材料工学実験

科目基礎情報

学校 鈴鹿工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 材料工学実験
科目番号 0072 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験・実習 単位の種別と単位数 履修単位: 4
開設学科 材料工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 4
教科書/教材 配布資料および作成した材料工学科実験指針
担当教員 下古谷 博司,和田 憲幸,黒田 大介,万谷 義和,河合 里紗

到達目標

化学実験,組織観察,材料試験など材料工学に関する基礎的な事項(専門用語,代表的な実験方法)を実験実習により理解し,実験方法,実験誤差の検討,データ解析法を習得し,理論的なレポートを作成して報告することが出来る.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1化学実験,組織観察,材料試験など材料工学に関する基礎的な事項を実験実習により理解し,応用することができる.化学実験,組織観察,材料試験など材料工学に関する基礎的な事項を実験実習により理解している.化学実験,組織観察,材料試験など材料工学に関する基礎的な事項を実験実習により理解していない.
評価項目2実験方法,実験誤差の検討,データ解析法を習得し,応用することができる.実験方法,実験誤差の検討,データ解析法を習得している.実験方法,実験誤差の検討,データ解析法を習得していない.
評価項目3理論的なレポートを作成し,考察を加えて報告することが出来る.理論的なレポートを作成し,報告することが出来る.理論的なレポートを作成することが出来ない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
材料工学実験全般では実験記録の記入法,報告書のまとめ方,データ整理,誤差,有効数字,化学実験(薬品の取り扱い,ガラス器具の取り扱い,無機および有機化学)ならびに金属材料の特性評価(強度試験,示差熱分析,熱膨張測定,電気抵抗測定)の基礎事項を学び,化学実験では溶液の調整法および評定法,中和滴定法,無機および有機分子の合成と精製法,物質の耐熱,耐アルカリ性の評価,特性,吸収分光法,クロマトグラフィーによる分析,材料特性実験では引張試験,衝撃試験,硬さ試験,ミクロ組織および破面観察法を実際に器具,機器を操作して理解を深め,それらの解析を試みる.
授業の進め方・方法:
・授業内容は,学習・教育到達目標(B)<専門>および<展開>に対応する.
・ガイダンスおよび実験のまとめを除き,クラスを4班に分けて,テーマ(1)~(9)を各1班で同時に行う.そのため,班によって授業計画の週と異なるテーマの週を行う.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>記授業計画の「到達目標」1〜25をレポートの内容により評価する.評価に関する各項目の重みは同じである.各テーマのレポートを100点満点で採点し,以下の3つの要件を満たす場合に目標の達成を確認する.①レポートを期限内に提出すること.②各テーマのレポートの得点が60点以上であること.③全テーマのレポートの平均点が60点以上であること.
<学業成績の評価方法および評価基準>各テーマのレポートを100点満点で採点し,全テーマのレポートの平均点により評価する.他人のレポートの全てあるいは一部を書き写したレポートを提出したことが認められた場合にはレポートを見せた側,写した側共に当該テーマのレポートの得点を0点とする.また,提出期限を過ぎてレポートを提出した場合ならびに未提出のレポートがある場合には当該レポートの得点を0点とする.なお,<到達目標の評価方法と基準>に記載の①~③のすべての要件を満たさない場合には,レポートの提出および再提出により最終成績を60点以上とする場合がある.
<単位修得要件>全ての実験テーマのレポートを提出し,学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本実験は, 材料工学科第3年次までに学習・修得した材料工学実験, 機械工作法, ものづくり実習, 基礎材料学の知識, 技術を基礎とする科目である. これらの既習の事項は,しっかりと復習しておくこと.
<レポートなど>レポートは,各自が所定の書式により,所定の期日までに提出すること.
<備考>(1)配布資料および実験指導書を予めよく読んでおくこと,後期テーマについては(2)作業服(上・下)を着用すること,(3)保護めがねの着用,(4)運動靴等を履く,(5)実験実習安全必携および実験ノートを持参すること,(6)前期,後期のいずれにおいても,欠席および遅刻はしないこと.本実験は, 創造工学, 卒業研究, 応用物質工学実験(専攻科)および特別研究(専攻科)の基礎となる知識・技術を学習・修得する科目である.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス(安全教育) 1. 実験,実習時の安全,安全行動を理解できる.
2週 ガイダンス(実験概要説明) 上記1
3週 (1)化学実験-基礎-
①実験ノート,レポートの書き方
2. 実験記録の記入法や報告書のまとめ方を理解できる.
4週 ②薬品の取り扱い方法と注意事項 3. 薬品の取り扱いの諸注意を理解できる.
5週 ③ガラス器具の使い方と洗浄方法 4. ガラス器具の取り扱いの諸注意を理解できる.
6週 (2)化学実験-分析化学ー
①0.1mol/LのHCl水溶液の調製と評定
5. 酸性溶液の調製と評定法を理解できる.
7週 ②0.1mol/LのNaOH水溶液の調製と評定 6. 塩基性溶液の調製と評定法を理解できる.
8週 ③食酢中の酢酸の中和滴定 7. 中和滴定法を理解できる.
2ndQ
9週 (3)材料特性評価
①示差熱分析
8. 示差熱分析による相変態点の測定法を理解できる.
