熱統計物理学

科目基礎情報

学校 沼津工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 熱統計物理学
科目番号 2023-783 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 医療福祉機器開発工学コース 対象学年 専2
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書は特に定めない。授業はスライド資料を用いて行う。参考書:熱と統計物理学の全般にわたっては,戸田盛和著「物理入門コース・熱統計力学」がよくまとまっている。熱については伊東敏雄著「なーるほど!の熱学」が平易。統計物理的な考え方については「なっとくする統計力学」都筑卓司著(講談社)が良い入門書である。さらに、統計物理を身近に感じさせつつ生命現象への応用までカバーした,大沢文夫著「大沢流手づくり統計力学」も良著である。
担当教員 設楽 恭平

到達目標

(1) 熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性)をエントロピーなどの熱力学的物理量を用いて定量的に説明することができる。
(2) マクロな熱現象をミクロな統計物理的視点でとらえることができる。 
(3) 統計物理学の具体的応用例を理解し説明することができる。(B1-4)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1: 熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性)をエントロピーなどの熱力学的物理量を用いて定量的に説明することができる。□熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を,応用面も含めて定量的に考察することができる。□熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を説明できる。 □熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性やエントロピーなど)を説明できない。
評価項目2:マクロな熱現象をミクロな統計物理的視点でとらえることができる。□熱現象を統計物理的に表現し,定量的に説明することができる。□熱現象を統計物理的に表現することができる。□熱現象を統計物理的に表現することができない。
評価項目3: 統計物理学の具体的応用例を理解し説明することができる。(B1-4)□統計物理学の具体的応用例を理解し, 定量的な議論を行うことができる。□統計物理学の具体的応用例を理解し,定性的に説明することができる。□統計物理学の具体的応用例を理解し,説明することができない。

学科の到達目標項目との関係

実践指針 (B1) 説明 閉じる
実践指針のレベル (B1-4) 説明 閉じる
【プログラム学習・教育目標 】 B 説明 閉じる

教育方法等

概要:
熱に関する物理学には,大きく分けて2つのアプローチがある。一つは,マクロな(観測可能な)量である温度や圧力といった緒量の相互の関係に注目したもので,これが「熱力学」である。もう一つは,ミクロな粒子運動に注目して,その統計からマクロな量を求めようとする立場で,これを「統計物理学」という。このように,ミクロな状態の統計がものをいう現象は,熱に限らず物理のあらゆる分野で目にすることができる。したがって,統計物理学の考え方は,すべての物理現象を理解する重要な鍵であると言ってもよい。本講義では,熱に関する物理現象をマクロな視点である熱力学的見方とミクロな視点である統計物理学的見方の両面から考える。
授業の進め方・方法:
授業は,講義と自習から成る。講義は板書とスライド(スクリーンへの投影)を併用し平易な説明をする。プリントは配布しないが,ゆっくり講義するのでノートをとってほしい。講義終了時に演習課題を出し、それを解いたものをレポートとして提出してもらう。レポートの内容を評価して成績に反映する。
注意点:
1. 高等学校の「物理基礎」程度の熱の基礎知識を前提とします(本科で熱力学や熱物理学を学んだかどうかは問わない)。熱の基礎は各自で自習して習得しておいてください。
2. 授業目標3(B1-4)の評価点が60点以上で,かつ3つの到達目標に関する評価点の平均が60点以上の場合に合格とします。評価基準はルーブリックによるものとします。
3. この科目は学修単位科目であり,1単位あたり15(30)時間の対面授業を実施します。併せて1単位あたり30(15)時間の事前学習・事後学習が必要となります。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 熱力学と統計力学
温度と熱の定義および測定について理解できる
2週 エネルギーの原理
熱と仕事の等価性,状態量,理想気体,状態変化と内部エネルギーについて理解し,基礎的な計算ができる
3週 熱機関 熱機関,可逆過程と不可逆過程,カルノーサイクル,永久機関について理解できる
4週 熱力学第二法則
熱力学第二法則について理解できる
5週 エントロピー 不可逆過程,エントロピーについて理解し,基礎的な計算ができる
6週 熱力学関数
エンタルピー,ヘルムホルツの自由エネルギー,ギブスの自由エネルギーについて理解できる
7週 ルジャンドル変換
ルジャンドル変換ダイヤグラムおよびマクスウェル関係式について理解できる
8週 開放系と熱平衡
化学ポテンシャル,熱平衡の諸概念を理解できる
2ndQ
9週 熱と分子運動 圧力,温度,比熱について,気体分子の運動を通して理解できる
10週 マクスウェルの速度分布則
マクスウェルの速度分布則について理解できる
11週 エントロピーの微視的解釈 エントロピーの微視的解釈について理解できる
12週 情報とエントロピー
情報量とエントロピーの関係について理解できる
13週 エントロピーが生む力 エントロピーが生み出す代表的な力であるゴム弾性を統計力学の知識を用いて導き出せる
14週 カノニカル分布 カノニカル分布の分配関数と自由エネルギーとの関係が理解できる
15週 カノニカル分布の応用
カノニカル分布を用いて理想気体の状態方程式を導き出せる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

レポート合計
総合評価割合10000000100
(1) 熱に関連した重要な物理学的性質(特に不可逆性)をエントロピーなどの熱力学的物理量を用いて定量的に説明することができる。400000040
(2) マクロな熱現象をミクロな統計物理的視点でとらえることができる。400000040
(3) 統計物理学の具体的応用例を理解し説明することができる。(B1-4)200000020