生物工学実験

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 生物工学実験
科目番号 2023-567 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験・実習 単位の種別と単位数 履修単位: 4
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 後期 週時間数 8
教科書/教材 学生実験書、新バイオテクノロジーテキストシリーズ遺伝子工学第二版
担当教員 後藤 孝信,古川 一実

到達目標

生物工学実験は、生物化学を基礎とした生物工学分野の実験方法を習得する。また実験を通して、微生物工学・生物化学・分子生物学・遺伝子工学の知識を習得する科目である。
共通の技能としては生体物質を抽出して、分離し、解析することができることを基本的な目標とする。
具体的には、下記の項目を達成することを目標とする。
1.無菌操作を身につけるために、無菌的技能において留意点の多い植物組織の培養を行い、培地作成およびクリーンベンチ操作を身に付ける。得られた学修成果をレポートにまとめ、遅延なく報告することができる。
2. 遺伝情報や物質としてのDNAを扱う基本技術を身につけ、得られた学修成果をレポートにまとめ、遅延なく報告することができる。
3.形質転換実験において法令を遵守したうえで組換え実験を遂行することができる。また得られた学修成果をレポートにまとめ、遅延なく報告することができる。
4. 酵素の反応速度論的解析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。(E1-3)
5.分光光度計を用いて、物質の定量分析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。(E1-3)
6. 生体成分の定量分析を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて延滞なく報告することができる。

ルーブリック

優秀基準標準基準未到達基準
バイオテ技術者に求められるDNAを扱う実験操作を身につける。そのために実験プロトコルを予習した上で実験を遂行する。□各実験テーマにおける実験操作を予習したうえで的確に遂行することができる。□各実験テーマにおける実験操作を予習した上で間違いなく遂行することができる。□各実験テーマにおける実験操作を予習し、遂行することができない。
植物組織培養実験において、実験班チームに課せられた実験プロジェクトを立案実行し、その内容をプレゼンテーションで説明することができる。(E1-3).□植物組織培養の実験プロジェクトについて立案のための自分の意見を出すことができ、実験を遂行することができる。実験結果とともにプロジェクト立案にいたった根拠を過不足なく説明することができる。□植物組織培養の実験プロジェクトについて立案のための自分の意見を出すことができ、実験結果を発表することができる。□植物組織培養の実験プロジェクトについて立案のための自分の意見を出すことができない。また、実験結果についても発表することができない。
酵素の反応速度論的解析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。(E1-3)□酵素の反応速度論的解析実験を遂行し、得られた学修成果を優れた内容のレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。□酵素の反応速度論的解析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。□酵素の反応速度論的解析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができない。
分光光度計を用いて、物質の定量分析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。(E1-3)□分光光度計を用いて、物質の定量分析実験を遂行し、得られた学修成果を優れた内容のレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。□分光光度計を用いて、物質の定量分析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができる。□分光光度計を用いて、物質の定量分析実験を遂行し、得られた学修成果をレポートにまとめて遅滞なく報告することができない。
生体成分の分析を行うことができる。□低学年で修得した滴定を生体成分に応用し、適切に解析と判断を行うことができる。□低学年で修得した滴定を生体成分に応用し、解析と判断を行うことができる。□低学年で修得した滴定を生体成分に応用し、解析と判断を行うことができない。
実験を再現できる報告書としてのレポートを指定された形式で作成し、期限内に提出する。□実験課題に対する報告書を、指示された内容について過不足無く記述するとともに、図や表も用いて詳細を記載し、期限内に提出することができる。□実験課題に対する報告書を、指示された内容について記述し、期限内に提出することができる。□実験課題に対する報告書を、期限内に提出することができない。

学科の到達目標項目との関係

実践指針 (E1) 説明 閉じる
実践指針のレベル (E1-3) 説明 閉じる
【本校学習・教育目標(本科のみ)】 2 説明 閉じる
【プログラム学習・教育目標 】 E 説明 閉じる

