制御工学

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 制御工学
科目番号 2023-302 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 電子制御工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 フィードバック制御入門,杉江俊治・藤田政之著,コロナ社,1999
担当教員 青木 悠祐

到達目標

(1)制御系の標準的構成を理解し,フィードバック制御の利点について実例を挙げて説明できる.また,制御工学に関する用語を英語に変換できる
(2)ダイナミカルシステムの伝達関数表現を理解し,結合法則と等価変換を用いてブロック線図を簡単化することができる
(3)ラプラス変換を応用して,時不変線形システムの時間応答を求めることができる
(4)システムの過渡応答特性を理解し,極の位置との関係について説明できる.また,システムの安定性の概念を理解し,ラウス・フルビッツの方法により系が安定であるための必要十分条件を導くことができる
(5)フィードバック制御系の感度特性・定常特性について説明できる
(6)システムの周波数応答を理解し,ベクトル軌跡・ボード線図を描くことができる(C1-3)
(7)フィードバック系の内部安定性の概念を理解し,ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる.また安定余裕の概念を説明できる(C1-3)
(8)PID補償器および位相進み-遅れ補償器を用いて,設計仕様を満たすフィードバック制御系を設計できる(C1-3)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
1.制御系の標準的構成を理解し,フォードバック制御の利点について実例を挙げて説明できる。また、制御工学に関する用語を英語にすることができる□フィードバック制御系とフィードフォワード制御系の例を挙げることができる。更に、それぞれの利点欠点を述べることができる。 □身近な例をブロック線図にすることができる。それに加えて、ブロック線図を変形させて表現することができる。 □制御工学に関する用語を英語にすることができる□フィードバック制御系とフィードフォワード制御系の例を挙げることができる。 □身近な例をブロック線図にすることができる。 □制御工学に関する用語を英語にすることができる□フィードバック制御系とフィードフォワード制御系の例を挙げることができない。 □身近な例をブロック線図にすることができない。 □制御工学に関する用語を英語にすることができない
2.ダイナミカルシステムの伝達関数表現を理解し,結合法則と等価変換を用いてブロック線図を簡単化することができる□ブロック線図の結合・等価変換を用いて、フィードフォーワード、フィードバックを含むブロック線図の閉ループ伝達関数を求めることができる。 □ブロック線図の結合ができる □ブロック線図の等価変換ができる □ブロック線図を簡単化して、閉ループ伝達関数を求めることができる□ブロック線図の結合ができない □ブロック線図の等価変換ができない □ブロック線図を簡単化して、閉ループ伝達関数を求めることができない。
3.ラプラス変換を応用して,時不変線形システムの時間応答を求めることができる  □システムの線形/非線形を判断でき、数式を用いて証明することができる □システムの時変/時不変を判断でき、数式を用いて証明することができる □インパルス応答・ステップ応答を求めることができ、その情報をもとに伝達関数を求めることができる □逆ラプラス変換を求めることができる □畳み込みのラプラス変換を証明することができる □システムの線形/非線形を判断できる □システムの時変/時不変を判断できる □インパルス応答を求めることができる □ステップ応答を求めることができる □逆ラプラス変換を求めることができる□システムの線形/非線形を判断できない □システムの時変/時不変を判断できない □インパルス応答を求めることができない □ステップ応答を求めることができない □逆ラプラス変換を求めることができない
