基礎制御工学

科目基礎情報

学校 鈴鹿工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 基礎制御工学
科目番号 0141 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電子情報工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「はじめての制御工学」 佐藤和也,平元和彦,平田研二 (講談社), 「改訂 応用数学」(大日本図書). 参考書:「フィードバック制御入門」 杉江俊治,藤田政之著 (コロナ社),「自動制御入門のためのラプラス変換演習 改訂版」 小郷寛,佐藤真平 (共立出版)
担当教員 伊藤 明

到達目標

1. ラプラス変換の扱い方を理解し, 変換対を利用した微分方程式の計算ができる.
2. 微分方程式で表されるシステムモデルの応答の求め方を理解し, 計算することができる.
3. システムの極の振る舞いにもとづいた制御系の解析・設計法を理解できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1ラプラス変換の定義および概念を理解し, 変換対にしたがった微分方程式の計算ができる.例題や類題などを参照しながら, 微分方程式をラプラス変換対により計算することができる.微分方程式をラプラス変換により計算することができない.
評価項目2微分方程式で表されるシステムの応答を畳み込みおよびラプラス変換により求めることができ, その概念について説明できる.微分方程式で表されるシステムの応答を計算することができる.微分方程式で表されるシステムの応答を計算することができない.
評価項目3システムの極の振る舞いと応答の関係について説明でき, 所望の応答を求めるために極に基づいたシステム設計の計算ができる.システムの極の振る舞いと応答の関係を理解し, その特性について説明できる.システムの極の振る舞いと応答の関係を説明できない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
制御技術は家電製品,自動車,航空機など身の回りの製品に広く利用されている.この横断的な学問である制御工学について本講義で学ぶ.とくにその根幹をなすフィードバック制御について,周波数応答を基本とした古典制御理論の見地から理解するとともに,安定解析法や制御系設計法などを習得する.また,本講義では,古典制御理論を理解する上で必要不可欠なラプラス変換の利用法についても習得する.
授業の進め方・方法:
・すべての授業内容は,学習・教育到達目標(B)<専門>およびJABEE基準1(2)(d)(2)a)に対応する.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>授業計画の「到達目標」を網羅した問題を1回の中間試験,2回の定期試験およびレポート課題で出題し,目標の達成度を評価する.達成度評価における各「知識・能力」の重みは概ね均等とする.合計点の60%の得点で,目標の達成を確認できるレベルの試験を課す.
<学業成績の評価方法および評価基準>前期末・後期中間・学年末の計4回にわたる試験の成績の平均点を60%,提出されたレポートの成績を40%として評価する.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>複素数,微分・積分について理解していることを期待する.これらの内容は,2年生で開講された「線形代数Ⅰ」,「微分積分I」で教授されている.本教科は電気回路論,電子機器学の学習が基礎となる教科である.
<備考>4年生で同時に開講されている「応用数学」にてフーリエ級数・フーリエ変換について学ぶ.これらは周波数応答の理解に必須であるので,十分に理解しておくことが必要である.また,同学年で開講されている「電気回路論」では,過渡応答の計算にラプラス変換を用いるため,本講義でしっかりと理解しておくことが重要である.なお,理解の助けとなるよう,適宜レポートを課す.本教科は5年生で開講される「電子制御工学」と強く関連している.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 制御とは 1. 制御と微分方程式とのつながりを理解できる.
2週 システムの数学モデル(1):静的システム,動的システム 2. 静的システムと動的システムの違いを理解できる.
3週 システムの数学モデル(2):直流モータのモデル 3. 電気系・機械系のモデルを作ることができる.
4週 ラプラス変換(1): 定義 4. ラプラス変換の基本的性質を理解できる.
