概要:
近年,システムの高性能化と多機能化に伴い,高い品質を担保することが難しくなっている.品質問題が企業や社会に及ぼす影響は非常に大きく,場合によっては企業の存続に関わる問題にまで発展することが少なくない.そこで,より科学的に品質問題を解決するため,田口玄一博士によってタグチメソッドという手法が提案され広く利用されており,さまざまな分野で実績を上げている.この授業では,タグチメソッドを用いて統計論的に品質問題を解決する「パラメータ設計」を中心に講義し,工程をを少なくして品質を向上させる方法について学習する.
授業の進め方・方法:
実験計画法,タグチメソッド,回帰分析の概要と関連用語,回帰分析の概要とそのやり方,直交表の割りつけ方法などを身につけられるように,講義と演習を交えながら授業を進めていく.特に回帰分析とパラメータ設計による2段階設計については演習時間を十分に確保し理解を深め,実践できるレベルまで持っていく予定である.また,7週間に渡る「パラメータ設計の実践編」を通じて2段階設計を体験させる.
注意点:
評価について,評価割合に従って行います.ただし,適宜再試験や追加課題を課し,加点することがあります.中間試験を授業時間内に実施することがあります.この科目は学修単位科目であり,1単位あたり15(30)時間の対面授業を実施します.併せて1単位あたり30(15)時間の事前学習・事後学修が必要となります.
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
品質工学の歴史、タグチメソッド |
品質工学誕生の背景と品質工学の貢献を理解し、その応用範囲を知る。
|
2週 |
確率統計の基礎と実験計画法 |
統計学の基礎と実験計画法を知る。
|
3週 |
パラメータ設計 |
ノイズの影響を減らす方法としてのパラメータ設計の考え方とその評価法を理解できる。
|
4週 |
回帰分析 |
回帰分析の概要を理解し、Excelを用いて回帰分析を実践できる。
|
5週 |
静特性のパラメータ設計 |
望目特性、ゼロ望目特性、望小特性、望大特性などの静特性について理解し、その評価法を理解できる。
|
6週 |
動特性のパラメータ設計 |
入出力関係の動特性について従来のシステムと違ってノイズを考慮したエンジニアードシステムとして扱うことの意味とその評価法を理解できる。
|
7週 |
パラメータ設計の実践1 |
紙ヘリコプターのパラメータ設計を通じて静特性または動特性のパラメータ設計を実践し、実験計画法によるパラメータ設計によってノイズに強い高品質の紙ヘリコプターを設計・製作できる。
|
8週 |
パラメータ設計の実践2 |
紙ヘリコプターのパラメータ設計を通じて静特性または動特性のパラメータ設計を実践し、実験計画法によるパラメータ設計によってノイズに強い高品質の紙ヘリコプターを設計・製作できる。
|
4thQ |
9週 |
発表会 |
パラメータ設計を通じてわかったこと、最適化においての有意性について説明できる。
|
10週 |
損失関数とその利用 |
品質をコストで評価する損失関数とそれを利用した許容差設計、生産ラインの管理方法について理解できる。
|
11週 |
基本機能によるパラメータ設計 |
目的機能を実現するための技術手段として採用する自然の原理を基本機能と呼ぶ。要素還元の法則により、システムの機能をいくつかの基本機能に分けて考え、パラメータを実施できることを理解する。
|
12週 |
非線形システムのパラメータ設計 |
入出力が非線形関係である場合のパラメータ設計では、線形に見立ててパラメータ設計を行うことができることをいくつかの事例を通じて理解できる。
|
13週 |
望小特性によるパラメータ設計 |
望小特性は、傷の大きさや数、摩耗、振動、騒音、有害成分などのように小さければ小さいほど良い特性を指す。その具体例を通じてそのやり方を理解できる。
|
14週 |
損失関数とその利用 |
品質をコストで評価する損失関数と、それを利用した許容差設計、生産ラインの管理方法などについて理解できる。
|
15週 |
MTシステム |
診断、予測、パターン認識、検査における判定などの幅広い用途をもつMTシステムについて理解できる。
|
16週 |
総括 |
授業を総括する。
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 工学基礎 | 技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。 | 3 | |
現代社会の具体的な諸問題を題材に、自ら専門とする工学分野に関連させ、技術者倫理観に基づいて、取るべきふさわしい行動を説明できる。 | 3 | |
技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を認識している。 | 3 | |
社会における技術者の役割と責任を説明できる。 | 3 | |
科学技術が社会に与えてきた影響をもとに、技術者の役割や責任を説明できる。 | 3 | |
科学者や技術者が、様々な困難を克服しながら技術の発展に寄与した姿を通し、技術者の使命・重要性について説明できる。 | 3 | |
分野横断的能力 | 態度・志向性(人間力) | 態度・志向性 | 態度・志向性 | チームで協調・共同することの意義・効果を認識している。 | 3 | |
チームで協調・共同するために自身の感情をコントロールし、他者の意見を尊重するためのコミュニケーションをとることができる。 | 3 | |
当事者意識をもってチームでの作業・研究を進めることができる。 | 3 | |
チームのメンバーとしての役割を把握した行動ができる。 | 3 | |
リーダーがとるべき行動や役割をあげることができる。 | 3 | |
適切な方向性に沿った協調行動を促すことができる。 | 3 | |
リーダーシップを発揮する(させる)ためには情報収集やチーム内での相談が必要であることを知っている | 3 | |
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業等でどのように活用・応用されているかを認識できる。 | 3 | |
企業人として活躍するために自身に必要な能力を考えることができる。 | 3 | |
コミュニケーション能力や主体性等の「社会人として備えるべき能力」の必要性を認識している。 | 3 | |