反応速度論・量子化学における基本的な考え方を理解し,物性値からの反応速度に関する各種パラメータの算出,複雑な反応機構の解析による速度式の導出,簡単な原子・分子軌道計算に応用できる.
概要:
物理化学は物理学的な手法を用いて化学物質の構造と性質を解明する学問である.本科目では,化学反応の基本的データの一つである反応速度について基礎から考え方と理論を理解して,反応速度則の予測や反応機構の解明法を習得するとともに,量子化学について単純で平易な例を用いて基礎から理論を理解し,化学結合や化合物の反応性を電子レベルの立場から理解,予測する方法を習得する.
授業の進め方・方法:
・すべての授業内容は,「生物応用化学科」学習・教育到達目標 (B)<専門>に相当する.
・授業は講義・演習形式で行う.講義中は,集中して聴講する.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>下記授業計画の達成目標1~26を網羅した問題を前期中間試験,前期期末試験,後期中間試験,学年末試験,小テスト,課題レポートで出題し,目標の達成度を評価する.合計点の60%の得点で,目標の達成を確認できるレベルの試験,課題を課す.
<学業成績の評価方法および評価基準>学業成績=0.8×(中間・定期試験の平均点) + 0.2×(小テスト・レポートの平均点) として学業成績を算出する.
ただし,中間・定期試験の得点が60点未満だった学生のうち,希望者に対しては各試験につき1回だけ再試験を行い,満点の6割以上を得点した場合は,対応する試験の得点を(再試験の満点x 0.6)に差し替えて成績を算出する.また再試験の得点が満点の6割に満たない場合も,本試験より高得点であれば再試験の得点に差し替えて成績を算出する.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本科目は,第2年次に履修する「微分積分I」,第2年次に履修する「化学」,ならびに第3年次に履修する「物理化学Ⅰ」の学習が基礎となる科目である.
<レポート等> 理解を深めるために小テスト,レポートを適宜課す.
<備考>授業に出てくる数式を暗記するのではなく,数式が導き出される過程や根拠を理解することが望ましい.記述式の試験問題を解答する際には明快な文章を用いて解答を作成できることが望ましい.本科目は5年次に履修する「界面化学」を理解する上での基礎となる内容を多く含むので,長期的な視野を持って授業に臨んでほしい.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
反応速度の定義と表し方 -反応速度定数,反応次数- |
1.反応速度論の基礎的な考えに含まれる用語を説明できる.
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2週 |
反応系の熱力学 |
2.反応系の熱力学を理解し, 熱力学的パラメータから化学反応の進む向きを導き出せる.
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3週 |
速度式の決定 -n次反応速度式-
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3.微分式と積分式を相互に変換して反応物濃度の時間変化を示す式を導出し,これに基づく反応次数,速度定数の決定方法を説明・利用できる.
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4週 |
速度式の決定 -半減期法,C14年代測定- |
4.反応次数と半減期の関係を理解し,半減期に基づく反応次数,速度定数の決定・利用およびC14年代測定に関する計算ができる.
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5週 |
速度式の決定 -分離法(擬1次速度式法,半減期法)- |
5.分離法の考え方を理解し,これを用いた反応次数・速度定数を決定する種々の方法を説明・利用できる.
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6週 |
速度式の決定 -分離法(初速度法)- |
5.分離法の考え方を理解し,これを用いた反応次数・速度定数を決定する種々の方法を説明・利用できる.
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7週 |
速度式の決定,演習 |
6.データ処理によって物性値から反応次数,速度定数等の反応速度論に関する種々のパラメータを算出できる.
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8週 |
反応速度の温度依存性 |
7.アレニウス式の意味を理解し,アレニウスプロットにより活性化エネルギーと頻度因子を計算できる.
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2ndQ |
9週 |
衝突理論を用いた速度定数の計算 |
8.衝突理論よりアレニウスの式を誘導し,数値計算ができる.
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10週 |
遷移状態理論 -アイリングの式の導出とアイリングプロット- |
9.アイリング式を遷移状態理論から導くことができ,アイリングプロットの意味を理解できる.