5週 ラプラス変換(2): 基本的性質 5. 基本的な関数についてそのラプラス変換を計算できる.
6週 ラプラス変換(3): 基本的性質,最終値定理 6. 最終値定理を用いた定常値の計算ができる.
7週 ラプラス変換(4): 逆ラプラス変換 7. 基本的な関数について変換対を利子用して逆ラプラス変換を行うことができる.
8週 ラプラス変換の応用(1): 微分方程式への応用 8. ラプラス変換により微分方程式を解くことができる.
2ndQ
9週 ラプラス変換の応用(2):たたみこみ,伝達関数とデルタ関数 9. たたみこみ, デルタ関数の性質を説明できる.
10週 伝達関数の役割 10. 伝達関数からブロック線図を描くことができ,ブロック線図から伝達関数を求めることができる.
11週 動的システムの応答: インパルス応答とステップ応答 11. 動的システムのインパルス応答・ステップ応答を求めることができる.
12週 システムの応答特性 12. システムの応答特性を特徴づけるパラメータを理解できる.
13週 2次遅れ系の応答(1): インパルス応答 13.システムの応答特性を特徴づけるパラメータを理解できる.
14週 2次遅れ系の応答(2): ステップ応答 14. 二次遅れ系のインパルス応答・ステップ応答を理解することができて,それらを特徴づけるパラメータを理解できる.
15週 2次遅れ系の応答(3): ステップ応答 15. 二次遅れ系のインパルス応答・ステップ応答を理解することができて,それらを特徴づけるパラメータを理解できる.
16週
後期
3rdQ
1週 極とシステムの応答 16. 極の概念を理解できており,極が過渡応答,定常特性に及ぼす影響を理解できる.
2週 極と安定性 17.. 伝達関数が与えられたとき,その極から安定性を調べることができる.
3週 制御系の構成とその安定性(1):コントローラを設計するとは,制御系の安定性 18. フィードバック・フィードフォワード制御系の安定性を調べることができる.
4週 制御系の構成とその安定性(2):制御系の設計 19. フィードバック・フィードフォワード制御系の安定性を考慮した制御系の設計法について説明できる.
5週 PID制御(1):コントローラの例 20.. フィードフォワード制御とフィードバック制御の特徴を理解できる.
6週 PID制御(2):コントローラの設計パラメータの値と制御系の極の関係 21. フィードバック制御系が目標値に追従するため備えるべき性質とは何か理解できる.
7週 フィードバック制御系の定常特性 22. フィードバック制御系の定常値や収束特性と極の関係について説明できる.
8週 後期中間試験 23. これまでに学習した内容を説明し, 基本的な制御系の設計および応答を求める計算できる.
4thQ
9週 周波数特性の解析(1): 周波数応答とは,周波数特性とは 24. システムの周波数特性とは何か理解できる.
10週 周波数特性の解析(2): 基本要素の周波数特性 25. PIDの各要素の周波数特性について説明できる.
11週 ボード線図の特性と周波数伝達関数(1):ボード線図の合成 26. ボード線図とは何か理解できており,ボード線図から情報を読み取ることができ,伝達関数からボード線図の概形を描くことができる.
12週 ボード線図の特性と周波数伝達関数(2):共振が起こる2次遅れ系のボード線図,バンド幅とステップ応答の関係 27. 周波数特性に関し, 帯域幅の考え方について説明できる.
13週 ボード線図の特性と周波数伝達関数(3):周波数伝達関数,ベクトル軌跡 28. ベクトル軌跡を用いた周波数特性の評価方について説明できる.
14週 ナイキストの安定判別法(1):フィードバック制御系の安定性,ナイキストの安定判別法 29. ナイキストの安定判別法を用いることで制御系の安定性を判別できる.
15週 ナイキストの安定判別法(2):簡略化されたナイキストの安定判別法,安定余裕 30. 簡略化ナイキストの安定判別法を用いることで制御系の安定性を判別できる.
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野制御伝達関数を用いたシステムの入出力表現ができる。4
ブロック線図を用いてシステムを表現することができる。4
システムの過渡特性について、ステップ応答を用いて説明できる。4
システムの定常特性について、定常偏差を用いて説明できる。4
システムの周波数特性について、ボード線図を用いて説明できる。4
フィードバックシステムの安定判別法について説明できる。4

評価割合

試験課題小テスト態度発表その他合計
総合評価割合60400000100
配点60400000100