社会科学特論

科目基礎情報

学校 鳥羽商船高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 社会科学特論
科目番号 0109 科目区分 一般 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 海事システム学専攻 対象学年 専2
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 『大人になるためのリベラルアーツ 思考演習12題』石井洋二郎・藤垣裕子、2018(第6版)、東京大学出版会
担当教員 深見 佳代

到達目標

1.社会的事象を多角的な観点から分析し、自らの考えを論理的に説明できる。
2.他者の意見について分析し、批判や助言を与えることができる。
3.他者の意見を聞いて自らの考えを見直し、発展させることができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1社会問題を多角的な観点から冷静かつ客観的に分析し、その事象に対する自身の考えを論理的に表現できる。社会問題を正確に分析することができる。社会問題について分析することができていない。
評価項目2学習した事項について十分な知識を有している。学習した項目について一通りの知識を有している。学習した項目についての知識が不十分である。
評価項目3自分の意見を十分な根拠をあげ、論理的に説明することができる。自分の意見を根拠をあげ、論理的に説明することができる。自分の意見を十分説明することができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
社会が抱える諸問題について社会科学的観点から主体的に考察し、自分の意見を論理的に記述する手法を学ぶ。
授業の進め方・方法:
・参加者の報告とディスカッションを中心とした授業である。
・教科書の購入は必須ではないが、購入する方が望ましい。
・教科書は12章に分かれている。参加者はこれらの章から複数選び、内容を順番に報告する。報告回数は参加者の人数によって変動する。
・参加者は報告のあった章の中から2つのテーマを選び、それぞれレポートを作成する。
・11週~15週は提出されたレポートについて教員が講評を行う。
注意点:
【授業日程】
・試験のない授業であるため、試験期間中の授業(7週目と15週目)は通常とは異なる日程で行われる。

【成績評価】
・発表:60点
・レポート:30点(15点×2=30点、レポートの提出が遅れた場合などは減点する。)
・相互評価:10点(講評を聞き、学生間でレポートを採点しあう。)