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11週 |
遷移状態理論 -活性化パラメータの意味 -,演習 |
10.アイリングプロットから活性化パラメータを求め,これらの値より遷移状態の大まかな構造を推定できる.
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12週 |
反応系の理論 -律速段階,定常状態近似, 前駆平衡-
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11.定常状態近似および前駆平衡(律速段階近似)の考え方を理解し,化学反応の解釈へ適用できる.
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13週 |
反応系の理論 -逐次反応と併発反応- |
12.逐次反応(連続反応),可逆反応,の反応経路を理解し,定常状態近似や前駆平衡近似により速度式を導出できる.
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14週 |
反応系の理論 -可逆反応- |
13.可逆反応の緩和速度式の導出を理解し,緩和時間の値より速度定数を求められる.
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15週 |
反応系の理論,演習 |
12~14週で学習した内容に関する複合的な問いに対しても説明できる.
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16週 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
気相反応 -連鎖反応と爆発反応- |
14.定常状態法を複雑な反応(ラジカル連鎖反応など)へ適用し,速度式や連鎖長を導出できる.
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2週 |
溶液反応 -溶媒効果,イオン強度と速度定数の関係- |
15.溶液反応の反応速度に対する溶媒効果および,イオン反応におけるイオン強度と速度定数の関係を説明できる.
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3週 |
触媒反応 -触媒反応の速度論- |
16.触媒を含む反応経路に対して速度式を導出できる.
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4週 |
触媒反応 -酵素反応- |
17.酵素反応について,ラインウィーバー・バークプロットによるミカエリス定数や最大速度の算出,阻害機構の決定ができる.
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5週 |
固相反応 -Langmuirの吸着等温式,種々の固相反応経路における速度式の導出- |
18.固体表面への気体の吸着/脱着や固体表面で起こる化学反応についての関係式を導出し,反応速度の圧力依存性について説明できる.
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6週 |
重合反応 -連鎖重合,逐次重合- |
19.連鎖重合,逐次重合のそれぞれについて速度式,重合度を表す式を導出できる.
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7週 |
前期量子論 -ボーアの量子条件,ド・ブロイの式- |
20.ボーアの水素モデルやド・ブロイ波の式にもとづいて量子条件を説明できる.
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8週 |
中間試験 |
1~6週で学習した内容を説明できる.
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4thQ |
9週 |
シュレーディンガー方程式 -方程式の立て方- |
21.ハミルトニアンの意味を理解し,ごく単純な原子,分子についてシュレーディンガー方程式を記述できる.
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10週 |
1次元の箱の中の粒子 |
22.1次元の箱の中の粒子についての1次元シュレーディンガー方程式を解き,波動関数の規格化,エネルギーの量子化,直交条件について説明できる.
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11週 |
水素様原子 |
23.水素様原子について3次元極座標表示によるシュレーディンガー方程式を立てられ,種々の量子数,動径関数,球面調和関数の意味と電子密度の分布について説明できる.
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12週 |
分子軌道 -原子軌道の相互作用,フント則,パウリの排他原理- |
24.等核2原子分子の分子軌道における原子軌道間相互作用のしかたを理解して分子軌道を記述し,基底状態における電子配置を説明できる.
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13週 |
分子軌道 -変分法,単純ヒュッケル近似- |
25.変分法に基づく永年方程式の解法を理解し,特に単純な有機π電子共役系に対しては単純ヒュッケル近似を用いた波動関数やエネルギー準位を導くことができる.
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14週 |
分子軌道 -フロンティア軌道論- |
26.被占軌道と空軌道およびHOMOとLUMOの意味を説明できる.
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15週 |
分子軌道法,演習 |
12~14週で学習した内容に関する複合的な問いに対しても説明できる.
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 無機化学 | 主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。 | 4 | |
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 4 | |
物理化学 | 年代測定の例として、C14による時代考証ができる。 | 4 | |
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。 | 4 | |
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。 | 4 | |
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。 | 4 | |
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。 | 4 | |
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。 | 4 | |