誘電体材料工学

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 誘電体材料工学
科目番号 2023-764 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 新機能材料工学コース 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 電気学会大学講座「誘電体現象論[改訂版]」 大木義路、大久保仁、鈴置保雄、穂積直裕著 電気学会
担当教員 遠山 和之

到達目標

1.高分子固体絶縁材料の誘電特性を説明できる。(C1-4)
2.高分子固体絶縁材料の高電界電気伝導機構を例を挙げて説明できる。(C1-4)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
1.高分子固体絶縁材料の誘電特性を説明できる。(C1-4)高分子絶縁材料の誘電分極、誘電率、誘電損について、共鳴形分散、緩和形分散、デバイの式、緩和時間、アレニウスの式などの専門用語を用いて説明することができる。高分子絶縁材料の誘電分極、誘電率、誘電損について、定性的に説明することができる。誘電分極、誘電率、誘電損という用語について説明することができる。
2.高分子固体絶縁材料の高電界電気伝導機構を例を挙げて説明できる。(C1-4) 高分子固体絶縁材料に直流や交流などの様々な電圧が印加された際に予測される電気伝導機構をエネルギー帯モデル、キャリア密度、キャリア移動度等の用語を用いて定性的に説明することができる。高分子固体絶縁材料に直流電圧が印加された際の電気伝導機構を例を挙げて定性的に説明することができる。高分子固体絶縁材料に高電圧を印加するとオーム則から逸脱した非線形な特性となることを知っている。

