A. 哲学的文献にたいする読解能力を養うとともに、発表分担、係分担、討論などの活動に参加し、講読記録簿やコミュニケーションペーパーを通じて、自分の読解過程や授業参加過程を自覚することができる。
B. 対話によって問いを自分の世界に引き付けて考察し、自分や他人の論証を理解することができる。
C. 哲学や哲学史に関する知識を得るとともに、現代的な哲学的諸問題について多様な観点から考察し、コミュニケーションペーパーを通じて文章にまとめることができる。
概要:
20世紀の哲学者、社会心理学者エーリッヒ・フロムの『愛するということ』(原題は『愛の技術』)を講読し、この著作と関連する哲学的テーマに関する哲学対話(p4c)や講義を行う。
A.受講者は、『愛するということ』をフロムの論の展開とともに理解し、愛や現代社会、技術に関する自分の考えを深めたり、自分の読解過程や授業参加過程を自覚したりすることができる。
B. 哲学対話を通じて、自分や世界に問いをひきつけて講読や講義で考察した内容や哲学的な問題について考察したり、自分や他人の論証を理解したりすることができる。
C.講義では、フロムをはじめとした哲学史に関する知識を伝授するとともに、できるだけ多角的な視点から講義することによって、受講者に現代的な諸問題について考えるヒントを与えることを目指す。
授業の進め方・方法:
3つの授業形態がある。
A.講読形式:
受講者は、発表分担、係分担、討論などを通じて授業に参加し、各自の読解過程をふりかえる「レポート」を作成する。係活動には1「発表係」、2「書記・司会係」、3「質問係」、4「前回の講読まとめ報告係」、5「コミュニケーションペーパーのまとめ係」がある。係活動は毎回違うグループがそれぞれの係を分担する。全回の講読を通じて、すべてのグループがすべての係を担当する。毎回の講読の最後には、「講読記録」と「コミュニケーションペーパー」を記入し、自分の学習過程を自覚する。
B.哲学対話形式:
哲学対話はコミュニティーボールを用いたp4c(子どもの哲学)スタイルで行う。受講者は、互いへの経緯を尊重する限りで自由に発言し、それを全員に聞いてもらえるという知的な安心感のもと、問いの作成や問いの探求を行う。対話後には、対話をふりかえる「ワークシート」を作成する。
C.講義形式:
フロムやフロムが参照する哲学者の思想を、できるだけ多角的な視点から紹介する。講義の理解や各自の思索の深化を促すために、受講者には、毎講義ごとにさまざまな事柄について考察する「コミュニケーションペーパー」を作成してもらう。講義形式で使用するレジュメは授業ごとに適宜配布する。
注意点:
・テストは行わず、発表やそのレジュメ(20%)、発表以外の係活動(20%)、対話への参加(p4cワークシート20%)などの活動、および、レポート(15%)やそれ以外の提出物(コミュニケーションペーパー、講読記録など 25%)を総合して成績を判断する。授業への参加度や各自の読解過程や哲学的な探求の過程への振り返りを重視する。
100点満点で60点以上を合格とする。
A. 講読形式
1)遅刻・欠席をしない:講読や哲学対話は、積極的な参加が絶対条件である。欠席・遅刻や積極性の欠如により係活動や授業における活動を行わない場合、単位の取得を困難にする。
2)レジュメ提出の締め切り厳守:講読形式においては、「発表係」、「前回の講読まとめ報告係」、「コミュニケーションペーパーのまとめ係」は事前にレジュメを作成・提出する必要がある。これが滞ってしまうと、グループメンバーの単位取得を困難にするだけではなく、その回の講読全体にも支障をきたす。次の回の講読の際に自分がどの係になっているかを意識しておく必要がある。
3)予習・復習をすること:各回の講読で担当するさまざまな係活動は、どれも予習や復習が必要なものである。毎回
予習しておかなければ、講読への参加が困難である。
4)レポート提出:自分の読解を振り返るレポートを課す。必ず提出すること。レポートでは(コミュニケーションペーパーも同様であるが)、自分の意見と他人の意見を明確に区別し、引用や参考文献については明記するなどの最低限
の形式を厳守する必要がある。
B. 哲学対話形式
遅刻・欠席をしない:問いの提出や対話への積極的な参加が必要である。授業への参加度は、各自対話終了後に振り返る。
C. 講義形式
講義形式の場合にも欠席や遅刻をせずに参加するだけではなく、コミュニケーションペーパーに何を書くか、簡単にでも頭に浮かべて講義に臨む積極的な姿勢が必要である。コミュニケーションペーパーの内容があまりに不足している場合は評価しないので注意すること。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
授業概要シラバスの説明とガイダンス フロムとその作品 (コミュニケーションペーパー作成。) |
シラバスの内容、係活動の理解。 フロムの生涯について概観する。
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2週 |
講読形式:第1章~第2章第1節(10-28頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛は技術か」「愛、それは人間の実存の問題にたいする答え」を読解し、発表、議論を行う。
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3週 |
講読形式:第2章第1節(29-46頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛、それは人間の実存の問題にたいする答え」を読解し、発表、議論を行う。
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4週 |
