基礎材料学

科目基礎情報

学校 鈴鹿工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 基礎材料学
科目番号 0042 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 材料工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:ノート講義(プリント資料)参考書:「金属結晶の物理」宮原将平著(アグネ)  「放射線の金属学への応用」辛島誠一著(日本金属学会) 「鉄鋼材料学」 門間改三著 (実教出版)
担当教員

到達目標

種々の材料の分類(有機材料・無機材料・金属材料)ができ,それらを構成している原子の集まり方,結晶構造について基礎的な特徴を理解するとともに,それら原子の配列の仕方を知る基本的な手法,原子が規則正しく並んだことによって生じる物理的現象や機械的性質の変化等を理解するほか,材料の構成元素を変えることによる材料の状態や性質の変化などが理解できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1原子の結合状態や用途、外観などから材料の分類ができ、代表的な材料を挙げることができる原子の結合状態や用途、外観などから材料を分類する方法を知っている原子の結合状態や用途、外観などから材料の分類ができない
評価項目2ミラー指数を用いて結晶の面や方向を表す方法を理解し、それを用いて面や方向を表わしたり、与えられた指数の面や方向を描くことができるミラー指数を用いた結晶の面や方向の表し方を知っているミラー指数を用いた結晶の面や方向の表し方をよく理解していない
評価項目3結晶によるX線の開設現象をよく理解し、それを応用することができる結晶によるX線の開設現象をある程度理解している結晶によるX線の開設現象をよく理解していない
評価項目4置換型や侵入型の固溶体を理解し、結晶の隙間の位置や大きさを計算することができる置換型や侵入型の固溶体の違いを理解し、結晶の隙間の位置や大きさの違いを説明できる置換型や侵入型の固溶体の違いや結晶の隙間の位置、その大きさの違いを説明できない
評価項目52種類の転位を図で描き、結晶の変形における転位のの役割を説明できる2種類の転位の名称を知っており、それぞれを図で描き表わすことができる結晶の変形と転移の役割をよく理解していない
評価項目62元合金の基本的な状態図の見方を理解しており、ミクロ組織と関連付けて説明ができる2元合金の基本的な状態図を知っており、描くことができる2元合金の基本的な状態図をよく理解していない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
この授業では高学年で開講される材料工学に関連した専門科目を習得するのに必要な材料の基礎知識の講義をする.はじめて学ぶ材料工学の入門編となる授業である.この授業を通じて,材料とはどのようなものか,材料を学ぶことの重要性,工学分野における材料の役割やおもしろさについて学ぶとともに,さらに専門性の高まる3年生での専門科目で必要な基礎知識の習得を目的とする.
授業の進め方・方法:
・材料工学科学習・教育目標(B)<専門>に対応
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>この授業で習得する「知識・能力」]1~18の習得の度合を中間試験,期末試験,必要に応じて演習レポート等により評価する.各項目の重みは同じである.試験問題とレポート課題のレベルは,100点法により60点以上の得点を取得した場合に目標を達成したことが確認できるように設定する.
<注意事項>前期末までかけて,材料の構造の基礎を中心に説明する.特に結晶の面や方向を表わすミラー指数は十分に理解すること.以後の授業では,結晶面,方向はすべてそれらの表示方法を使って授業を進める.教科書は使わずに配布資料を用いるので予習の必要はないが,復習はしっかりやること.本教科は後に学習する材料組織学の基礎となる教科である.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>結晶の構造においては3次元空間での結晶の広がりを取り扱うので,3次元座標,基礎的な立体幾何学,特に三角関数は十分理解しておくこと.本教科は,材料工学序論の学習が基礎となる教科である.
<レポート等>授業内容についてより理解を深めるため,できるだけ多くの課題演習を授業に取り入れる.
<学業成績の評価方法および評価基準>求められたすべてのレポートの提出をしていなければならない.中間・期末の2回の試験の平均点を80%,課題を20%で評価する.ただし,中間試験で60点に達しなかったものについては再試験を行い(無断欠席の者を除く),60点を上限として再試験の成績で置き換えるものとする.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 材料の分類法-原子の結合様式の観点からの分類 1. 原子の結合様式,用途,状態によって材料の分類できる.
2週 材料の分類法-用途,状態による分類 上記1
3週 材料(金属を中心として)の結晶構造 2. 純金属の代表的な結晶構造の名称や原子配置を理解している.
4週 結晶格子と単位胞 3. 立方晶について,格子定数と原子間距離(原子半径)の関係を理解している.
5週 結晶格子と単位胞 上記3
