種々の材料の分類(有機材料・無機材料・金属材料)ができ,それらを構成している原子の集まり方,結晶構造について基礎的な特徴を理解するとともに,それら原子の配列の仕方を知る基本的な手法,原子が規則正しく並んだことによって生じる物理的現象や機械的性質の変化等を理解するほか,材料の構成元素を変えることによる材料の状態や性質の変化などが理解できる.
概要:
この授業では高学年で開講される材料工学に関連した専門科目を習得するのに必要な材料の基礎知識の講義をする.はじめて学ぶ材料工学の入門編となる授業である.この授業を通じて,材料とはどのようなものか,材料を学ぶことの重要性,工学分野における材料の役割やおもしろさについて学ぶとともに,さらに専門性の高まる3年生での専門科目で必要な基礎知識の習得を目的とする.
授業の進め方・方法:
・材料工学科学習・教育目標(B)<専門>に対応
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>この授業で習得する「知識・能力」]1~18の習得の度合を中間試験,期末試験,必要に応じて演習レポート等により評価する.各項目の重みは同じである.試験問題とレポート課題のレベルは,100点法により60点以上の得点を取得した場合に目標を達成したことが確認できるように設定する.
<注意事項>前期末までかけて,材料の構造の基礎を中心に説明する.特に結晶の面や方向を表わすミラー指数は十分に理解すること.以後の授業では,結晶面,方向はすべてそれらの表示方法を使って授業を進める.教科書は使わずに配布資料を用いるので予習の必要はないが,復習はしっかりやること.本教科は後に学習する材料組織学の基礎となる教科である.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>結晶の構造においては3次元空間での結晶の広がりを取り扱うので,3次元座標,基礎的な立体幾何学,特に三角関数は十分理解しておくこと.本教科は,材料工学序論の学習が基礎となる教科である.
<レポート等>授業内容についてより理解を深めるため,できるだけ多くの課題演習を授業に取り入れる.
<学業成績の評価方法および評価基準>求められたすべてのレポートの提出をしていなければならない.中間・期末の2回の試験の平均点を80%,課題を20%で評価する.ただし,中間試験で60点に達しなかったものについては再試験を行い(無断欠席の者を除く),60点を上限として再試験の成績で置き換えるものとする.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
材料の分類法-原子の結合様式の観点からの分類 |
1. 原子の結合様式,用途,状態によって材料の分類できる.
|
2週 |
材料の分類法-用途,状態による分類 |
上記1
|
3週 |
材料(金属を中心として)の結晶構造 |
2. 純金属の代表的な結晶構造の名称や原子配置を理解している.
|
4週 |
結晶格子と単位胞 |
3. 立方晶について,格子定数と原子間距離(原子半径)の関係を理解している.
|
5週 |
結晶格子と単位胞 |
上記3
|
6週 |
ミラー指数による結晶の面と方向の表し方 |
4. ミラー指数を用いて結晶の面と方向が示せる,または与えられたミラー指数から面と方向が描ける.
|
7週 |
ミラー指数による結晶の面と方向の表し方 |
5. 立方晶におけるミラー指数間の関係を理解している.
|
8週 |
前期中間試験 |
これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
|
2ndQ |
9週 |
立方晶におけるミラー指数間の関係 |
6. 立方晶の格子面間隔とミラー指数と格子定数の関係を理解している.
|
10週 |
結晶によるX線の回折現象 |
7. X線の発生原理や性質が説明できる.
|
11週 |
実際の結晶によるX線の回折 |
8. 結晶によるX線の回折現象が説明でき,ブラッグの条件式を理解している.
|
12週 |
実際の結晶によるX線の回折 |
上記8
|
13週 |
結晶の格子面間隔と格子定数の求め方 |
9. X線回折パターンから結晶の格子面間隔,その結晶が体心立方晶か面心立方晶かの判定,格子定数の計算,回折ピークのミラー指数による指数づけができる.
|
14週 |
結晶の格子面間隔と格子定数の求め方 |
上記9
|
15週 |
X線を用いた結晶構造解析の演習 |
上記9
|
16週 |
|
|
後期 |
3rdQ |
1週 |
金属材料の基礎 |
10. 金属材料の結晶構造,置換型固溶体,侵入型固溶体について説明できる.
|
2週 |
材料の変形と構造-応力ひずみ曲線とホール・ペッチの関係 |
11. 軟鋼の応力-ひずみ曲線が描け,各主要部分の名称が記述できる.
|
3週 |
材料の変形と構造-硬さと衝撃特性の評価 |
12. 金属材料の硬さ試験,衝撃試験の種類と特徴が説明できる.
|
4週 |
合金の平衡状態図-濃度表示と相律 |
13. 合金の濃度を質量%,モル%で表記でき,それらどうしの換算ができる.
|
5週 |
合金の平衡状態図-天秤の法則および全率固溶型状態図 |
14. 合金状態図の基本を理解している.
|
6週 |
共晶型および包晶型状態図 |
15. 状態図から合金の冷却曲線を描き,その凝固過程が説明できる.
|
7週 |
鉄-炭素系状態図 |
16. 鉄-炭素系状態図が描け,各主要部の名称が記述できる.
|
8週 |
後期中間試験 |
これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
|
4thQ |
9週 |
身のまわりの有機材料 |
プラスチックとはなにか説明できる.身のまわりのプラスチックについて,その分子構造による分類ができる.
|
10週 |
暮らしを変えた有機材料 |
プラスチックの利点を生かし,生活がどのように変化したかを説明できる.
|
11週 |
有機材料の製造法 |
有機材料が原料からどのように製造されているか説明できる.
|
12週 |
いろいろな有機材料の性質 |
軽量,耐薬品性,耐熱性,可燃性・難燃性,透明性などの有機材料の性質を理解している.
|
13週 |
有機材料の分類 |
可燃性,比重,各種溶剤に対する溶解度による分類ができる.
|
14週 |
有機材料の進歩 |
導電性プラスチック,生分解性プラスチック,耐熱性プラスチックの特徴を説明できる.
|
15週 |
プラスチックのリサイクル |
プラスチックのリサイクルの意義とその方法を理解している.
|
16週 |
|
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 材料物性 | 金属の一般的な性質について説明できる。 | 4 | |
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。 | 4 | |
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。 | 2 | |
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。 | 2 | |
ミラー指数を用いて格子方位と格子面を記述できる。 | 4 | |
X線回折法を用いて結晶構造の解析に応用することができる。 | 3 | |
金属材料 | 純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。 | 2 | |
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。 | 2 | |
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。 | 2 | |
材料組織 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 2 | |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 2 | |
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。 | 3 | |
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。 | 2 | |
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。 | 2 | |
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。 | 3 | |
降伏現象ならびに応力-歪み曲線から降伏点を求めることができる。 | 3 | |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 2 | |
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。 | 2 | |
力学 | 荷重と応力、変形とひずみの関係について理解できる。 | 2 | |
応力-ひずみ曲線について説明できる。 | 2 | |
フックの法則を用いて、縦弾性係数(ヤング率)、応力およびひずみを計算できる。 | 2 | |
引張、圧縮応力(垂直応力)とひずみ、物体の変形量を計算できる。 | 3 | |