有機化学

科目基礎情報

学校 鈴鹿工業高等専門学校 開講年度 2018
授業科目 有機化学
科目番号 0049 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生物応用化学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「マクマリー有機化学概説」  J. McMurry ・E. Simanek著 伊東椒 ・児玉三明 訳(東京化学同人)および配付資料参考書:「有機化学」 奥山 格 監修(丸善) 「マクマリー有機化学」 J. McMurry ・E. Simanek著 伊東椒 ・児玉三明 訳(東京化学同人) 
担当教員 高倉 克人

到達目標

有機化合物の基本的な命名,立体化学及び物理化学的性質,ハロゲン化物,カルボニル化合物,カルボン酸とその誘導体,アミンに関する基本的な化学反応とその機構を理解し,全般的な有機反応の生成物について予想することができる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1右記標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,複数の特性基,不飽和結合,環構造,不斉炭素を含む有機化合物を命できる.CIP則を理解し,比較的簡単な構造をもつ有機化合物の命名に適用することができる.特性基の数がを1未満の直鎖化合物の命名をできない.
評価項目2標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,基質の構造や求核試薬の性質,溶媒の極性が有機ハロゲン化物の反応様式や立体化学に及ぼす影響について説明できる.脂肪族ハロゲン化物および芳香族ハロゲン化物の求核置換反応,脂肪族ハロゲン化物の脱離反応の機構を説明できる.有機ハロゲン化物の求核置換反応,脱離反応の反応形式を記述できない.
評価項目3右記標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,指定された出発物から生成物を得るための方法を有機反応機構に基づいて説明することができる.アルデヒド・ケトンへの求核付加反応およびエノール・エノラートイオンを経る有機化学反応の反応機構に基づき,指定された出発物と反応条件から主生成物の構造を予測できる.アルデヒド・ケトンの合成反応,アルデヒド・ケトンへの求核付加反応およびエノール・エノラートイオンを経る有機化学反応の反応形式を記述できない.
評価項目4右記標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,指定された出発物から生成物を得るための方法を有機反応機構に基づいて説明することができる.カルボン酸・カルボン酸誘導体の合成反応,カルボン酸・カルボン酸誘導体のアシル置換反応の反応機構に基づき,指定された出発物と反応条件から主生成物の構造を予測できる.カルボン酸・カルボン酸誘導体の合成反応,カルボン酸・カルボン酸誘導体のアシル置換反応の反応形式を記述できない.
評価項目5右記標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,指定された出発物から生成物を得るための方法を有機反応機構に基づいて説明することができる.アミンの合成反応,アミンを出発物とする有機化学反応の反応機構に基づき,指定された出発物と反応条件から主生成物の構造を予測できる.アミンの合成反応,アミンを出発物とする有機化学反応の反応形式を記述できない.
評価項目6右記標準的な到達レベルの目安を達成したうえで,指定された出発物から生成物を得るための方法を有機反応機構に基づいて説明することができる.アルコール・エーテルの合成反応,アルコール・エーテルを出発物とする有機化学反応の反応機構に基づき,指定された出発物と反応条件から主生成物の構造を予測できる.アルコール・エーテルの合成反応,アルコール・エーテルを出発物とする有機化学反応の反応形式を記述できない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 有機化学は天然物や人工的に合成された物質の多数をしめる有機化合物(炭素原子により基本骨格が形成されている化合物)の構造と性質を扱う学問である.本科目では,有機化合物の命名法,基本的な有機化合物であるハロアルカン,アルデヒド,ケトン,カルボン酸およびその誘導体,アミンの構造,性質,化学反応,工業製品や生体物質との関連についての知識を習得する.
授業の進め方・方法:
・すべての授業内容は,「生物応用化学科」学習・教育到達目標 (B)<基礎>(JABEE基準1(2)(c))に相当する.
・授業は講義・演習形式で行う.講義中は,集中して聴講する.
・「授業計画」における各週の「達成目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>下記授業計画の達成目標1~23を網羅した問題を前期中間試験,前期期末試験,後期中間試験,学年末試験,小テスト,課題レポートで出題し,目標の達成度を評価する.合計点の60%の得点で,目標の達成を確認できるレベルの試験,課題を課す.
<学業成績の評価方法および評価基準>前学業成績=0.8×(中間・定期試験の平均点) + 0.2×(小テスト・レポートの平均点).
ただし,中間・前期末試験の成績が35点以上60点未満だった学生のうち,希望者に対しては各試験につき1回だけ再試験を行い,満点の6割以上を得点した場合は,対応する試験の得点を(再試験の満点x 0.6)に差し替えて成績を算出する.また再試験の得点が満点の6割に満たない場合も,本試験より高得点であれば再試験の得点に差し替えて成績を算出する.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本科目は,第2年次に履修する「有機化学」の学習が基礎となる科目である.
