物理化学Ⅲ

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 物理化学Ⅲ
科目番号 2018-540 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 物質工学科 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 「アトキンス物理化学要論 第6版」千原・稲葉訳 東京化学同人
担当教員 稲津 晃司

到達目標

1. 原子オービタルから簡単な分子の分子オービタルを組み立てることができる。
2.分子のエネルギー準位図から発光・吸光スペクトルの波長や振動数が計算できる。
3.簡単な直鎖および環状ポリエンの分子オービタルと軌道エネルギーを計算できる。
4.HOMOやLUMOの波動関数が与えられたら分子の反応性が予測できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
1. 原子オービタルから簡単な分子の分子オービタルを組み立てることができる。□化学結合の量子化学的表現の種類を具体例をあげて説明できる。 □重ね合わせの原理と変分法に基づく分子オービタルの表現を数式を用いて導出し表現できる。□化学結合の量子化学的表現の種類を説明できる。 □重ね合わせの原理と変分法に基づく分子オービタルの表現ができる。□化学結合の量子化学的表現の種類を説明できない。 □重ね合わせの原理と変分法に基づく分子オービタルの表現ができない。
2.分子のエネルギー準位図から発光・吸光スペクトルの波長や振動数が計算できる。□分子のエネルギーを図示して数式を用いながら説明できる。 □電子遷移によるエネルギーの授受を発光・吸光スペクトルのピークの出現と関連付けてエネルギー計算ができる。□分子のエネルギーを図示して説明できる。 □電子遷移によるエネルギーの授受と発光・吸光スペクトルのピークのエネルギー計算ができる。□分子のエネルギーを図示して説明できない。 □電子遷移によるエネルギーの授受と発光・吸光スペクトルのピークのエネルギー計算ができない。
3.簡単な直鎖および環状ポリエンの分子オービタルと軌道エネルギーを計算できる。□単純ヒュッケル分子軌道法による分子オービタルの波動関数とエネルギー準位の決定ができ,分子図を作成することができる。 □分子オービタルの種類と性質を単純ヒュッケル法による計算結果と合わせて定量的に説明できる。□単純ヒュッケル分子軌道法による分子オービタルの波動関数とエネルギー準位の決定ができる。 □分子オービタルの種類と性質を単純ヒュッケル法による計算結果と合わせて説明できる。□単純ヒュッケル分子軌道法による分子オービタルの波動関数とエネルギー準位の決定ができない。 □分子オービタルの種類と性質を単純ヒュッケル法による計算結果と合わせて説明できない。
4.HOMOやLUMOの波動関数が与えられたら分子の反応性が予測できる。□HOMOとLUMOの性質をあげ,分子の反応性との関連を具体的な反応や実験方法をあげて説明できる。 □分子の反応性と性質をHOMO-LUMOのエネルギー準位差にもとづいて定量的に説明できる。□HOMOとLUMOの性質をあげ,分子の反応性との関連を説明できる。 □分子の反応性と性質をHOMO-LUMOのエネルギー準位差にもとづいて説明できる。□HOMOとLUMOの性質をあげ,分子の反応性との関連を説明できない。 □分子の反応性と性質をHOMO-LUMOのエネルギー準位差にもとづいて説明できない。