6週 ミラー指数による結晶の面と方向の表し方 4. ミラー指数を用いて結晶の面と方向が示せる,または与えられたミラー指数から面と方向が描ける.
7週 ミラー指数による結晶の面と方向の表し方 5. 立方晶におけるミラー指数間の関係を理解している.
8週 前期中間試験 これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
2ndQ
9週 立方晶におけるミラー指数間の関係 6. 立方晶の格子面間隔とミラー指数と格子定数の関係を理解している.
10週 結晶によるX線の回折現象 7. X線の発生原理や性質が説明できる.
11週 実際の結晶によるX線の回折 8. 結晶によるX線の回折現象が説明でき,ブラッグの条件式を理解している.
12週 実際の結晶によるX線の回折 上記8
13週 結晶の格子面間隔と格子定数の求め方 9. X線回折パターンから結晶の格子面間隔,その結晶が体心立方晶か面心立方晶かの判定,格子定数の計算,回折ピークのミラー指数による指数づけができる.
14週 結晶の格子面間隔と格子定数の求め方 上記9
15週 X線を用いた結晶構造解析の演習 上記9
16週
後期
3rdQ
1週 合金の構造-置換型固溶体と規則格子 10. 置換型固溶体,侵入型固溶体について説明できる.
2週 合金の構造-侵入型固溶体と結晶のすきま 上記10
3週 合金の構造-侵入型固溶体と結晶のすきま 11. 結晶格子の隙間の種類と位置や大きさを理解している.
4週 合金の構造-侵入型固溶体と結晶のすきま 上記11
5週 鋼における炭素原子の役割とマルテンサイト変態 12. 鋼を焼き入れすると硬くなる理由を理解している.
6週 合金の成分割合の表し方 13. 合金の濃度を質量%,モル%で表記でき,それらどうしの換算ができる.
7週 材料の変形と構造-応力ひずみ曲線ホール・ペッチの関係 14. 軟鋼の応力-ひずみ曲線が描け,各主要部分の名称が記述できる.
8週 後期中間試験 これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
4thQ
9週 材料の変形と構造-単結晶のすべり変形 15. 結晶の変形の様式と変形機構について説明できる.
10週 材料の変形と構造-刃状転位とらせん転位 16.転位と結晶の変形におけるその役割を理解している.
11週 材料の変形と構造-刃状転位とらせん転位 上記16
12週 合金の平衡状態図-全率固溶型 17. 合金状態図の基本を理解している.
13週 合金の平衡状態図-相律および天秤の法則 上記17
14週 共晶型および包晶型状態図 18. 状態図から合金の冷却曲線を描き,その凝固過程が説明できる.
15週 鉄-炭素系状態図 19. 鉄-炭素系状態図が描け,各主要部の名称が記述できる.
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料物性金属の一般的な性質について説明できる。4
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。4
代表的な結晶構造の原子配置について説明でき、充填率の計算ができる。4
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。2
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。2
ミラー指数を用いて格子方位と格子面を記述できる。4
14種のブラベー格子について説明でき、描くことができる。2
X線回折法を用いて結晶構造の解析に応用することができる。3
金属材料純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。2
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。2
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。2
材料組織点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。2
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。2
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。3
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。2
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。2
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。3
降伏現象ならびに応力-歪み曲線から降伏点を求めることができる。3
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。2
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。2
力学荷重と応力、変形とひずみの関係について理解できる。2
応力-ひずみ曲線について説明できる。2
フックの法則を用いて、縦弾性係数(ヤング率)、応力およびひずみを計算できる。2
引張、圧縮応力(垂直応力)とひずみ、物体の変形量を計算できる。3

評価割合

試験課題相互評価態度発表その他合計
総合評価割合100000000100
配点100000000100