課題を理解する。
8週 自己形成の課題、公正、パーソナリティについて
Ⅵ性格 第2章 Ⅰ哲学の誕生
性格理論について理解する 課題を通じて、個性や自己の生き方や他者と共に生きていくことの重要性について考察する。
2ndQ
9週 持続可能な社会づくりの主体となる技術者、公共空間における技術者
Ⅱソクラテス以前 
自然哲学者、SDGsについて理解する。自然哲学者の自然観と近代の自然科学の自然観との違いから現代社会の特質を理解する。
10週 持続可能性、自然観、環境倫理について
Ⅱソクラテス以前 Ⅲソフィスト
自然哲学者について学び、自然環境と技術、環境倫理、持続可能な社会について課題を行う。
11週 公正、正義、民主政治について
Ⅲソフィスト
ソフィストの思想、ポリスについて理解する。民主主義社会における政治参加と公正な世論の形成の意義について理解する。
12週 対話、善、幸福、対話的学習について
Ⅳソクラテス(SD)
無知の知、問答法について理解する。サイレントダイアローグ(SD)を通じて技術者について、善や正義について考察し、課題を提出する。
13週 公共空間における人間としての生き方、幸福、善、法について
Ⅳソクラテス
ソクラテスの思想を通じて、幸福、善、法について考察する。サイレントダイアローグ(SD)を通じて技術者について、善や正義について考察し、課題を提出する。
14週 哲学対話(p4c)、哲学プラクティス、主体としてのわたしたち
講義の内容や哲学的な問題に関し、対話を通じて探究し、主体的・対話的で深い学びを体験する。
15週 善、正義、国家、国家について
Ⅴプラトン 
プラトンにおけるイデア、徳、国家、魂などについて学ぶとともに、その国家観と現代までに現れたいくつかの国家観との違いについて理解する。
16週 試験返却 試験は、試験返却期間に返却する
後期
3rdQ
1週 資本主義経済の変容、経済と政府について
Ⅴプラトン 
プラトンにおける国家観と比較しつつ、アダム・スミス以来の資本主義経済思想について経済と政府の関係から理解する。
2週 公共空間、正義、公正、幸福について
Ⅴプラトン Ⅵアリストテレス
アリストテレスにおける倫理、正義などについて現代における正義や公正の問題とともに理解する。技術者における幸福や安全について考察する課題を提出する。
3週 よりよい社会の形成、社会保障、平等、配分について
Ⅵアリストテレス
アリストテレスにおける倫理、正義などについて、ロールズなど現代における正義や公正、社会保障をめぐる思想とともに理解する。
4週 公共空間、世界市民主義、自然法と実定法、社会契約、国際社会の仕組みについて
Ⅶヘレニズム 
ヘレニズムにおける倫理、正義 、世界市民主義について学び、現代にも通じる多民族が共存する多文化、多言語のコスモポリスについて理解する。自然法思想を通じて、ヘレニズム時代と現在の国際社会の仕組みに通じる思想について理解する。
5週 文化の多様性、日本の文化について
第3章I中国の思想
諸子百家について学び、多様な考え方や、日本文化への影響について理解する。
6週 公共空間における人間としての在り方、道徳と法、自然と人為について
Ⅱ儒家
孔子、孟子の思想について学び、法と道徳の関係について理解する。
7週 幸福、公共の福祉、よりよい社会の形成について
 Ⅱ儒家
孟子、荀子の思想について理解し、公共の福祉や、技術者としての幸福について考察する課題を提出する。儒家の発展を理解し、世界を探究することの重要さを理解する。
8週 探求と社会参画、自然、地球規模の諸課題、持続可能な社会づくりについて
Ⅱ儒家 Ⅲ道家
儒家の発展を学び、社会参画することの重要さを理解する。老子、荘子の思想について学びつつ、軍縮の歴史や平和について理解する。
4thQ
9週 社会の多様性、自然、平和、宗教と文化について
Ⅲ道家 第4章Ⅰユダヤ教 
老子、荘子の思想について学びつつ、軍縮の歴史や平和について理解する。ユダヤ教について理解する
10週 宗教と文化、正義について
Ⅰユダヤ教 Ⅱキリスト教
ユダヤ教の歴史を通じて、異文化理解の課題について理解する。イエスの思想 について理解する。
11週 宗教と文化、愛について
Ⅱキリスト教
イエスの思想、原始キリスト教について理解する
12週 宗教と文化、喜捨、共生、市民と国家について
Ⅱキリスト教 Ⅲイスラーム
教父哲学、スコラ哲学、イスラームの教えについて理解する
13週 宗教と文化、共同体、エスノセントリズムについて
Ⅲイスラーム
イスラームの教え、オリエンタリズムについて理解し、現代社会の諸問題について考察する。
14週 宗教と文化、地球規模での諸課題について
Ⅳ仏教
自由思想家、ヒンドゥー教、ブッダの思想について理解し、多様な文化の背景を理解する。
15週 宗教と文化、地球規模での諸課題について
Ⅳ仏教
ブッダの思想、仏教の利他の思想の発展について理解し、貧困などの現代の地球規模の課題について考察する。
16週 試験返却 試験は、試験返却期間に返却する

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会地理歴史的分野民族、宗教、生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会が共存することの重要性について考察できる。3前1,前2,前5,前7,前8,前9,前12,前13,前14,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
公民的分野人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解し、これまでの哲学者や先人の考え方を手掛かりにして、自己の生き方および他者と共に生きていくことの重要性について考察できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を認識している。3前1,前2,前7,前10,前11,前14,後1,後14,後15
グローバリゼーション・異文化多文化理解グローバリゼーション・異文化多文化理解それぞれの国の文化や歴史に敬意を払い、その違いを受け入れる寛容さが必要であることを認識している。3前1,前2,前3,前4,前7,前8,前9,前12,前13,前14,前15,後4,後5,後6,後7,後8,後11,後12,後13,後14,後15
様々な国の生活習慣や宗教的信条、価値観などの基本的な事項について説明できる。3前5,前7,前15,後1,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後15
異文化の事象を自分たちの文化と関連付けて解釈できる。3前7,前8,前9,前11,前14,前15,後2,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
それぞれの国や地域の経済的・社会的な発展に対して科学技術が果たすべき役割や技術者の責任ある行動について説明できる。3前1,前2,前6,前10,前12,前14,後15

評価割合

試験小テスト、要約レポート、サイレントダイアローグ用紙哲学対話(p4cワークシート)提出物(感想文、自習プリント)その他平常点ノート合計
総合評価割合302553010100
基礎的能力302553010100
専門的能力000000
分野横断的能力000000