4.システムの過渡応答特性を理解し,極の位置との関係について説明できる.また,システムの安定性の概念を理解し,ラウス・フルビッツの方法により系が安定であるための必要十分条件を導くことができる □漸近角、漸近線の実軸交点、軌跡の分離点、複素極からの進出角、虚軸との交点をもとに、一巡伝達関数の根軌跡を描くことができる □フィードバック制御系が安定となるコントローラの範囲をラウス・フルビッツの安定判別法により求めることができる。また、ラウス配列において計算を進めることができない際に、補助多項式を用いて求めることができる。 □伝達関数の根軌跡を描くことができる □フィードバック制御系が安定となるコントローラの範囲をラウス・フルビッツの安定判別法により求めることができる□伝達関数の根軌跡を描くことができない □フィードバック制御系が安定となるコントローラの範囲をラウス・フルビッツの安定判別法により求めることができない
5.フィードバック制御系の感度特性・定常特性について説明できる □制御対象とコントローラが与えられた際に感度関数を求めることができる □制御パラメータと感度の関係を考察することができる □伝達関数・入力が与えられた際に、定常位置偏差および定常値を求めることができる□制御対象とコントローラが与えられた際に感度関数を求めることができる □伝達関数・入力が与えられた際に、定常位置偏差および定常値を求めることができる□制御対象とコントローラが与えられた際に感度関数を求めることができない □伝達関数・入力が与えられた際に、定常位置偏差および定常値を求めることができない
6.システムの周波数応答を理解し,ベクトル軌跡・ボード線図を描くことができる(C1-3)□2次系のベクトル軌跡を描くことができる □2次系のボード線図を描くことができる □ボード線図からゲイン余裕、位相余裕を読み取ることができる □ベクトル軌跡とボード線図の違いを説明することができる□1次系のベクトル軌跡を描くことができる □1次系のボード線図を描くことができる □ボード線図からゲイン余裕、位相余裕を読み取ることができる□ベクトル軌跡を描くことができない □ボード線図を描くことができない □ボード線図からゲイン余裕、位相余裕を読み取ることができない
7.フィードバック系の内部安定性の概念を理解し,ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる.(C1-3)□伝達関数のゲイン、位相差を求め、それをもとにナイキスト線図を描くことができる □ナイキスト線図から制御系の安定判別ができる □安定余裕の概念を説明できる□ナイキスト線図を描くことができる □ナイキスト線図から制御系の安定判別ができる□ナイキスト線図を描くことができない □ナイキスト線図から制御系の安定判別ができない
8.PID補償器および位相進み-遅れ補償器を用いて,設計仕様を満たすフィードバック制御系を設計できる(C1-3)□MATLAB等を用いて、制御対象のインパルス応答、ステップ応答をグラフ化できる。また、制御対象の変化による影響を考察できる □MATLAB等を用いて、ボード線図、ナイキスト軌跡を描くことができる。また、ゲイン余裕・位相余裕を読み取ることができる。 □PID補償器、位相進み-遅れ補償器等、補償器を用いて、入力に対する応答を改善することができる。また、パラメータによる影響を考察することができる□MATLAB等を用いて、制御対象のインパルス応答、ステップ応答をグラフ化できる □MATLAB等を用いて、ボード線図、ナイキスト軌跡を描くことができる □PID補償器、位相進み-遅れ補償器等、補償器を用いて、入力に対する応答を改善することができる□MATLAB等を用いて、制御対象のインパルス応答、ステップ応答をグラフ化できない □MATLAB等を用いて、ボード線図、ナイキスト軌跡を描くことができない □PID補償器、位相進み-遅れ補償器等、補償器を用いて、入力に対する応答を改善することができない

