分析化学

科目基礎情報

学校	鈴鹿工業高等専門学校	開講年度	令和03年度 (2021年度)
授業科目	分析化学
科目番号	0030	科目区分	専門 / 必修
授業形態	授業	単位の種別と単位数	履修単位: 2
開設学科	生物応用化学科	対象学年	2
開設期	通年	週時間数	2
教科書/教材	「基礎からわかる分析化学」加藤正直・塚原聡（森北出版株式会社）, 「基礎からわかる機器分析」加藤正直・鈴木秋弘（森北出版株式会社）, 配布授業用プリント
担当教員	甲斐 穂高

到達目標

分析化学に関する基本的事項を理解し，酸塩基と中和滴定，沈殿生成と沈殿滴定，錯体生成とキレート滴定，酸化還元と酸化還元滴定に関する分析化学についての基礎的な知識を習得し，実試料を分析する際に活かすことができる．

ルーブリック

	理想的な到達レベルの目安	標準的な到達レベルの目安	未到達レベルの目安
評価項目１	酸や塩基の水中での反応式や平衡式が書けて、pHや化学種の濃度を計算するための公式を自ら導出したうえで求めることができる.	酸や塩基の水中での反応式や平衡式が書けて，pHや化学種の濃度を計算できる．	酸や塩基の水中での反応式や平衡式が書けず，pHや化学種の濃度を計算できない．
評価項目2	分別沈殿の可否を説明でき，分別沈殿の範囲を計算で求めることができる．	沈殿が発生するときの条件が説明でき，沈殿発生後の金属イオンの濃度を求めることができる．	沈殿が発生するときの条件を説明できない．
評価項目3	沈殿が錯体として溶解した際の溶液中の化学種の濃度を求めることができる．	錯体生成時の平衡反応を説明でき，遊離金属イオンの濃度を求めることができる．	錯体生成時の平衡反応を説明できず，遊離金属イオンの濃度を求めることができない．
評価項目4	酸化還元平衡反応と酸化還元平衡定数から，溶液中の化学種の濃度を求めることができる．	電池をモデルにした酸化還元反応が説明でき，ネルンストの式を用いて起電力を計算できる．	電池をモデルにした酸化還元反応が説明できない．
評価項目5	それぞれの滴定の原理を説明でき，滴定による未知試料の濃度を計算できる．	滴定による未知試料の濃度を計算できる．	滴定による未知試料の濃度を計算できない．
評価項目6	溶媒平衡や分配に関する説明ができ,その説明をもとにした分配に関する計算ができる	溶媒平衡や分配に関計算ができる	溶媒平衡や分配に関する説明や計算ができない
評価項目7	光に関する物理的または化学的な性質を説明でき，どのような分析技術に利用されているか説明できる	光に関する物理的または化学的な性質を説明できる	光に関する物理的または化学的な性質を説明できない
評価項目8	イオン交換に関する説明ができ，イオン交換に関する計算を行うことができる	イオン交換に関する説明ができる	イオン交換に関する説明ができない

教育方法等

概要:

分析化学とは，元素や化合物の化学的，物理的な性質を利用して，目的とする物質を測定する方法であり，ここで学習する基礎的な「分析化学」と，分析機器を使用した「機器分析化学」に大別される．「分析化学」では，化学における分析化学の位置づけを明らかにするとともに，酸と塩基，錯体生成，酸化還元，沈殿生成を利用した分析技術に関する理論的な知識の修得をめざす．また,「機器分析化学」の導入部分である光分析の基礎知識の習得をめざす.

授業の進め方・方法:

学習内容は，すべて学習・教育到達目標(Ｂ)<基礎>に対応する．
授業は講義とグループ学習を併用した形式で行う．講義は集中して聴講し，グループ学習では与えられた課題を積極的に取り組むこと．
「授業計画」における各週の「到達目標」は，この授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする．
授業内容の一部は,分析化学実験の内容と重複しており,これについても試験に出題する内容に関連している.

注意点:

＜到達目標の評価方法と基準＞
この授業で習得する「知識・能力」において示されている『３１』の到達目標について，理論的な考え方，及びそれを利用した計算問題ができるようになること．これらについて定期試験で確認を行う．各到達目標に関する重みづけは同じである．
＜学業成績の評価方法および評価基準＞
１．前期中間試験と前期末試験の得点の平均点を前期の最終成績とする.同様に,後期中間試験と学年末試験の得点の平均点後期の最終成績とする. これら前期最終成績と後期最終成績の平均を学業成績評価点とし,学業成績評価点が60点以上であれば単位認定とする.
２．再試験は実施しない．定期試験を無断欠席した場合（試験開始時までに担任等への欠席の連絡がない場合）も同様である.