10週 ②熱膨張測定 9. 熱膨張測定による相変態点の測定法を理解できる.
11週 ③電気抵抗の温度依存性 10. 金属の電気抵抗の温度依存性を理解できる.
12週 (4)光学顕微鏡を用いたミクロ組織観察
①金属材料の研磨
11. 金属材料の組織観察法を理解できる
13週 ②鉄鋼材料の組織観察 12. 鉄鋼材料の組織観察法を理解できる.
14週 ③非鉄金属材料の組織観察 13. 非鉄金属材料の組織観察法を理解できる.
15週 実験のまとめ 上記1~13
16週
後期
3rdQ
1週 ガイダンス(安全教育と実験概要説明) 上記1
2週 (5)熱処理した亜共析鋼の機械的特性評価と破面観察
①静的な機械的特性評価
14. 静的(引張)特性評価に係る一連の工程が理解できる.
3週 ②動的な機械的特性評価 15. 衝撃試験の手順とデータ整理の方法を理解できる.
4週 ③熱処理した亜共析鋼の破面観察 16. 材料試験により得られた破面の観察法を理解できる.
5週 (6)塑性加工と焼きなまし実験
①純鉄の冷間加工と硬さ測定
17. 冷間加工度と硬さの関係から加工硬化現象を説明できる.
6週 ②冷間加工材の焼きなましと硬さ測定 18. 焼きなましと再結晶現象の関係を説明できる.
7週 ③結晶粒径の測定 19. 冷間加工と焼きなましによるミクロ組織の変化を理解できる.
8週 実験のまとめ 上記14~19
4thQ
9週 (7)化学実験-無機化学-
①ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物の合成
20. 無機化合物の合成法とそれに用いる器具の使い方を理解できる.
10週 ②ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物の精製 21. 無機化合物の精製法とそれに用いる器具の使い方を理解できる.
11週 ③ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物の物性評価 22. 無機化合物の耐熱・耐アルカリ性の評価,吸収分光法による分析・評価ができる.
12週 (8)化学実験-有機化学-
①アセトアニリドの合成
23. 有機化合物の合成法とそれに用いる器具の使い方を理解できる.
13週 ②アセトアニリドの精製 24. 有機化合物の精製法とそれに用いる器具の使い方を理解できる.
14週 ③有機化合物の薄層クロマトグラフィー分析 25. 薄層クロマトグラフィー法を利用した評価および分析ができる.
15週 実験のまとめ 上記20~25
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3
専門的能力分野別の専門工学材料系分野金属材料純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。3
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。3
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。3
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。3
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。3
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。3
材料組織線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。4
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。3
降伏現象ならびに応力-歪み曲線から降伏点を求めることができる。3
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。3
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。3
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。3
再結晶粒の成長機構を説明できる。3
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。3
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。3
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。3
力学荷重と応力、変形とひずみの関係について理解できる。3
応力-ひずみ曲線について説明できる。3
フックの法則を用いて、縦弾性係数(ヤング率)、応力およびひずみを計算できる。3
引張、圧縮応力(垂直応力)とひずみ、物体の変形量を計算できる。3
線膨張係数の意味を理解し、熱応力を計算できる。3
分野別の工学実験・実習能力材料系分野【実験・実習能力】材料系【実験実習】実験・実習の目標と心構えを理解し実践できる。4
災害防止と安全確保のためにすべきことを理解し実践できる。4
レポートの書き方を理解し、作成できる。4
ノギスの各部の名称、構造、目盛りの読み方、使い方を理解し計測できる。4
マイクロメータの各部の名称、構造、目盛りの読み方、使い方を理解し計測できる。4
金属材料実験、機械的特性評価試験、化学実験、分析実験、電気工学実験などを行い、実験の準備、実験装置および実験器具の取り扱い、実験結果の整理と考察ができる。4
光学顕微鏡や電子顕微鏡などで材料を観察し、組織について評価することができる。4
硬さ試験機や万能試験機などを用いて、材料の強度特性を評価できる。4
分析機器を用いて、成分などを定量的に評価をすることができる。4
実験の内容をレポートにまとめることができ、口頭での説明またはプレゼンテーションができる。4

評価割合

レポート合計
総合評価割合100100
配点100100