熱統計物理学

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 熱統計物理学
科目番号 0010 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 新機能材料工学コース 対象学年 専2
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書は特に定めない。ていねいな板書を心がけるのでノートをとってほしい。参考書:地球環境問題と熱力学の関係については,「環境理解のための熱物理学」白鳥紀一他(朝倉書店),「物理学に基づく環境の基礎理論」勝木渥(海鳴社)がよくまとまっている。統計物理的な考え方については「なっとくする統計力学」都筑卓司著(講談社)が良い入門書である。
担当教員 勝山 智男

到達目標

(1) 熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性)をエントロピーなどの熱力学的物理量を用いて定量的に説明することができる。
(2) マクロな熱現象をミクロな統計物理的視点でとらえることができる。 
(3) 地球環境や生命現象,工学における諸過程を,エントロピーの概念を用いて説明できる。(B1-4)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1□熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を,応用面も含めて定量的に考察することができる。□熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を説明できる。 □熱に関連した重要な物理学的諸量(特にエントロピー)を計算できる。□熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を説明できない。 □熱に関連した重要な物理学的諸量(特にエントロピー)を計算できない。
評価項目2□熱現象を統計物理的に表現し,定量的に説明することができる。□熱現象を統計物理的に表現することができる。□熱現象を統計物理的に表現することができない。
評価項目3(B1-4)□地球環境や生命現象,工学における諸過程を,エントロピーの概念を用いて定量的に説明でき,環境問題の解決や工学過程の改善に対して具体案を述べることができる。□地球環境や生命現象,工学における諸過程をエントロピーの概念を用いて説明し,環境問題の解決や工学過程の改善に対して意見を述べることができる。□地球環境や生命現象,工学における諸過程をエントロピーの概念を用いて説明し,環境問題の解決や工学過程の改善に対して意見を述べることができない。

学科の到達目標項目との関係

【プログラム学習・教育目標 】  B 説明 閉じる
実践指針 (B1) 説明 閉じる
実践指針のレベル (B1-4) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
熱に関する物理学には,大きく分けて2つのアプローチがある。一つは,マクロな(観測可能な)量である温度や圧力といった緒量の相互の関係に注目したもので,これが「熱力学」である。もう一つは,ミクロな粒子運動に注目して,その統計からマクロな量を求めようとする立場で,これを「統計物理学」という。このように,ミクロな状態の統計がものをいう現象は,熱に限らず物理のあらゆる分野で目にすることができる。したがって,統計物理学の考え方は,すべての物理現象を理解する重要な鍵であると言ってもよい。本講義では,熱に関する物理現象,特に,重要な割に社会的認知度が低いエントロピーに焦点を当てて,マクロな熱力学的見方とミクロな統計物理学的見方の両面から考える。
授業の進め方・方法:
授業は,講義と自習から成る。講義は板書しながら平易な説明をする。プリントは配布しないが,ゆっくる講義するのでノートをとってほしい。講義終了時に演習課題を出す。次の授業までに課題を解いてレポートにして提出する。解答例は,授業開始時(レポート回収後)に解説する。授業の最後に,各自でエントロピーに関連した社会的・工学的問題について調べ,レポートにまとめて発表する。
注意点:
高等学校の「物理基礎」程度の熱の基礎知識を前提とする(本科で熱力学や熱物理学を学んだかどうかは問わない)。熱の基礎は各自で自習して習得しておいてほしい。
課題の解答例は,レポート回収後に説明する。ノートに課題を解いて,コピーを提出するようにしてほしい。なお,提出されたレポートは返却しない。
授業目標3(B1-4)の評価点が60点以上で,かつ3つの到達目標に関する評価点の平均が60点以上の場合に合格とする。評価基準はルーブリックによる。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 熱力学と統計力学
温度と熱の定義および測定について理解できる
2週 熱機関
熱機関,可逆過程と不可逆過程,カルノーの熱機関,カルノーサイクル,永久機関について理解できる
3週 エネルギーの原理
熱と仕事の等価性,状態量,理想気体,状態変化と内部エネルギーについて理解し,基礎的な計算ができる
4週 エントロピーの原理
不可逆過程,エントロピー,エネルギー利用とエントロピー増加について理解し,基礎的な計算ができる
5週 ルジャンドル変換
エンタルピーと自由エネルギー,ルジャンドル変換ダイヤグラムについて理解できる
6週 開放系と熱平衡
化学ポテンシャル,熱平衡の諸概念を理解できる
7週 熱と分子運動
圧力とは何か,温度とは何か,運動の自由度と比熱について理解できる
8週 前半のまとめ
前半の熱力学に関して諸計算ができる
2ndQ
9週 微視的状態と速度分布
巨視的状態と微視的状態,分子の空間分布,マクスウェルの速度分布則について理解できる
10週 エントロピーの微視的解釈
情報量とエントロピー,エントロピーの微視的解釈につい手理解できる
11週 生命と地球におけるエントロピー1
開放系と散逸構造,開放系としての生物,光合成のエントロピー変化について理解し説明できる
12週 生命と地球におけるエントロピー2
散逸構造としての地球,エントロピー廃棄の多重構造,環境問題とエントロピーについて理解し説明できる
13週 まとめとレポート発表1
熱・統計物理学とかかわりの深い社会の諸問題について調査・発表・討論をし,これらの諸問題を正しく理解することができる。
14週 まとめとレポート発表2
熱・統計物理学とかかわりの深い社会の諸問題について調査・発表・討論をし,これらの諸問題を正しく理解することができる。
15週 まとめとレポート発表3
熱・統計物理学とかかわりの深い社会の諸問題について調査・発表・討論をし,これらの諸問題を正しく理解することができる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験発表課題レポート態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合06040000100
基礎的能力06040000100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000