教育方法等

概要:
本科目では、生物化学の知識を用いて生物の能力を工学的に活用する手法を実地で学ぶため、酵素反応の速度論的解析および生体成分を取り扱う各実験および遺伝子工学的手法の理論と技能を修得する.各実験における生物工学に必要な機器分析についても修得し、これらの技術を応用し,活用する能力を養うことで社会の要求に応えられるようになることを目標とする.
実験内容としては以下の事項となる.
◆生体中の化学反応は酵素によって触媒されているが、酵素は生物工学分野での物質生産にも応用され、その活性解析能力は、化学系技術者に必須の能力である.乳酸脱水素酵素を用いて、酵素の取り扱いや活性の測定、反応速度論的解析方法について習熟する.実験の作業計画は各グループごとに立案し、得られたデータの解析結果から、次に行う作業内容を検討していく.従って、実験の進行程度は各グループに任され、誤差の多いデータで先に進まずに、必要に応じて再実験を繰り返すことがある.また、生物工学で多用される分析法として、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(シリカゲルTLC)法によるアミノ酸の分離と検出を行う.TLCの原理を理解するとともに、その操作に習熟する.
◆生体の構成成分として油脂を取り扱い、ケン化価およびヨウ素価を測定する。これらにより低学年で分析の基本として修得した滴定を中心とする実験技術を生体成分に応用する。
◆遺伝子を担う物質であるDNAの抽出など取り扱いと利用方法に関する実験を行い、バイオテクニシャンとしてマイクロレベルの実験操作技術を身につける.また,技術のみならず,生命科学の根幹となる物質DNAを扱う実験を通して,技術と社会問題について考察できるように知識を身につける.そのため,遺伝子組換え実験と遺伝子の検出実験を中心に行い,技術によりもたらされるベネフィットと伴うリスクを考察していく内容を踏まえた実験を行う.
◆植物組織培養を通して、iPS細胞で知られるようになった「全能性」を学び、無菌操作を習得する。
上述により,他者と協力する実習としてチームでプロジェクトを立案遂行し,実験過程における詳細を,指定された様式のレポートにまとめることでコミュニケーション能力あるいはプレゼンテーション能力を養成する.
授業の進め方・方法:
1. 各実験において予習の上で正しい操作うため毎回の技術取得目標に則り教えた操作方法を実行できることを評価する。
2. 各実験テーマが設定されている場合には、それぞれの実験における報告レポートにより評価する.
3. 植物組織培養実験においてはプロジェクト立案とグループワークを報告書とプレゼンテーションにより評価する。
4. 酵素の反応速度論的解析を行う能力、およびTLCを用いて物質の分離・分析を行う能力については、毎回の作業ごとに提出される報告レポートにより評価する.
授業目標(1)(E1-3)は標準基準(6割)以上で、かつ科目全体で60点以上の場合に合格とする.
注意点:
評価については、評価割合に従って行います。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業
必修科目