学科の到達目標項目との関係

【本校学習・教育目標(本科のみ)】 2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物質工学科本科における科目「物理化学」の目標は、物理化学の基礎を理解し、基本的な計算ができるようになることである。物理化学I,IIでは,化学熱力学とその化学への応用および速度論の基礎,原子の性質の量子論的理解について学んだ。本科目では、分子の性質に関わる基本的な量子化学的な取り扱いとその応用として重要な分光法についての基本を演習などを通じながら理解する。
授業の進め方・方法:
授業は講義中心で進め,必要に応じて授業内で口頭試問を行う.また,学習内容の重要度や区切りに応じて確認演習を行う.
授業内容は,化学と生物の必須基礎としての物理化学の基本を,原子と単純な分子の量子化学的表現およびその応用としての分光法について取り扱う.
注意点:
1.試験や課題レポート等は、JABEE 、大学評価・学位授与機構、文部科学省の教育実施検査に使用することがあります。
2.授業参観される教員は当該授業が行われる少なくとも1週間前に教科目担当教員へ連絡してください。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス:前期量子論と原子構造の復習 ・「物理化学II」での教育目標・授業概要・評価方法等を理解するとともに,既習の量子論への理解を確かめる.
2週 多電子原子の構造 ・オービタル近似について説明できる.
・遮蔽と浸透について説明できる.
3週 化学結合1 ・ポテンシャルエネルギー曲線を描き,二粒子から成る系のエネルギー準位を説明できる.
4週 化学結合2 ・原子価結合法について説明できる.
・オービタルの混成と昇位について波動関数を用いて説明できる.
5週 化学結合3 ・分子軌道法について説明できる.
・LCAO近似について説明できる.
6週 化学結合4 ・等核二原子分子および異核二原子分子の構造とエネルギー準位を説明できる.
7週 化学結合5 ・単純ヒュッケル法を用いて簡単な有機分子の波動関数とエネルギー準位を求めることができる.
8週 まとめの演習1 ・分子の量子化学的取扱いに必要な基礎事項について計算と説明ができる.
・分子軌道法を用いて等核二原子分子から簡単な有機化合物について波動関数,エネルギー準位およびオービタルを求め,説明することができる.
2ndQ
9週 分光法:電子遷移1 ・紫外可視近赤外分光について計算し,スペクトルの説明ができる.
10週 分光法:電子遷移2 ・蛍光とリン光を生じる電子遷移について説明できる.
・フランクーコンドンの原理を説明できる.
11週 分光法:振動遷移1 ・分子の振動にともなうエネルギーの授受を図を用いて説明できる.
12週 分光法:振動遷移2 ・振動スペクトルの解釈と計算ができる.
13週 分光法:回転遷移1 ・分子の回転に伴うエネルギーの授受について,波動関数を用いて説明できる.
14週 分光法:回転遷移2 ・回転スペクトルおよび回転−振動スペクトルの解釈と計算ができる.
15週 まとめの演習2 ・多電子原子,分子の量子化学的表現ができる.
・単純ヒュッケル法を用いたエネルギー準位の計算ができる.
・回転,振動,電子遷移スペクトルの解釈と計算ができる.
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力数学数学数学整式の加減乗除の計算や、式の展開ができる。3
分数式の加減乗除の計算ができる。3
実数・絶対値の意味を理解し、絶対値の簡単な計算ができる。3
平方根の基本的な計算ができる(分母の有理化も含む)。3
複素数の相等を理解し、その加減乗除の計算ができる。3
解の公式等を利用して、2次方程式を解くことができる。3
簡単な連立方程式を解くことができる。3
無理方程式・分数方程式を解くことができる。3
1次不等式や2次不等式を解くことができる。3
恒等式と方程式の違いを区別できる。3
2次関数の性質を理解し、グラフをかくことができ、最大値・最小値を求めることができる。3
分数関数や無理関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3
累乗根の意味を理解し、指数法則を拡張し、計算に利用することができる。3
指数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3
指数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3
対数の意味を理解し、対数を利用した計算ができる。3
対数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3
対数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3
三角比を理解し、簡単な場合について、三角比を求めることができる。3
一般角の三角関数の値を求めることができる。3
三角関数・指数関数・対数関数の導関数を求めることができる。3
自然科学物理力学物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。3
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。3
質点にはたらく力のつりあいの問題を解くことができる。3
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。3
運動方程式を用いた計算ができる。3
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3
運動の法則について説明できる。3
仕事と仕事率に関する計算ができる。3
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。3
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。3
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。3
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。3
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。3
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。3
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。3
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。3
万有引力の法則から物体間にはたらく万有引力を求めることができる.3
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。3
力のモーメントを求めることができる。3
角運動量を求めることができる。3
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3
重心に関する計算ができる。3
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。3
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。3
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。3
気体の内部エネルギーについて説明できる。3
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。3
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。3
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。3
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。3
波の重ね合わせの原理について説明できる。3
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。3
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。3
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。3
自然光と偏光の違いについて説明できる。3
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。3
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。3
電場・電位について説明できる。3
クーロンの法則が説明できる。3
クーロンの法則から、点電荷の間にはたらく静電気力を求めることができる。3
ジュール熱や電力を求めることができる。3
ライフサイエンス/アースサイエンスライフサイエンス/アースサイエンス地球温暖化の問題点、原因と対策について説明できる。3
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学σ結合とπ結合について説明できる。4
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4
共鳴構造について説明できる。4
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4
無機化学金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合75200500100
基礎的能力75200500100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000