学科の到達目標項目との関係

実践指針 (C1) 説明 閉じる
実践指針のレベル (C1-3) 説明 閉じる
【本校学習・教育目標(本科のみ)】 3 説明 閉じる
【プログラム学習・教育目標 】 C 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 制御とは「制し,御する」こと,すなわち動くモノを意図するように動かすことである.本講義では、「制御」に関する体系的な学問である制御理論の基礎において最も重要な概念である「フィードバック」の本質的利点について学習する.特に,種々の対象システムから,制御に関する特性を数学的モデルという形で抽出し,このモデルに基づいてシステムの挙動を解析し,制御系の設計理論を組み立てることを主眼に置く.中でも,1入力1出力システムの伝達関数表現に基づいて古典制御の枠組で扱われてきたフィードバック制御系の解析と設計に関する内容を中心に進める.
授業の進め方・方法:
授業は原則として講義を中心に行い、適宜課題演習、設計演習を行う。
講義は主に板書により進め、適宜例題や演習を交え、質問や議論をすることにより理解を深める。
注意点:
1.中間試験を授業時間内に実施することがあります。
2.この科目は学修単位科目であり、1単位あたり30時間の対面授業を実施します。併せて1単位あたり15時間の事前学習・事後学習が必要となります。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 授業ガイダンス フィードバック制御系とフィードフォワード制御系の例を挙げることができる
2週 ダイナミカルシステムの表現 身近な例をブロック線図にすることができる
3週 ラプラス変換 ダイナミカルシステムの伝達関数表現を理解できる
4週 ラプラス変換 演習 ダイナミカルシステムの伝達関数表現を理解できる
5週 制御系の表現 結合法則と等価変換を用いてブロック線図を簡単化することができる
6週 制御系の表現 演習 結合法則と等価変換を用いてブロック線図を簡単化することができる
7週 中間演習 ダイナミカルシステム、伝達関数、ブロック線図について演習問題に取り組むことができる
8週 時間応答~インパルス応答、1次系の過渡応答~ ラプラス変換を応用して,時不変線形システムの時間応答を求めることができる
2ndQ
9週 時間応答~2次系の過渡応答~
ラプラス変換を応用して,時不変線形システムの時間応答を求めることができる
10週 システムの安定性 ~過渡応答、極・零点~ システムの過渡応答特性を理解し,極の位置との関係について説明できる
11週 システムの安定性~ラウス・フルビッツの安定判別法~ システムの安定性の概念を理解し,ラウス・フルビッツの方法により系が安定であるための必要十分条件を導くことができる
12週 システムの安定性 演習 フィードバック制御系の感度特性・定常特性について説明できる
13週 フィードバック制御系の特性 ~感度、感度関数~ フィードバック制御系の感度特性・定常特性について説明できる
14週 フィードバック制御系の特性 ~開ループ伝達関数、定常偏差~ 開ループ伝達関数、定常偏差について説明できる
15週 制御系の特性 演習 フィードバック制御系の感度特性・定常特性について説明できる
16週
後期
3rdQ
1週 フィードバック制御系の安定性 伝達関数の根軌跡を描くことができる
2週 フィードバック制御系の安定性 ~根軌跡~ 伝達関数の根軌跡を描くことができる
3週 周波数応答 ~周波数応答と伝達関数~ システムの周波数応答を理解し,ベクトル軌跡を描くことができる
4週 周波数応答 ~ベクトル軌跡~ システムの周波数応答を理解し,ベクトル軌跡を描くことができる
5週 周波数応答 ~ボード線図~ システムの周波数応答を理解し,ボード線図を描くことができる
6週 周波数応答 演習 システムの周波数応答を理解し,ボード線図を描くことができる
7週 中間演習 根軌跡、ベクトル軌跡、ボード線図について演習問題に取り組むことができる
8週 フィードバック制御系の安定性 ~内部安定性~ フィードバック系の内部安定性の概念を理解することができる
4thQ
9週 フィードバック制御系の安定性 ~ナイキストの安定判別法~ ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる
10週 フィードバック制御系の安定性~ゲイン余裕、位相余裕~ システムの周波数応答を理解し,ボード線図を描くことができる
フィードバック系の内部安定性の概念を理解し,ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる
11週 フィードバック制御系の安定性 演習 ボード線図,ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる
12週 制御系のロバスト性解析 ~不確かさとロバスト性、ロバスト安定性~ フィードバック系の内部安定性の概念を理解し,ナイキスト線図を描いて系の安定性を判別することができる
13週 フィードバック制御系の設計法 ~設計手順と性能評価~ PID補償器および位相進み-遅れ補償器を用いて,設計仕様を満たすフィードバック制御系を設計できる
14週 フィードバック制御系の設計法 ~PID補償、位相進み-遅れ補償~ PID補償器および位相進み-遅れ補償器を用いて,設計仕様を満たすフィードバック制御系を設計できる
15週 制御系設計 総合演習 PID補償器や位相進み-遅れ補償器を用いて,設計仕様を満たすフィードバック制御系を設計できる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力数学数学数学整式の加減乗除の計算や、式の展開ができる。3前3,前4
因数定理等を利用して、4次までの簡単な整式の因数分解ができる。3前3,前4