講読形式:第2章第1節(46-63頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛、それは人間の実存の問題にたいする答え」を読解し、発表、議論を行う。
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5週 |
講読形式:第2章第1節~第2章第2節(64-80頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「親子の愛」「愛の対象」(「友愛」)を読解し、発表、議論を行う。
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6週 |
講読形式:第2章第3節(80-97頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛の対象」(「母性愛」「恋愛」「自己愛」)を読解し、発表、議論を行う。
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7週 |
講読形式:第2章第3節(97-113頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛の対象」(「自己愛」「神への愛」)を読解し、発表、議論を行う。
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8週 |
講義形式:哲学史講義 (コミュニケーションペーパー作成) |
フロムやフロムが参照する哲学者の思想について現代の問題の特質とともに理解できる。
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4thQ |
9週 |
講読形式:第2章第3節(113-132頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛の対象」(「神への愛」)「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」を読解し、発表、議論を行う。
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10週 |
講読形式:第2章第3節~第3章(132-149頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」を読解し、発表、議論を行う。
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11週 |
講読形式:第3章~第4章(149-165頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」「愛の修練」を読解し、発表、議論を行う。
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12週 |
講読形式:第4章(165-181頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛の修練」を読解し、発表、議論を行う。
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13週 |
講読形式:第4章(182-198頁) (係活動、講読記録 コミュニケーションペーパー) |
「愛の修練」を読解し、発表、議論を行う。
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14週 |
哲学対話形式:p4c (振り返りワークシート作成) |
講読や講義の内容や哲学的な問題に関し、対話を通じて探究することができる。
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15週 |
哲学対話形式:p4c (振り返りワークシート作成) |
講読や講義の内容や哲学的な問題に関し、対話を通じて探究することができる。
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16週 |
評価物返却 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 社会 | 地歴 | 文化の多様性を認識し、互いの文化を尊重することの大切さを理解できる。 | 4 | 後9,後10,後13,後14,後15 |
公民 | 哲学者の思想に触れ、人間とはどのような存在と考えられてきたかについて理解できる。 | 4 | 後1,後3,後10,後11,後12,後13,後14,後15 |
諸思想や諸宗教において、自分が人としていかに生きるべきと考えられてきたかについて理解できる。 | 4 | 後5,後11,後12,後15 |
諸思想や諸宗教において、好ましい社会と人間のかかわり方についてどのように考えられてきたかを理解できる。 | 4 | 後4,後6,後9,後11,後12,後13,後14 |
地歴・公民 | 現代科学の考え方や科学技術の特質、科学技術が社会や自然環境に与える影響について理解できる。 | 4 | 後7,後8,後11,後12,後13,後14 |
社会や自然環境に調和し、人類にとって必要な科学技術のあり方についての様々な考え方について理解できる。 | 4 | 後7,後11,後12 |
国際平和・国際協力の推進、地球的諸課題の解決に向けた現在までの取り組みついて理解できる。 | 4 | 後1,後2,後9,後13,後14,後15 |
現代社会の考察 | 現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。 | 3 | 後1,後4,後8,後9,後10,後11,後14,後15 |