金属材料の性質を左右する組織を考えるうえで基本となる平衡状態図を鉄鋼材料を例に取り理解し,銅およびその合金,ニッケル及びその合金,コバルト及びその合金,すず,なまり,亜鉛及びその合金の基礎を理解できる.
概要:
金属材料は,無機材料,有機材料と並んで,ものづくりの基本となる材料の種類や基本的な性質を知る学問である.この材料の組織を系統的に調べる学問が,材料組織学である.当科目では,基本である平衡状態図を理解した上で,熱的条件下で材料が示す諸性質の変化の機構についての基礎知識を身につけることを目標とする.また,授業で得た知識を材料に関する身近な問題に適用し,問題を解決する力を身につけることをめざす.
授業の進め方・方法:
・すべての内容は,学習・教育目標(B)<専門>JABEE基準1(1)(d)(2)a)に相当する.
・授業は,講義形式で行われる.適宜演習を行う.講義中は集中して聴講する.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>上記の「知識・能力」1~12を網羅した問題を課題(レポート),中間試験,期末試験で出題し,目標の達成度を評価する.達成度評価における各「知識・能力」の重みは概ね均等とし,評価結果が100点法で60点以上の場合に目標の達成とする.
<学業成績の評価方法および評価基準>中間・期末試験結果の平均点を80%,レポートや小テストを20%で評価する.レポート,小テストはあらかじめLMS(blackboard)上に掲示し,自宅学習により理解を進める.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本科目には材料結晶学,微分積分学Ⅰの習得が必要である.
<自己学習>授業で保証する学習時間と,予習・復習(レポート作成のための学習も含む)に必要な標準的な学習時間の総計が,45時間に相当する学習内容である.
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
この授業の進め方・構造材料としての金属材料 |
授業の進め方が理解できる。構造材料としての金属材料の概念を理解できる。
|
2週 |
結晶構造とミラー指数 |
結晶構造とミラー指数が理解できる。
|
3週 |
格子欠陥 |
点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。
|
4週 |
金属材料の強化機構 |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。
|
5週 |
平衡状態図と金属材料 |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。
|
6週 |
Fe-C系状態図 |
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。
|
7週 |
炭素鋼の熱処理 |
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。
|
8週 |
中間試験 |
これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる。
|
4thQ |
9週 |
恒温変態と連続冷却変態 |
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。
|
10週 |
合金鋼の状態図 |
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。
|
11週 |
合金鋼の種類と性質 |
合金鋼の添加元素と機械的性質に関する知識を利用して、合金鋼の用途を選択できる。
|
12週 |
合金鋼の熱処理 |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。
|
13週 |
合金鋼の熱処理II |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。
|
14週 |
純銅の性質 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。
|
15週 |
銅合金の種類と性質 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。
|
16週 |
回復と再結晶 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 金属材料 | 炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | 後1,後3,後9 |
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。 | 3 | 後10 |
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | 後12,後13 |
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。 | 3 | 後6,後10 |
合金鋼の添加元素と機械的性質に関する知識を利用して、合金鋼の用途を選択できる。 | 3 | 後11 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。 | 4 | 後10 |
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。 | 4 | 後11 |
材料組織 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 4 | |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 4 | 後10 |
面欠陥である積層欠陥について説明できる。 | 4 | |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。 | 4 | 後6,後10 |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 4 | 後6,後10 |
再結晶粒の成長機構を説明できる。 | 4 | 後10,後12 |