実数・絶対値の意味を理解し、絶対値の簡単な計算ができる。3前3,前4
平方根の基本的な計算ができる(分母の有理化も含む)。3前3,前4
複素数の相等を理解し、その加減乗除の計算ができる。3前3,前4
解の公式等を利用して、2次方程式を解くことができる。3前3,前4
因数定理等を利用して、基本的な高次方程式を解くことができる。3前3,前4
無理方程式・分数方程式を解くことができる。3
1次不等式や2次不等式を解くことができる。3前3,前4
累乗根の意味を理解し、指数法則を拡張し、計算に利用することができる。3前4,前14,後6
指数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3前14,後6
指数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3前14,後6
対数の意味を理解し、対数を利用した計算ができる。3前14,後6
対数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3前14,後6
対数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3前14,後6
角を弧度法で表現することができる。3前4,前11
三角関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3前4,前11
加法定理および加法定理から導出される公式等を使うことができる。3前4,前11
三角関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3前4,前11
三角比を理解し、簡単な場合について、三角比を求めることができる。3前4,前11
一般角の三角関数の値を求めることができる。3前4,前11
2点間の距離を求めることができる。3
内分点の座標を求めることができる。3
2つの直線の平行・垂直条件を利用して、直線の方程式を求めることができる。3
簡単な場合について、円の方程式を求めることができる。3後2
放物線、楕円、双曲線の図形的な性質の違いを区別できる。3
簡単な場合について、不等式の表す領域を求めたり領域を不等式で表すことができる。3後2
等差数列・等比数列の一般項やその和を求めることができる。3
不定形を含むいろいろな数列の極限を求めることができる。3
無限等比級数等の簡単な級数の収束・発散を調べ、その和を求めることができる。3
ベクトルの定義を理解し、ベクトルの基本的な計算(和・差・定数倍)ができ、大きさを求めることができる。3後4
平面および空間ベクトルの成分表示ができ、成分表示を利用して簡単な計算ができる。3後4
平面および空間ベクトルの内積を求めることができる。3後4
行列の定義を理解し、行列の和・差・スカラーとの積、行列の積を求めることができる。3後3
逆行列の定義を理解し、2次の正方行列の逆行列を求めることができる。3後3
行列式の定義および性質を理解し、基本的な行列式の値を求めることができる。3後3
線形変換の定義を理解し、線形変換を表す行列を求めることができる。3
簡単な場合について、関数の極限を求めることができる。3前14
微分係数の意味や、導関数の定義を理解し、導関数を求めることができる。3前14
積・商の導関数の公式を用いて、導関数を求めることがができる。3前14
合成関数の導関数を求めることができる。3前14
三角関数・指数関数・対数関数の導関数を求めることができる。3前14
逆三角関数を理解し、逆三角関数の導関数を求めることができる。3前14
関数の増減表を書いて、極値を求め、グラフの概形をかくことができる。3
極値を利用して、関数の最大値・最小値を求めることができる。3
不定積分の定義を理解し、簡単な不定積分を求めることができる。3前4
置換積分および部分積分を用いて、不定積分や定積分を求めることができる。3前4
定積分の定義と微積分の基本定理を理解し、簡単な定積分を求めることができる。3前4
分数関数・無理関数・三角関数・指数関数・対数関数の不定積分・定積分を求めることができる。3前4
微分方程式の意味を理解し、簡単な変数分離形の微分方程式を解くことができる。3前4
簡単な1階線形微分方程式を解くことができる。3前4
定数係数2階斉次線形微分方程式を解くことができる。3前4
専門的能力分野別の専門工学機械系分野計測制御自動制御の定義と種類を説明できる。4前1
フィードバック制御の概念と構成要素を説明できる。4前1
基本的な関数のラプラス変換と逆ラプラス変換を求めることができる。4前3,前4
ラプラス変換と逆ラプラス変換を用いて微分方程式を解くことができる。4前3,前4
伝達関数を説明できる。4前5,前6
ブロック線図を用いて制御系を表現できる。4前5,前6
制御系の過渡特性について説明できる。4前7,前8
制御系の定常特性について説明できる。4前7,前8
制御系の周波数特性について説明できる。4前7,前8
安定判別法を用いて制御系の安定・不安定を判別できる。4前9,前10,前11
電気・電子系分野制御伝達関数を用いたシステムの入出力表現ができる。4前11
ブロック線図を用いてシステムを表現することができる。4前2,前5,前6,前13
システムの過渡特性について、ステップ応答を用いて説明できる。4前7,前8,前9
システムの定常特性について、定常偏差を用いて説明できる。4前7,前8
システムの周波数特性について、ボード線図を用いて説明できる。4後5
フィードバックシステムの安定判別法について説明できる。4前10,後7,後8,後9,後10

評価割合

中間試験期末試験総合演習レポートノート検査合計
総合評価割合3040151500100
基礎的能力0000000
専門的能力3040151500100
分野横断的能力0000000