＜単位修得要件＞
学業成績評価点が６０点以上であること．
＜あらかじめ要求される基礎知識の範囲＞
１年生時に学んだ化学の内容
＜レポート等＞
レポートは課さない．授業の状況に応じて補習（参加は任意）を実施する場合がある．
＜備考＞
授業では関数電卓を忘れないこと．本科目，３年生以降で履修する無機化学，物理化学，機器分析化学，環境分析化学，生物応用化学実験の基礎知識や技術を学ぶものである．あらかじめ配布されるプリント類で予習を行ってから授業に臨むこと．

授業計画

		週	授業内容	週ごとの到達目標
前期
	1stQ
		1週	授業の進め方 分析化学とは？ 科学者になるために！	分析化学で学ぶ内容と授業の進め方を理解する．
		2週	酸と塩基（１）	１．アレニウスの定義, ブレンステッドの定義，平衡反応, 酸解離定数， 電荷均衡，質量均衡が説明でき, 弱酸のpHを求めることができる．
		3週	酸と塩基（２）	２．弱酸と弱塩基のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		4週	酸と塩基（３）	３．弱酸塩と弱塩基塩のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		5週	酸と塩基（４）	４．緩衝液のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		6週	酸と塩基（５）	５．多塩基弱酸のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		7週	酸と塩基（６）	６．多塩基弱酸塩のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		8週	前期中間試験	これまでに学習した内容をもとに，酸や塩基の水溶液の性質等を説明できる．
	2ndQ
		9週	前期中間試験の解説	これまでに学習した内容をもとに，酸や塩基の水溶液の性質等を説明できる．
		10週	酸と塩基（７）	７．多塩基弱酸塩の緩衝液のpHを求める公式の証明ができ,実際にpHを求めることができる．
		11週	酸と塩基（８）	８．規定度の概念と中和滴定の原理を理解したうえで,未知試料の濃度を求めることができる．
		12週	沈殿平衡と分別沈殿（１）	９．沈殿平衡と溶解度積の関係から,沈殿発生の条件を説明することができる． １０．物質が完全に沈殿する条件を説明することができ,実際にこれを計算することができる．
		13週	沈殿平衡と分別沈殿（２）	１０．分別沈殿の条件や範囲を説明することができ,実際のこれを計算することができる．
		14週	沈殿平衡と分別沈殿（３）	１１．硫化物や水酸化物の分別沈殿の条件や範囲を求めることができる．
		15週	沈殿平衡と分別沈殿（４）	１２．１属の定性分析を説明することができる． １３．これまでに学習した内容をもとに、酸や塩基の水溶液の性質，沈殿の発生条件を説明できる．
		16週
後期
	3rdQ
		1週	前期末試験の解答と解説 錯生成平衡（１）	１４．錯体（錯イオン）の定義を説明できる
		2週	錯生成平衡（２）	１５．錯生成平衡,錯逐次反応,錯生成定数,錯逐次定数が説明できる．
		3週	錯生成平衡（３）	１６．錯体を形成しない遊離金属イオンの濃度を計算できる． １７．沈殿が錯体（錯イオン）として溶解する条件を説明でき,実際にこれを計算できる．
		4週	酸化還元平衡（１）	１８．酸化，還元，半反応，電位，電位差，標準水素電極の説明ができる
		5週	酸化還元平衡（２）	１９．ネルンストの式を用いて電池の起電力を求めることができる．
		6週	酸化還元平衡（３）	２０．酸化還元平衡定数を用いて電池の金属イオン濃度を求めることができる． ２１．電子を伴う様々な酸化還元反応の電位を求めることができる． ２２．様々な電池の種類と反応を説明できる.
		7週	酸化還元平衡（４）	２３．酸化剤と還元剤が反応した時の酸化還元反応をつくることができる.
		8週	後期中間試験	これまでに学習した内容をもとに，沈殿の発生条件や錯体の生成条件を説明できる．
	4thQ
		9週	後期中間試験の解説	これまでに学習した内容をもとに，沈殿の発生条件や錯体の生成条件を説明できる．
		10週	イオン交換	２４．イオン交換の性質や特徴を説明することができる．
		11週	溶媒平衡	２５．溶媒平衡,分配係数を説明できる.
		12週	光分析の基礎	２６．光の性質や種類、特徴を利用した分析技術を説明することができる． ２７．機器分析と化学分析の違いを説明できる．
		13週	紫外可視吸光光度分析（１）	２８．ランバートベールに関する光分析の基礎知識を説明できる．
		14週	紫外可視吸光光度分析（２）	２９．検量線の概念を説明できる． ３０．検量線を使って未知試料の定量ができる．
		15週	原子吸光分析	３１．原子吸光分析の原理を説明できる．
		16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類		分野	学習内容	学習内容の到達目標	到達レベル	授業週
専門的能力	分野別の専門工学	化学・生物系分野	分析化学	いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。	4
				電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。	4
				溶解度・溶解度積について理解し必要な計算ができる。	4
				沈殿による物質の分離方法について理解し、化学量論から沈殿量の計算ができる。	4
				強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。	4
				強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。	4
				緩衝溶液とpHの関係について説明できる。	4
				錯体の生成について説明できる。	4
				陽イオンや陰イオンの関係した化学反応について理解し、溶液中の物質の濃度計算(定量計算)ができる。	4
				中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。	4
				酸化還元滴定についての原理を理解し、酸化剤及び還元剤の濃度計算ができる。	4
				キレート滴定についての原理を理解し、金属イオンの濃度計算ができる。	4
				光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。	2
				Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。	2
				イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。	4
				溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。	4

評価割合

	試験	課題	相互評価	態度	発表	その他	合計
総合評価割合	100	0	0	0	0	0	100
配点	100	0	0	0	0	0	100