電子物性基礎

科目基礎情報

学校 鈴鹿工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 電子物性基礎
科目番号 0148 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気電子工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「基本を学ぶ電気電子物性」オーム社
担当教員 柴垣 寛治

到達目標

電子物性の基礎となる物質構造を微視的な視点から理解し,各種固体材料における電気伝導がどのような物理的機構によって支配されているのかを定性的・定量的に説明できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1原子構造を理解したうえで,電子の運動を詳細に説明できる原子構造を理解したうえで,電子の運動を説明できる原子構造を理解できず,電子の運動を説明できない
評価項目2物質の結合・結晶構造を適切に理解し,電気的性質について詳細に説明できる物質の結合・結晶構造を理解し,電気的性質について説明できる物質の結合・結晶構造を理解できず,電気的性質について説明できない
評価項目3半導体材料のエネルギーバンド構造を正しく理解し,接合の概念を詳細に説明できる半導体材料のエネルギーバンド構造を理解し,接合の概念を説明できる半導体材料のエネルギーバンド構造を理解できず,接合の概念を説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
身の回りにある電気製品は様々な物質材料から構成されているが,それぞれの物質が持つ電気的性質は,物質内での電子の運動と密接に関係している.物質はすべて原子からできており,さらに原子は原子核と電子からできている.この目に見えない物質構造とその中での電子のふるまいを理解しなければ,物質の電気的性質を理解することはできない.この授業では,特に固体材料に注目してその物質構造の基礎を学ぶ.さまざまな物質構造の違いを理解したうえで,電気的性質の基礎となる電子のふるまいの考え方,取り扱い方を紹介する.また,電気電子工学において特に重要な半導体の電気伝導の基礎を理解するとともに,半導体の接合の概念を学ぶ.
授業の進め方・方法:
・すべての授業内容は学習・教育到達目標(B)<専門>に対応する.
・授業は講義形式で行う.
・「授業計画」における各種の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>下記授業計画の「到達目標」を網羅した問題を2回の中間試験,2回の定期試験で出題し,目標の達成度を評価する.各到達目標に関する重みは概ね均等とする.評価結果が百点法で60点以上の場合に目標の達成を確認できるレベルに設定する.
<学業成績の評価方法および評価基準>前期中間,前期末,後期中間,学年末の4回の試験の平均点で評価する.ただし,前期中間,前期末,後期中間の3回の試験でそれぞれについて60点に達していない者には再試験を課し,再試験の成績が再試験の対象となった試験の成績を上回った場合には,60点を上限としてそれぞれの試験の成績を再試験の成績で置き換えることがある.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>これまでの数学,物理の授業で学んだ知識が必要となる.
<レポート等>理解を深めるため,必要に応じて演習課題を与える.
<注意事項>本授業科目は後に学習する電気電子材料,半導体工学の基礎となる教科である.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 電子物性を学ぶ意義 1.電子物性の重要性を理解できる
2週 水素原子模型 2.水素原子模型をもとにしてエネルギー準位構造を説明できる
3週 電子の2重性と水素原子 3.電子の波動性を理解できる
4週 シュレーディンガーの波動方程式 4.シュレーディンガーの波動方程式を理解できる
5週 量子力学から見た水素原子の電子状態 5.量子数について説明できる
6週 原子内の電子配列 6.原子内の電子配列を説明できる
7週 化学結合と電子物性 7.化学結合を説明できる
8週 中間試験 これまでに学習した内容を理解し,問題を解くことができる
2ndQ
9週 原子の配列と結晶構造 8.結晶構造を説明できる
10週 物質構造の解析 9.X線回折と電子線回折を説明できる
11週 キャリヤと電流 10.古典的な金属の電気伝導の機構を説明できる
12週 電子の集団と統計力学 11.金属内の電子集団の統計分布を説明できる
13週 金属の自由電子モデル 12.金属の自由電子モデルについて,電子状態の簡単な計算ができる
14週 状態密度関数とフェルミ・ディラックの分布関数 13.状態密度関数を説明できる
15週 まとめと演習 これまでに学習した内容を理解し,問題を解くことができる
16週
後期
3rdQ
1週 エネルギーバンド構造 14.エネルギーバンド構造を理解して,物質の違いを説明できる
2週 有効質量の考え方 15.バンド内の電子の運動および有効質量の考え方を理解できる
3週 半導体の電気伝導 16.電子と正孔を説明できる
4週 不純物半導体 17.不純物半導体における不純物の役割を理解できる
5週 半導体中のキャリヤ分布(1)真性半導体 18.各種半導体のキャリヤ密度分布に関する計算ができる
6週 半導体中のキャリヤ分布(2)不純物半導体 上記18
7週 有効状態密度の考え方 上記18
8週 中間試験 これまでに学習した内容を理解し,問題を解くことができる
4thQ
9週 半導体中のキャリヤ輸送 19.キャリヤ輸送と電流との関係を理解できる
10週 半導体の接合の概要 20.半導体の接合について説明できる
11週 pn接合のエネルギーバンド構造 上記20
12週 pn接合のキャリヤ分布(1)電子 上記20
13週 pn接合のキャリヤ分布(2)正孔 上記20
14週 pn接合ダイオードの整流特性 21.pn接合の整流特性を説明できる
15週 まとめと演習 これまでに学習した内容を理解し,問題を解くことができる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電子工学電子の電荷量や質量などの基本性質を説明できる。4
エレクトロンボルトの定義を説明し、単位換算等の計算ができる。4
原子の構造を説明できる。4
パウリの排他律を理解し、原子の電子配置を説明できる。4
結晶、エネルギーバンドの形成、フェルミ・ディラック分布を理解し、金属と絶縁体のエネルギーバンド図を説明できる。4
金属の電気的性質を説明し、移動度や導電率の計算ができる。4
真性半導体と不純物半導体を説明できる。4
半導体のエネルギーバンド図を説明できる。4
pn接合の構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてpn接合の電流―電圧特性を説明できる。4

評価割合

試験課題相互評価態度発表その他合計
総合評価割合10000000100
配点10000000100