物理化学実験

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 物理化学実験
科目番号 2018-619 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験・実習 単位の種別と単位数 履修単位: 4
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 前期 週時間数 8
教科書/教材 学科で作成した実験書
担当教員 稲津 晃司

到達目標

1.実験内容の化学的基礎について,反応式や定式化された原理,法則を用いながら説明できる。                             
2.基本的な実験器具・装置の使い方を修得するとともに説明できる。
3.実験結果を適切なソフトウェアを使って図表にまとめることができる。
4.実験結果について考察し,報告書が作成できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
物質の物理化学的性質や実験内容を化学的に説明できる取り扱う物質の物理化学的性質や分析方法について,反応式や定式化された原理,法則を用いて,一般化した説明ができる取り扱う物質の物理化学的性質や分析方法について説明できる取り扱う物質の物理化学的性質や分析方法について説明できない
基本的な実験器具・装置の使い方を修得している実験に用いた実験器具・装置の使い方を修得し,口頭および文書で説明できる実験に用いた実験器具・装置の使い方を修得している実験に用いた実験器具・装置の使い方を修得していない
ソフトウェアを用いて実験報告書が作成できる文書作成および表計算ソフトウェアを用い,かつ実験結果について考察を加えた実験報告書が作成できる文書作成および表計算ソフトウェアを用いて実験報告書が作成できる文書作成および表計算ソフトウェアを用いて実験報告書が作成できない

