到達目標
固体中の原子に関する基礎的な概念を理解し,説明できること.固体中の電子に関する基礎的な概念を理解し,説明できること.固体の諸物性に関する基礎的な概念を理解し,説明できること.これらの内容を満足することで,学習・教育目標の(C-1)の達成とする.
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
固体中の原子に関する評価項目 | 固体中の原子に関する基本的な内容を説明することができる. | 固体中の原子に関する基本的な内容を説明することがある程度できる. | 固体中の原子に関する基本的な内容を説明することができない. |
固体中の電子に関する評価項目 | 固体中の電子に関する基本的な内容を説明することができる. | 固体中の電子に関する基本的な内容を説明することがある程度できる. | 固体中の電子に関する基本的な内容を説明することができない. |
固体の諸物性に関する評価項目 | 固体の諸物性に関する基本的な内容を説明することができる. | 固体の諸物性に関する基本的な内容を説明することがある程度できる. | 固体の諸物性に関する基本的な内容を説明することができない. |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
物性物理学(condensed matter physics)のうち,固相にある物質の物理的な性質(=物性)を扱う固体物理学(solid-state physics)の基礎的概念を解説する.まず,結晶の周期性を軸に,固体の成り立ちと構成要素である原子・電子の状態について学習する.続いて,固体の熱的性質,電気的性質,磁気的性質,光学的性質を取り上げ,各々の物性について初歩から統一的に理解することで,広範かつ膨大な固体物性の全体像を掴む.固体物理学が土台とする力学,電磁気学,熱力学の復習に加え,必要となる量子力学と統計力学に対しては予備知識を補足する.また,各週の授業に関連する代表的な実験手法や最近の研究成果も紹介する.
授業の進め方・方法:
・授業方法は,講義を中心としながら,随所に例題演習を取り入れる.節目には小テストを行うこともある.
・適時,レポート課題を課すので,期限内に提出すること.
注意点:
<成績評価>試験(50%),授業中の問題演習・小テストおよびレポート課題(50%)の合計100点満点で(C-1)を評価し,評価結果60点以上を合格とする.
<オフィスアワー>水曜日 16:00~17:00,電気電子・機械工学科棟3F 313柳沼教員室(必要に応じて来室可).
<備考>1~4年次に学習した力学,電磁気・原子,熱・波動の内容が身に付いていること,数学(偏微分,微分方程式,フーリエ級数/フーリエ変換,ベクトル解析,行列の固有値問題など)が操れることを前提とする.各週の授業内容を整理・復習し,自分なりの理解をもつことが大切である.
なお,本科目は学修単位科目であり,授業時間30時間に加えて,自学自習時間60時間が必要となる.
授業の属性・履修上の区分
授業計画
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
結晶構造と周期性 (教科書:pp. 1-13) |
基本並進ベクトルを用いてブラベ格子と基本単位胞を理解し,原子が配列した結晶構造とその周期性を説明できる.
|
2週 |
逆格子空間と回折 (教科書:pp. 15-27) |
波数kを変数とする逆格子空間(k空間)を理解し,ブリュアン域を説明できる.また,周期構造からの回折とそれを用いた構造解析の方法に関する知識を得る.
|
3週 |
量子力学の導入 (教科書:pp. 28-30) |
前期量子論を復習し,単一電子干渉を用いた二重スリット実験の謎を理解できる.さらに,この実験結果を粒子と波の二重性によって説明できる.
|
4週 |
量子力学の基礎 (教科書:pp. 30-34) |
シュレディンガー方程式を導入し,その解であるエネルギー固有値と固有関数を理解できる.さらに,ボルンの規則や物理量の期待値を説明できる.
|
5週 |
原子の電子状態 (教科書:pp. 40-43, pp. 36-39) |
水素原子にシュレディンガー方程式を適用し,量子数で指定されたエネルギー準位と波動関数を求め,電子状態について説明できる.また,角運動量とスピンに関する知識を得る.
|
6週 |
固体における化学結合 (教科書:pp. 53-69) |
水素分子イオンの結合,共有結合,イオン結合,金属結合,ファンデルワールス結合,水素結合を理解し,結晶構造との関係を説明できる.
|
7週 |
格子振動(1次元系) (教科書:pp. 70-75) |
1次元系の場合,原子の振動を波として理解し,調和近似を用いて波数kと振動数ωの分散関係ω(k)を説明できる.
|
8週 |
格子振動(3次元系) (教科書:pp. 75-82) |
2種原子1次元系の格子振動を理解し,3次元結晶に拡張できる.
|
2ndQ |
9週 |
自由電子モデル (教科書:pp. 99-102) |
自由電子モデルを理解し,ボルン-カルマン条件を適用して,1次元系と3次元系のエネルギー準位を決定できる.
|
10週 |
フェルミエネルギー (教科書:pp. 102-108) |
フェルミ統計を導入し,フェルミエネルギーを理解して,基底状態の全エネルギーと状態密度を説明できる.
|
11週 |
エネルギーバンド (教科書:pp. 111-127, 129-131) |
ブロッホの定理を理解し,周期ポテンシャル中のエネルギーバンドを説明できる.
|
12週 |
固体中の電気伝導 (教科書:pp. 152-163) |
エネルギーバンドに基づいて金属・半導体・絶縁体の違いを理解し,金属の電気伝導を説明できる.
|
13週 |
固体の磁気的性質 (教科書:pp. 188-208) |
固体内電子の軌道運動とスピンがもつ磁気モーメントを理解し,その配列に基づいて磁性体を分類できる.さらに,ハイゼンベルグの交換相互作用を説明できる.
|
14週 |
固体の光学的性質 (教科書:pp. 169-179) |
誘電率や吸収係数を理解し,電磁波・光波に対する固体内電子の応答として,プラズマ振動を説明できる.
|
15週 |
前期末達成度試験 |
物性物理学の基本的な考え方が身に付いたか,学習内容の理解度を確認する.
|
16週 |
低次元ナノ材料 |
ビスマス(Bi)の結晶構造・電子状態の特徴を理解し,半金属や2Dナノ材料としての特長と重要性を説明できる.
|
評価割合
| 試験 | 小テスト | 平常点 | レポート | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 50 | 5 | 25 | 20 | 0 | 100 |
配点 | 50 | 5 | 25 | 20 | 0 | 100 |