電気回路の理論を学ぶために必要な専門用語の意味や回路素子の性質を理解するとともに,電気回路計算に必要な複素数計算や回路の諸法則を学修し,種々の電気回路におけるインピーダンス,アドミタンス,電流,電圧,電力等を計算することができる.
概要:
電気は目に見えないため,身近に存在するにもかかわらずそのふるまいをイメージすることは困難であり,理論により理解することが不可欠となる.電気回路の理論は,基本的な法則の上に整然と積み上げられており,電気電子工学を学んでいく第一歩として非常に重要である.電気回路では数学を多用するため最初は難しく感ずるが,数学の授業と関連付けて学ぶことによって理解が深まる.
この授業では,まず「電気回路の基礎」として,抵抗,コイル,コンデンサについて学んだ後,直流回路の計算で用いられる各種の法則と正弦波交流について学習する.次に「交流回路」として,インピーダンスとアドミタンス,フェーザや複素数を用いた計算,交流回路の電力について学習する.更に「交流回路網」の計算において,合成インピーダンス,合成アドミタンス,分圧と分流,電圧源と電流源について学んだ後,キルヒホッフの法則,重ね合わせの理,テブナンの定理とノートンの定理,ミルマンの定理などの諸法則と交流ブリッジについて学習する.最後に「回路網方程式」として,節点,枝,閉路,木,補木などの概念を学んだ後,実際の回路に対して枝電流法,閉路電流法,節点電位法などを用いて回路方程式を導出し,行列や行列式を用いた連立方程式の解法を行う.
授業の進め方・方法:
・すべての内容は,学習・教育到達目標(B)<専門>に対応する.
・授業計画に記載のテーマについて,講義・演習形式で行う.講義中は集中して聴講する.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>習得の度合を中間試験,期末試験,レポートにより評価する.達成度評価における各重みは概ね均等とし,試験問題とレポート課題のレベルは100点法により60点以上の得点で目標の達成を確認する.
<学業成績の評価方法および評価基準>前期末,後期中間および学年末の3回の試験の平均点を85%,課題レポートの結果を15%として,その合計点で評価する.ただし,学年末を除く各試験で60点に達していない者には再試験を課すことがある.このとき,再試験の成績が該当する試験の成績を上回った場合には,60点を上限として,それぞれの試験の成績を再試験の成績で置き換えるものとする.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本教科は電気電子工学序論の学習が基礎となる教科である.本教科の学習には,弧度法,三角関数とそのグラフ,三角関数の公式,連立方程式,複素数計算など,1年生および2年生で学ぶ数学の習得が必要である.
<レポートなど>学習内容の復習と応用力の育成のため,随時,演習課題を与える.
<備考> 本教科は3年次,4年次で学習する電気回路,電子回路の基礎となる教科である.授業中に理解できるように心掛けるとともに,知識確認のために常に多くの問題を解いていく姿勢が大切である.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
シラバスを用いた授業の概要説明,遠隔授業における授業のやり方の説明など |
1.授業の概要,遠隔授業における授業のやり方などが分かる.
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2週 |
電荷,電気と物質,電流,電位・電位差,起電力と電流 |
2.電荷の性質,電荷と電流の関係を理解し,起電力の向き,電流の向きを正しく対応付けることができる.
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3週 |
オームの法則,キルヒホッフの法則,抵抗の直列接続 |
3.オームの法則を理解し,使うことができる..
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4週 |
電圧降下,電圧の分圧,抵抗の並列接続 |
4.抵抗における電圧降下について説明できるとともに,電圧の分圧について正しく計算できる.
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5週 |
電力,電力量流 |
5.直流の電力と電量量の計算ができ,負荷で消費される電力の最大値について説明できる.
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6週 |
ジュールの法則,絶縁電線の許容電流 |
6.ジュールの法則を理解し,簡単な熱量計算ができる.