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 実験ガイダンス 実験内容と評価方法および実験を行うために必要な安全の基礎知識を学ぶ。
同時に実験に必須の計測機器マイクロピペットの使用方法とメンテナンス方法を理解することができる。
2週 テーマ1 植物組織培養実験:培地の作成 解説により原理を理解する。各班で実験プロジェクトを考案する。班で考案した組成の培地を作ることができる。
3週 テーマ1 植物組織培養実験:無菌操作と培養 クリーンベンチにおける無菌操作を習得する。これらの結果をプレゼンテーションを用いて発表することができる。
4週 テーマ2 DNA抽出実験 DNA抽出の原理を理解する。
各サンプルによりDNAを抽出する。
抽出DNA溶液の定量をすることができる。
5週 テーマ3 PCR実験:PCR操作 原理を理解し、PCRにより特定のDNA塩基配列を増幅することができる。アガロースゲルを作成することができる。
6週 テーマ3 PCR実験:電気泳動 アガロースゲル電気泳動を行い、PCRの結果を検出することができる。
7週 テーマ4 大腸菌の遺伝子組換え実験 遺伝子組換えの原理および実験の安全性を確保することを理解する。培地の準備を行うことができる。
8週 テーマ4 大腸菌の遺伝子組換え実験 大腸菌にプラスミドを導入し、形質転換を行うことができる。その結果を培地条件から考察することができる。
4thQ
9週 テーマ5 組換え大腸菌からのタンパク質抽出実験 大腸菌に導入したプラスミドの産物であるGFPタンパク質を抽出し精製することができる。
10週 テーマ6 酵素反応実験:デンプンの酵素的加水分解 酵素反応を測定するための検量線を作成することができ、酵素による加水分解反応と透析を行うことができる。
11週 テーマ7 生体成分の定量:油脂 油脂のケン化価およびヨウ素価を測定することができる。
12週 テーマ8 生体成分の定性:シリカゲルTLC実験 シリカゲルTLCの原理を理解し説明することができる。天然物の分離・同定法の基本操作を理解し、説明することができる。
13週 テーマ9 酵素反応速度論実験 検量線を作成し、酵素の至適pHと至適温度の決定ができる。酵素反応に対する基質濃度の影響を解析できる。
14週 テーマ10 酵素反応速度論実験 酵素反応の速度論的解析としてKmとVmaxを決定することができる。阻害剤の影響を検討することができる。
15週 まとめ
生物工学実験における情報セキュリティ教育(ゲノム解析の取り扱い、安価なゲノム解析が社会に及ぼす影響)
生物工学実験を通して学んだことを振り返り、発展として生物工学における情報セキュリティとしてゲノム解析の取り扱いや安価なゲノム解析が社会に及ぼす影響を理解することができる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学化学実験化学実験実験の基礎知識(安全防具の使用法、薬品、火気の取り扱い、整理整頓)を持っている。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
事故への対処の方法(薬品の付着、引火、火傷、切り傷)を理解し、対応ができる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
測定と測定値の取り扱いができる。3後1,後4,後10,後11,後12,後13,後14
有効数字の概念・測定器具の精度が説明できる。3後10,後11,後12,後13,後14
レポート作成の手順を理解し、レポートを作成できる。3後1
ガラス器具の取り扱いができる。3後1,後2,後10,後11,後12,後13,後14
基本的な実験器具に関して、目的に応じて選択し正しく使うことができる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
試薬の調製ができる。3後2,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野生物工学微生物の培養方法について説明でき、安全対策についても説明できる。3後7,後8,後9
抗生物質や生理活性物質の例を挙げ、微生物を用いたそれらの生産方法について説明できる。3後7,後8,後9
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】生物工学実験滅菌・無菌操作をして、微生物を培養することができる。4後7,後8,後9
適切な方法や溶媒を用いて、生物試料から目的の生体物質を抽出し、ろ過や遠心分離等の簡単な精製ができる。4後4,後15
分光分析法を用いて、生体物質を定量することができる。4後4,後11,後13,後14
クロマトグラフィー法または電気泳動法によって生体物質を分離することができる。4後6,後12,後14,後15
酵素の活性を定量的または定性的に調べることができる。4後10,後13,後14
分野横断的能力汎用的技能汎用的技能汎用的技能他者の意見を聞き合意形成することができる。3後2,後3
合意形成のために会話を成立させることができる。3後2,後3
グループワーク、ワークショップ等の特定の合意形成の方法を実践できる。3後2,後3
書籍、インターネット、アンケート等により必要な情報を適切に収集することができる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
収集した情報の取捨選択・整理・分類などにより、活用すべき情報を選択できる。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
収集した情報源や引用元などの信頼性・正確性に配慮する必要があることを知っている。3後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
情報発信にあたっては、発信する内容及びその影響範囲について自己責任が発生することを知っている。3後3,後15
情報発信にあたっては、個人情報および著作権への配慮が必要であることを知っている。3後15
目的や対象者に応じて適切なツールや手法を用いて正しく情報発信(プレゼンテーション)できる。3後3
態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性周囲の状況と自身の立場に照らし、必要な行動をとることができる。2後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
自らの考えで責任を持ってものごとに取り組むことができる。2後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
チームで協調・共同することの意義・効果を認識している。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
チームで協調・共同するために自身の感情をコントロールし、他者の意見を尊重するためのコミュニケーションをとることができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
当事者意識をもってチームでの作業・研究を進めることができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14
チームのメンバーとしての役割を把握した行動ができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14

評価割合

実験報告書実験操作・技能プレゼンテーション合計
総合評価割合652510100
基礎的能力6525090
グループワーク001010