<レポート等> 理解を深めるために小テスト,レポートを適宜課す.
<備考>本科目は4年次に履修する「精密合成化学」「高分子化学」,5年次に履修する「有機工業化学」「機能材料工学」,専攻科1年次に履修する「有機化学特論」を理解する上での基礎となる内容を多く含むので,長期的な視野を持って授業に臨んでほしい.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 枝分かれ構造,環状構造,不飽和結合を含む炭化水素のIUPAC命名法 1.有機化合物のIUPAC法による命名と簡単な化合物の慣用名による命名ができる.
2週 複数の特性基を含む有機化合物のIUPAC命名法 1.有機化合物のIUPAC法による命名と簡単な化合物の慣用名による命名ができる.
3週 立体異性体 - エナンチオマー 2.鏡像異性体,ジアステレオマー(シス/トランス異性体を含む)の定義を理解し,立体化学に関して、その表記法・命名法により正しく表示できる。
4週 立体異性 - ジアステレオマー 2.鏡像異性体,ジアステレオマー(シス/トランス異性体を含む)の定義を理解し,立体化学に関して、その表記法・命名法により正しく表示できる。
5週 立体異性,演習 3.Newman投影式とFischer投影式を駆使して,分子の三次元的な構造がイメージできる.
6週 巻矢印を用いた有機反応機構の記述 4.電子対や不対電子の動きを示す巻矢印を用いた有機反応機構の記述法を理解できる.
7週 有機ハロゲン化合物の性質と合成 5.有機ハロゲン化合物の性質と合成反応およびその反応機構について説明できる.
8週 中間試験 1~6週で学習した内容を説明しできる.
2ndQ
9週 有機ハロゲン化合物の求核置換反応 - SN2反応, SN1反応, 6.脂肪族有機ハロゲン化合物の求核置換反応を分類し,反応機構や溶媒効果について説明できる.
10週 有機ハロゲン化合物の求核置換反応 - 芳香族求核置換反応 7.芳香族有機ハロゲン化合物の求核置換反応を分類し,反応機構について説明できる.
11週 有機ハロゲン化合物の脱離反応 - E2脱離- 8.有機ハロゲン化合物の脱離反応を分類し,反応機構について説明できる.
12週 有機ハロゲン化合物の脱離反応 - E1脱離- 8.有機ハロゲン化合物の脱離反応を分類し,反応機構について説明できる.
13週 有機ハロゲン化合物の求核置換反応 と脱離反応の競争 9.有機ハロゲン化物の構造と求核置換あるいは脱離反応の主生成物との関係について有機電子論の立場から説明できる.
14週 アルデヒド・ケトンの性質と合成 10.アルデヒド・ケトンの性質と合成反応およびその反応機構について説明できる.
15週 アルデヒド・ケトンの求核付加反応 -水和,アセタール化- 11.アルデヒド・ケトンの求核付加応および反応機構について説明できる.
16週
後期
3rdQ
1週 アルデヒド・ケトンの求核付加反応 - 有機金属試薬の付加,,シアノヒドリンの生成,窒素系求核試薬の付加,ヒドリド還元 - 11.アルデヒド・ケトンへ求核付加応および反応機構について説明できる.
2週 エノール・エノラートを経由するアルデヒド・ケトンの反応 -ハロゲン化,アルキル化,アルドール反応- 12.エノール,エノラートイオンを中間体とするカルボニル化合物の反応および反応機構について説明できる.
3週 アルデヒド・ケトンを出発物とする種々の反応 -酸化反応,脱カルボニル還元反応,Wittig反応,エナミンを経由するα-アルキル化反応- 13.カルボニル化合物を出発物とする種々の反応およびその反応機構について説明できる。
4週 アルデヒド・ケトンの反応,演習 14.カルボニル化合物を経る種々の反応生成物を予想することができる.
5週 カルボン酸の物理的性質,酸性度 15.カルボン酸の性質,構造と酸性度の関係について説明できる.
6週 カルボン酸の合成 16.カルボン酸の合成反応およびその反応機構について説明できる.
7週 カルボン酸の反応 17.カルボン酸を経る種々の反応およびその反応機構を説明できる.
8週 中間試験 前期14,15週および後期1~7週で学習した内容を説明できる.
4thQ
9週 カルボン酸エステル,カルボン酸アミドの合成と反応 18.カルボン酸エステルやカルボン酸アミドの合成反応,これらを出発物とする種々の反応およびその反応機構について説明できる。
10週 カルボン酸無水物,カルボン酸ハロゲン化物の合成と反応 19.カルボン酸無水物やカルボン酸ハロゲン化物の合成反応,これらを出発物とする種々の反応およびその反応機構について説明できる。
11週 アミンの性質と合成 20.アミンの物理的性質,塩基制度と構造との関係,合成反応について説明できる.
12週 アミンの反応 21.アミンを経る種々の反応およびその反応機構を説明できる.
13週 カルボン酸,カルボン酸誘導体ならびにアミン,演習 9~12週で学習した内容に関する複合的な問いに対しても説明できる.
14週 アルコールおよびエーテルの性質と合成 22.アルコールおよびエーテルの物理的性質,塩基制度と構造との関係,合成反応について説明できる.
15週 アルコールおよびエーテルの反応 22.アルコールおよびエーテルの反応およびその反応機構について説明できる.
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。4
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。4
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。4
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4

評価割合

試験小テスト・課題相互評価態度発表その他合計
総合評価割合80200000100
配点80200000100