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7週 |
抵抗の材質・形状による変化,抵抗の温度による変化 |
7.抵抗の抵抗率や温度係数について理解し,材料の形状や温度が変化したときの抵抗の値を計算できる.
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8週 |
第1週から第7週までの範囲のまとめと演習問題 |
8.これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
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2ndQ |
9週 |
キルヒホッフの法則と回路の解き方 |
9.キルヒホッフの法則を理解し,これを用いた回路計算ができる.
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10週 |
行列式 |
10.行列式を用いて,簡単な連立方程式を解くことができる.
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11週 |
重ね合わせの理 |
11.重ね合わせの理を理解し,複数の起電力を含む回路の電流分布を求めることができる.
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12週 |
鵬・テブナンの定理,ノートンの定理 |
12.鵬・テブナンの定理,ノートンの定理を理解し,複数の起電力を含む回路の電流分布を求めることができる.
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13週 |
帆足・ミルマンの定理,相反の定理 |
13.帆足・ミルマンの定理,相反の定理を理解し,複数の起電力を含む回路の電流分布を求めることができる.
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14週 |
Y-Δ変換 |
14.Δ接続をY接続に,Y接続をΔ接続に変換できる.
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15週 |
第9週から第14週までの範囲のまとめと演習問題 |
15.これまでに学習した内容を説明することができる.
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16週 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
前期期末試験の結果に基づく復習,正弦波交流の発生,周波数と周期,角周波数,位相および位相差 |
16.正弦波交流の周波数と周期,角周波数,位相の意味を理解し,これらの間の関係を説明することができる.
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2週 |
正弦波交流の大きさ,正弦波交流に関する演習 |
17.正弦波交流の平均値と実効値の意味を理解し,説明できる.
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3週 |
抵抗回路,インダクタンス回路,コンデンサ回路,RL直列回路,RC直列回路 |
18.抵抗回路,インダクタンス回路,コンデンサ回路における電圧・電流波形を求めることができるとともに,誘導および容量リアクタンスの計算ができる.
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4週 |
記号法とは,複素数 |
19.複素数の表示形式を理解し,四則演算ができる.
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5週 |
正弦波の複素数表示 |
20.記号演算を理解し,正弦波交流のベクトル表示ができる.
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6週 |
インピーダンス |
21.インピーダンスとアドミタンスの意味と関係を理解し,これらに関係する用語について説明できる.
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7週 |
第1週から第6週までの範囲のまとめと演習問題 |
22.これまでに学習した内容を説明することができる.
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8週 |
後期中間試験 |
23.これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
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4thQ |
9週 |
後期中間試験の結果に基づく復習,インダクタンス回路,コンデンサ回路 |
24.インダクタンス回路,コンデンサ回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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10週 |
RL直列回路 |
25.RL直列回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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11週 |
RC直列回路 |
26.RC直列回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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12週 |
RL並列回路 |
27.RL並列回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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13週 |
RC並列回路 |
28.RC並列回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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14週 |
RLC直並列回路 |
29.RLC直並列回路において,電圧と電流の関係を計算し,フェーザ図を用いて,これらの関係を表すことができる.
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15週 |
第9週から第14週までの範囲のまとめと演習問題 |
30.これまでに学習した内容を説明することができる.
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 電気・電子系分野 | 電気回路 | 電荷と電流、電圧を説明できる。 | 4 | |
オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。 | 4 | |
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。 | 4 | |
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。 | 4 | |
ブリッジ回路を計算し、平衡条件を求められる。 | 4 | |
電力量と電力を説明し、これらを計算できる。 | 4 | |
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。 | 4 | |
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。 | 4 | |
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。 | 4 | |
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。 | 4 | |
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。 | 4 | |
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。 | 4 | |
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。 | 4 | |
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。 | 4 | |
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。 | 4 | |
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。 | 4 | |
網目電流法を用いて回路の計算ができる。 | 4 | |
節点電位法を用いて回路の計算ができる。 | 4 | |
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。 | 4 | |