学科の到達目標項目との関係

【プログラム学習・教育目標 】  C 説明 閉じる
実践指針 (C1) 説明 閉じる
実践指針のレベル (C1-4) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
電気電子分野における材料は、電気伝導という観点から絶縁・誘電体、半導体、導電体に分類する。本講義で扱う絶縁材料と誘電材料は、本来同じものである。使用目的が電気絶縁ならば「絶縁材料」、センサなどの誘電体ならば「誘電材料」と区別する。本講義では、誘電体に電界を印加したときに生じる分極現象や内部電界の考え方について扱い、固体絶縁材料の試験方法、部分放電現象、絶縁破壊現象、絶縁劣化現象について定性的に説明する。
授業の進め方・方法:
座学を中心に進めるが、絶縁体の評価方法については、自ら本を読んで調べる、実際に実験装置を扱ってみる等の演習も用意し、より深い理解を促す。
注意点:
1.評価については、評価割合に従って行います。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
第1章 誘電体を理解するための基礎
1.1 物質の構造
水素原子模型(原子の構造、エネルギー準位)、量子力学の概要(量子数、パウリの排他律)、化学結合(共有結合、イオン結合、金属結合)、結晶(単結晶、多結晶)、非晶質、格子構造と格子不整(原子空孔、格子間原子)、格子振動(光学モード、音響モード)について学ぶ。
2週 第1章 誘電体を理解するための基礎
1.2 固体の電子論
1.3 統計力学と熱力学の基礎
物質波(規格化条件)、シュレーディンガー方程式、エネルギー帯(井戸型ポテンシャル)、絶縁体、半導体、導体のエネルギー帯構造、非晶質固体(ポリマー)のエネルギー帯、統計力学(エネルギー分布関数)、(1)マクスウェル・ボルツマン分布、(2)フェルミ・ディラック分布、(3)ボーズ・アインシュタイン分布について学ぶ。
3週 第1章 誘電体の種類と基本的性質
2.1 誘電体の種類
2.2 合成有機高分子固体誘電体
誘電体の分類(気体・液体・固体)無機材料、有機材料、合成有機高分子固体誘電体(重合体、共重合体、縮重合体)、分子の形態(鎖状高分子、網目状高分子)、高分子固体の構造(無定形構造、多結晶構造)について学ぶ。
4週 第3章 誘電分極、誘電率および誘電損
3.1 誘電分極とは
3.2 誘電体の巨視的性質
誘電分極、誘電体の巨視的性質(誘電率、分極)、誘電分極の種類(電子分極、原子分極、双極子分極、界面分極、空間電荷分極)
分極の速さ、複素誘電率と誘電損について学ぶ。
5週 第3章 誘電分極、誘電率および誘電損
3.3 誘電率の分子理論(1)
分極率と内部電界、ローレンツの内部電界、分極率、分子分極、クラウジウス・モソッティの式、電子分極率の計算、双極子分極率の計算について学ぶ。
6週 第3章 誘電分極、誘電率および誘電損
3.3 誘電率の分子理論(2)
気体の静誘電率、液体の誘電的性質と誘電率、固体の誘電的性質と誘電率について学ぶ。
7週 第3章 誘電分極、誘電率および誘電損
3.4 均質誘電体の分散と吸収
誘電分散(共鳴形分散、緩和形分散)、電子分極、原子分極、双極子分極、デバイの式、緩和時間、アレニウスの式、コール・コールの円弧則、コール・ダビドソンの経験式について学ぶ。
8週 第3章 誘電分極、誘電率および誘電損
3.5 絶縁材料の誘電特性(紹介のみ)
3.6 複素電気的モジュラスと複素導電率
3.7 複合誘電体
3.8 強誘電体(紹介のみ)
複素電気的モジュラス、複素導電率、複合誘電体(不均質誘電体、二層誘電体、誘電率のみが異なる二層絶縁体、導電率のみが異なる場合)、電気絶縁に使われる複合誘電体(段絶縁と傾斜機能絶縁、電気機器における複合絶縁構成、高分子ナノコンポジット)について学ぶ。
2ndQ
9週 第4章 電気伝導
4.1 はじめに
4.2 固体誘電体の電気伝導現象
移動度、導電率、抵抗率、電気伝導の時間特性(瞬時充電電流、吸収電流)、温度特性(アレニウスの式、活性化エネルギー)、電界依存性(オーム則、絶縁破壊)について学ぶ。
10週 第4章 電気伝導
4.3 固体誘電体の電気伝導機構(1)
キャリヤと電気伝導機構、電子性伝導(エネルギー帯モデル、キャリヤ密度(プール・フレンケル効果)、キャリヤ移動度、ホッピングモデル、電子放出電流、リチャードソン・ダッシュマン定数、ショットキー放出、ファウラー・ノルドハイムの式)について学ぶ。
11週 第4章 電気伝導
4.3 固体誘電体の電気伝導機構(2)
イオン性伝導(格子欠陥、フレンケル欠陥、ショットキー欠陥)、イオン結晶、共有結合性物質、イオン移動度、電界変歪の影響(空間電荷層、空間電荷制限電流)について学ぶ。
12週 第4章 電気伝導
4.5 電気伝導に関する測定法
電流の測定(表面電流測定系、体積電流測定系)、走行時間(time-of-flight)法による移動度の評価、熱刺激電流(TSC)法、空間電荷の測定(パルス静電応力(PEA)法)について学ぶ。
13週 第5章 誘電体の絶縁破壊
5.1 総説
5.2 固体誘電体の絶縁破壊現象
厚さ効果、温度特性、印加電圧波形(直流、交流、インパルス)、時間効果、極性効果、放射線照射効果、分子構造と絶縁破壊の強さ、空間電荷の影響、絶縁破壊試験法について学ぶ。
14週 第5章 誘電体の絶縁破壊
5.3 固体誘電体の絶縁破壊理論
絶縁破壊理論の歴史的変遷
電子的破壊(真性破壊、電子雪崩破壊、ツェナー破壊)、純熱的破壊(定常熱破壊、衝撃熱破壊)、電気機械的破壊(マクスウェル応力)について学ぶ。
15週 第6章 各種条件下における誘電体の絶縁破壊
6.1 総説
6.2 放電により引き起こされる固体絶縁破壊
6.3 電気絶縁診断法
誘電体の絶縁破壊と電気絶縁診断法について学習する。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

定期試験課題レポート合計
総合評価割合6040100
絶縁・誘電材料に関する専門的知識6040100