学科の到達目標項目との関係

【本校学習・教育目標(本科のみ)】 2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
化学と生物の理解において最も重要な基礎となる物理化学を以下の実験実習を通して,物質工学科の本科課程の学習内容,現代化学を理解する基礎として修得する。(1)溶液の電気伝導率の測定方法と物理化学的意義,(2)液体の表面張力の測定方法と物理化学的意義(3)溶液の溶質の固体への吸着量の測定方法と吸着の物理化学的意義,(4)2成分系の液相の相互溶解度の測定方法と物理化学的意義,(5)有機酸水溶液系について溶解度の測定方法と溶解熱の物理化学的意義,(6)反応速度の測定方法と活性化エネルギーの物理化学的意義(7)蒸気密度法による分子量測定による完全気体の理解,(8)減圧下での実験方法の学習と真空、低圧条件の理解,(9)実験化学の報告書の作成と計算機を用いるデータ処理.
授業の進め方・方法:
物質工学棟学生実験室にて実験を実施し,必要の応じて教室や総合情報センター演習室で講義・演習を行う。
各実験の間には1日のレポート作成日を設けて,翌週の月曜日あるいは火曜日に提出する。実験毎のレポートの完成度と実験準備および実施状況について評価し,評価点60点以上を合格とする。
ケガや病気などやむを得ない事情で実験を実施できなかった場合は,別途日を設けて実施する。
注意点:
1. 試験や課題レポート等は、JABEE 、大学評価・学位授与機構、文部科学省の教育実施検査に使用することがあります。
2. 授業参観される教員は当該授業が行われる少なくとも1週間前に教科目担当教員へ連絡してください。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス1 実験での注意事項と実験内容に関連する物理化学を理解し,説明できる.
2週 ガイダンス2 実験報告書を作成する際の基本的な留意点を理解し,適切なソフトウェアを用いて文書として説明できる.
3週 溶液の電気伝導度の測定と酸の電離定数の算定 試料水溶液の電気抵抗を測定して比伝導度,当量伝導度,電離度を算出できる.Ostwaldの希釈律を説明できる.
4週 表面張力の測定 表面張力計を用いて試料溶液の表面張力を算出できる.試料組成による表面張力の違いを説明できる
5週 吸着とクロマトグラフィー 固液系での吸着等温線を取得し,吸着等温式に適用できる.吸着の応用としてのクロマトグラフィーを説明できる.
6週 固体の溶解度と溶解熱 固体の水への溶解平衡における平衡定数の温度依存性を取得し,ファント・ホッフの式に適用して溶解熱を算定できる.
7週 液体の相互溶解度 2成分系液相での相互溶解度を測定し,相互溶解度曲線を取得するとともに液体の混合現象を説明できる.
8週 レポート作成と問題演習 このときまでに作成したレポートを見直して,改善点をあげられる.実験内容に関連する物理化学の問題を解くことができる.
2ndQ
9週 反応速度と活性化エネルギー 液相触媒反応について,異なる反応温度での反応速度データを取得できる.得られたデータをアレニウスプロットすることにより,みかけの活性化エネルギーを算定できる.
10週 蒸気密度法による分子量測定 気体の状態方程式を応用して蒸気密度法による分子量の測定ができる.
11週 真空計実験装置の取扱い 重要な産業技術であり,また科学研究において不可欠な技術である真空技術を実験に用いる機器やその原理を含めて説明できる.
12週 化学電池 化学電池の起電力を測定し,理論値との比較を電気化学平衡を用いて説明できる.
13週 液体の蒸気圧 気液相転移について種々の温度での蒸気圧データからクラウジウスークラペイロンの式を用いて蒸発エンタルピーと蒸発エントロピーを求めることができる.
14週 反応熱の測定 中和反応での熱の出入りを測定し,化学反応におけるエンタルピーについて具体例を示して説明できる.
15週 まとめと講評 物理化学実験を通して行った基本的な数値の取得と定量評価の化学実験全般での位置付けを説明できる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学化学実験化学実験実験の基礎知識(安全防具の使用法、薬品、火気の取り扱い、整理整頓)を持っている。3前1
事故への対処の方法(薬品の付着、引火、火傷、切り傷)を理解し、対応ができる。3
測定と測定値の取り扱いができる。3
有効数字の概念・測定器具の精度が説明できる。3
レポート作成の手順を理解し、レポートを作成できる。3
ガラス器具の取り扱いができる。3
基本的な実験器具に関して、目的に応じて選択し正しく使うことができる。3
試薬の調製ができる。3
代表的な気体発生の実験ができる。3
工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4
化学工学蒸留の原理について理解できる。1
単蒸留、精留・蒸留装置について理解できる。1
基本的な抽出の目的や方法を理解し、抽出率など関係する計算ができる。1
吸着や膜分離の原理・目的・方法を理解できる。4
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】分析化学実験代表的な定性・定量分析装置としてクロマト分析(特にガスクロ、液クロ)や、物質の構造決定を目的とした機器(吸光光度法、X線回折、NMR等)、形態観察装置としての電子顕微鏡の中の代表的ないずれかについて、その原理を理解し、測定からデータ解析までの基本的なプロセスを行うことができる。3
固体、液体、気体の定性・定量・構造解析・組成分析等に関して必要な特定の分析装置に関して測定条件を選定し、得られたデータから考察をすることができる。4
物理化学実験温度、圧力、容積、質量等を例にとり、測定誤差(個人差・器差)、実験精度、再現性、信頼性、有効数字の概念を説明できる。4
各種密度計(ゲールサック、オストワルド等)を用いて、液体および固体の正確な密度を測定し、測定原理を説明できる。4
粘度計を用いて、各種液体・溶液の粘度を測定し、濃度依存性を説明できる。4
熱に関する測定(溶解熱、燃焼熱等)をして、定量的に説明できる。4
分子量の測定(浸透圧、沸点上昇、凝固点降下、粘度測定法等)により、束一的性質から分子量を求めることができる。4
相平衡(液体の蒸気圧、固体の溶解度、液体の相互溶解度等)を理解して、平衡の概念を説明できる。4
基本的な金属単極電位(半電池)を組み合わせ、代表的なダニエル電池の起電力を測定できる。また、水の電気分解を測定し、理論分解電圧と水素・酸素過電圧についても説明できる。4
反応速度定数の温度依存性から活性化エネルギーを決定できる。4
分野横断的能力態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性周囲の状況と自身の立場に照らし、必要な行動をとることができる。2
自らの考えで責任を持ってものごとに取り組むことができる。2
目標の実現に向けて計画ができる。2
目標の実現に向けて自らを律して行動できる。2
チームで協調・共同することの意義・効果を認識している。2
チームで協調・共同するために自身の感情をコントロールし、他者の意見を尊重するためのコミュニケーションをとることができる。2
当事者意識をもってチームでの作業・研究を進めることができる。2
チームのメンバーとしての役割を把握した行動ができる。2
適切な方向性に沿った協調行動を促すことができる。3
リーダーシップを発揮する(させる)ためには情報収集やチーム内での相談が必要であることを知っている3

評価割合

実験実施実験報告書予習や実験の取組合計
総合評価割合107218000100
基礎的能力1001800028
専門的能力072000072
分野横断的能力0000000