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
授業:コピペは不正か
ガイダンス:この授業の到達目標、履修上の注意点、評価方法などについて説明できる。
授業:すべての学習は模倣から始まる。一方で模倣は他者が積み上げてきた学習に対する冒とくにもなりえる。近年科学技術の発達によって模倣の形式は変化しており、その結果模倣の持つ社会的意味も変わりつつある。本講義では模倣の中でもコピペに注目し、現代的な意味と不正となりえる根拠はあるか考察することを目標とする。
2週 グローバル人材は本当に必要か 「グローバル人材」という語がつかわれるのは日本と韓国だと言われている。なぜ日本政府は「グローバル人材」が重要だと主張するのだろうか。英語が話せれば「グローバル人材」なのか。人間を「人材」とみなすことに問題はないのか。人間として重要な発達目標について世界との関係を前提に考察することを目標とする。
3週 福島原発事故は日本固有の問題か 福島原発事故は日本固有の問題であって、他国では起きないと主張する人がいる。それは原発事故の原因を、科学技術的要因ではなく、社会文化的要因とみなすからである。実際本件事故は日本独自の社会問題を反映した結果発生したといえる部分を多く含んでいる。一方でこの主張にはオリエンタリズム(西洋を中心とした場合の東洋に対する偏向したものの見方)が含まれるといわれている。本講義では事故原因を分析する際に我々が逃れることのできない偏向性について理解することを目標とする。
4週 芸術作品に客観的価値はあるか 芸術作品の価値はどのように決まるのか。仮に価格がついたとして、それは芸術作品の価値といえるか。そもそも芸術作品について価値を決定することは可能なのか。人によって作品に感動することもあれば感動しないこともあるならば、客観的に価値を決定することは不可能とはいえないか。価値創造のメカニズムについては古くから研究があるが、本講義ではブルデューとポーターの議論を参考にしながら考察することを目標とする。
5週 代理出産は許されるか 科学技術の発達によって我々は自分のDNAを受け継ぐ子の出産を他者に依頼することが可能となった。しかし、出産は母体が死に至ることもある危険なものであることに変わりなく、こうしたリスクを金銭によって取引することは身勝手ではないだろうか。また事実上依頼する側が経済的に豊かで、依頼を引き受ける側が経済的に不利な立場にあるとき、貧富の差による身体搾取が行われているといえないか。仮に貧富の差がなかったとしても、人体を何かの目的のために「使用」することは倫理的に認められるか。本講義では科学技術の発達によって発生している生命倫理の問題について考察することを目標とする。
6週 飢えた子どもを前に文学は役に立つか この問いはフランスの作家・哲学者であるサルトルに由来する。実際文学が腹を満たすことはないので、考察を深めていない場合は必然的に単純な文学無用論につながる。しかしなぜサルトルは作家でありながらこうした問いを発したのか。文学の必要性はどこにあるか、必要性がなぜ文学に求められるのか。役に立たなければならないという前提を放棄したくなるが、それは身勝手な自己正当化ではないのか。本講義では文学に限らず学問全体に対する無用論について考え、「必要」の本質的意味を考察することを目標とする。
7週 真理は一つか 何らかの社会的決定を下すとき、根拠が必要であるが、その根拠は一つに定まらないことは多くある。また、社会が何らかの意思決定をするとき「科学的な答え」を根拠にすることがある。果たして科学的な答えは一つか。専門家同士で意見が異なるとき、どちらを選択するべきか。分野ごとに知識が妥当かどうかを判断する基準は異なるのではないか。本講義では自らが経つ立場を相対化し、再考せざるを得ない状況を理解するとともに、選択の重みについて理解することを目標とする。
8週 国民はすべてを知る権利があるか 2013年12月13日に公布された特定機密保護法は国民の知る権利を制限するものとして世論を二分する議論を巻き起こした。実際日本では1972年に日米政府の密約に関する極秘文書を毎日新聞記者の西山太吉が入手したことによって政府の国民に対する説明が大きく誤っていたことが明らかになったことがある。知る権利は憲法によって直接保障されているものではないが、同時に憲法が保障する基本的人権―表現の自由―を規定する問題である。本講義では情報の流出と管理がますます困難になりつつある社会における問題として知る権利について考察することを目標とする。
2ndQ
9週 学問は社会に対して責任を負わねばならないか この問いは、「学問は役に立たなければならないか」という問いも同時に考えなくてはいけない。そもそも役に立つとはどういうことか。現実的直接的に役に立つということと、間接的に存在意義が認められるということの間には隔たりがある。同様に、学問が社会に対して負う責任にも、さまざまな階層や形態があるはずである。本講義ではまず科学者の社会的責任について考察するとともに、社会と一定の距離を保ちコミットしながら決して同化しない自立精神の重要性について考察することを目標とする。
10週 絶対に人を殺してはいけないか どこまで本気であるかは別として、ほんの一瞬でも誰かを殺したいと思ったことのある人は少なくあるまい。しかし、たいていの場合私たちは思いとどまる。なぜか。警察に捕まるからか、裁判で死刑になるかもしれないからか、倫理的に間違っているからか。そもそも国家が死刑を存置している以上、一定の条件をみたせばだれかを殺すことは問題ないと考えることはできないか。それとも国家が間違っているのか。本講義では共同体の成員にとっての共通利害という視点からこの問題を考えることを目標とする。
11週 講評① 学生から提出されたレポートについて順に講評を行う。
12週 講評② 上に同じ。
13週 講評③ 上に同じ。
14週 講評④ 上に同じ。
15週 講評⑤ 上に同じ。
16週 なし なし

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験報告レポート相互その他その他合計
総合評価割合060301000100
基礎的能力0000000
専門的能力0000000
分野横断的能力060301000100