宗教と「こころ」Ⅰ

科目基礎情報

学校 舞鶴工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 宗教と「こころ」Ⅰ
科目番号 0121 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 一般科目 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書:(a)『倫理』検定教科書 (b)『コンプレックス』(岩波新書)(ともに,3年時購入済)/教材 :プリント(配布プリントに沿って授業を進める。)
担当教員 垂谷 茂弘

到達目標

① 生命倫理の諸問題を説明することができる。
② 現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を説明することができる。
③ 心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④ 現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
⑤ 現代思想について理解できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1生命倫理の諸問題を説明することができる。生命倫理の諸問題を理解できる。生命倫理の諸問題を理解できない。
評価項目2現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を説明することができる。現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を理解できる。現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を理解できない。
評価項目3心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。心理学や脳ブームに内蔵する問題点を理解できる。心理学や脳ブームに内蔵する問題点を理解できない。
評価項目4現代社会がかかえる諸問題の現状について十分に理解できる。現代社会がかかえる諸問題の現状のポイントについて理解できる。現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できない。
評価項目5現代思想について理解できる。現代思想のポイントについて理解できる。現代思想について理解できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本講義では,根本テーマとして「癒し」を考察する。それによって,日常生活に存在する矛盾,理不尽から,「いのち」の根元につきまとう「喪失」の苦悩にいたるまで,人間生活全般に及ぶ「cura animarum(魂への配慮,魂の救済,司牧,牧会)」を問うことが可能となる。
In this course, we consider "healing" as a fundamental theme on human nature. The aim is to understand "a cure of souls(Seelsorge)" ranging from unreasonablenesses or contradictions in our daily life to the fundamental question of "loss" in life itself.
授業の進め方・方法:
配布する資料・レジュメに沿って説明する。時事ニュースや日常の出来事に関連づけるべく、現代社会で発生している諸事象・諸問題の時代背景や「近代」を批判する現代思想を説明・解説する。学生諸君の方でも,日々の生活見つめ直し,抱いた疑問を授業にフィードバックさせてほしい。
1.授業のはじめに,前回の授業内容とその日の学習事項・ポイントを確認する。 2.「自己理解」に役立つよう,様々な問題を自分に引きつけて自らの問題として考え講義を受ける。 3.学生各人は,質問に積極的に答えるとともに,自ら積極的に質問し,授業に主体的に参加するように努める。
注意点:
【成績の評価方法・評価基準】 定期試験の成績(60%)と小論文(40%)で評価する。小論文は,前・後期それぞれ,前期中間前,冬休み明けに提出する。 なお,到達目標の各項目について,キーワードを自由に使いこなす思索力を到達度評価の基準とする。
【学生へのメッセージ】 人間精神を巡る科学の展開は錯綜した歴史をもっている。学としての心理学も脳科学もけっして長い歴史をもつわけではない。しかし,現代において,ゲーム的気張らしから深刻な生の意味の喪失や異常にみえる犯罪にいたるまで,幅広い領域で心理学も脳科学も話題にのぼることが多くなった。その勢力範囲の拡大はとどまるところを知らないかのようである。他方,伝統宗教が,文化遺産,観光,法要の一端としてではなく,生誕から死に至るまで,人間生活全般に関わることは少なくなった。各地域の寺社が,その土地,土地の文化共同体の中心であったことは,遠い昔の物語でしかない。本講義で,「癒し」の考察によって,宗教と心理(学)の根元的な相互内在的関係,(文化流行とは区別された)「スピリチュアリティ(霊性)」の意味を考え,伝統宗教衰退と心理学や脳科学流行の背景に,何があるかを探りたい。社会学的,歴史的背景にまで及ぶ幅広い領域を考察するが,つねに自分を取り巻く身近な心理現象と無関係ではないことを念頭に置き,自分自身の身に引きつけて,自分自身の問題として考えていってもらえれば,興味は尽きることはないはずである。

研究室 B棟3階(B-307)
内線電話 8909
e-mail: tarutaniアットマークmaizuru-ct.ac.jp (アットマークは@に変えること。)

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 シラバス内容の説明,導入(「癒し,spirituality」という概念) ①生命倫理の諸問題を説明することができる。
②現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を説明することができる。
2週 WHOのhealth定義改正案,ソンダースの「癒し」の四側面 ①生命倫理の諸問題を説明することができる。
3週 現代の前提としての近代科学・近代社会の成立 ④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
4週 現代の特徴(大衆,疎外) ③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
5週 実存思想(a)本質と実存,キルケゴール ⑤現代思想について理解できる。
6週 実存思想(b)ハイデッガー,サルトル ⑤現代思想について理解できる。
7週 近代批判 フランクフルト学派,レヴィ=ストロース ④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
⑤現代思想について理解できる。
8週 前期中間試験
2ndQ
9週 生命倫理の諸問題(a)(優生思想) ①生命倫理の諸問題を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
10週 生命倫理の諸問題(b)(誕生と死の医療化,"play God") ④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
11週 心理学的人間の誕生と展開(メスメリズムから精神分析・新宗教へ) ②現代社会における既成宗教の衰弱や諸問題を説明することができる。
③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
12週 現代の精神科学状況 導入 - (a)人工知能研究 ③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
13週 (b)進化心理学,生物学的精神医学(DSMと症状中心主義) ③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
14週 (c)正統医学と代替療法(統合療法) ③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
15週 (d)プラシーボ効果を巡る諸問題 ③心理学や脳ブームに内蔵する問題点を説明することができる。
④現代社会がかかえる諸問題の現状について理解できる。
16週 前期期末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を理解し、社会における技術者の役割と責任を説明できる。2前1,前2,前4,前9
技術者を目指す者として、社会での行動規範としての技術者倫理を理解し、問題への適切な対応力(どうのように問題を捉え、考え、行動するか)を身に付けて、課題解決のプロセスを実践できる。1
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。1前3,前4,前7,前9,前10
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。1
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。1
技術史技術史歴史の大きな流れの中で、科学技術が社会に与えた影響を理解し、自らの果たしていく役割や責任を理解できる。1
グローバリゼーション・異文化多文化理解グローバリゼーション・異文化多文化理解世界の歴史、交通・通信の発達から生じる地域間の経済、文化、政治、社会問題を理解し、技術者として、それぞれの国や地域の持続的発展を視野においた、経済的、社会的、環境的な進歩に貢献する資質を持ち、将来技術者の役割、責任と行動について考えることができる。1前1,前11
分野横断的能力汎用的技能汎用的技能汎用的技能事象の本質を要約・整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。1
態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性日常生活の時間管理、健康管理、金銭管理などができる。常に良い状態を維持するための努力を怠らない。1
ストレスやプレッシャーに対し、自分自身をよく知り、解決を試みる行動をとることができる。日常生活の管理ができるとともに、目標達成のために対処することができる。1
学生であっても社会全体を構成している一員としての意識を持って、行動することができる。1
市民として社会の一員であることを理解し、社会に大きなマイナス影響を及ぼす行為を戒める。人間性・教養、モラルなど、社会的・地球的観点から物事を考えることができる。1
法令を理解し遵守する。基本的人権について理解し、他者のおかれている状況を理解することができる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識している。1
未来の多くの可能性から技術の発展と持続的社会の在り方を理解し、自らのキャリアを考えることができる。1

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合60000400100
基礎的能力4000020060
専門的能力0000000
分野横断的能力2000020040