熱力学Ⅰ

科目基礎情報

学校 明石工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 熱力学Ⅰ
科目番号 4427 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 丸茂榮佑・木本恭司:「工業熱力学」,コロナ社出版
担当教員 藤原 誠之

到達目標

工業熱力学の基礎について、以下の理解と計算ができることを目標とする。
(1)熱量と仕事量が計算でき、p-V線図上で理解できる。
(2)熱力学の第一法則の式を理解して諸計算ができる。
(3)完全ガスを作動物質とするサイクルの状態変化と熱効率が計算できる。
(4)カルノーサイクルを理解して完全ガスのエントロピー変化が計算できる。
(5)サイクルのp-V線図をT-S線図に書き換えて、受熱と放熱が理解できる。
(6)エクセルギー損失の計算が出来て、エネルギーの有効利用が理解できる。
(7)熱力学の一般関係式を計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1熱量と仕事量が計算でき、p-V線図上でよく理解できる。熱量と仕事量が計算でき、p-V線図上で理解できる。熱量と仕事量が計算できない。p-V線図上で理解できない。
評価項目2熱力学の第一法則の式を理解して諸計算がよくできる。熱力学の第一法則の式を理解して諸計算ができる。熱力学の第一法則の式を理解して諸計算ができない。
評価項目3完全ガスを作動物質とするサイクルの状態変化と熱効率の計算がよくできる。完全ガスを作動物質とするサイクルの状態変化と熱効率が計算できる。完全ガスを作動物質とするサイクルの状態変化と熱効率が計算できない。
評価項目4カルノーサイクルを理解して完全ガスのエントロピー変化の計算がよくできる。カルノーサイクルを理解して完全ガスのエントロピー変化が計算できる。カルノーサイクルを理解して完全ガスのエントロピー変化が計算できない。
評価項目5サイクルのp-V線図をT-S線図にスムーズに書き換えて、受熱と放熱がよく理解できる。サイクルのp-V線図をT-S線図に書き換えて、受熱と放熱が理解できる。サイクルのp-V線図をT-S線図に書き換えて、受熱と放熱を理解できない。
評価項目6エクセルギー損失の計算がよく出来て、エネルギーの有効利用が深く理解できる。エクセルギー損失の計算が出来て、エネルギーの有効利用が理解できる。エクセルギー損失の計算が出来ず、エネルギーの有効利用が理解できない。
評価項目7熱力学の一般関係式をよく計算できる。熱力学の一般関係式を計算できる。熱力学の一般関係式を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
熱を動力に変換することによって人類は巨大な工業社会を形成し生活を豊かにしてきた。熱力学の講義では、熱・動力変換装置としてのサイクルやその変換効率を学ぶことを主たる目的とする。そのために、まず熱や仕事に関する基礎概念やエネルギー保存則を学び、次に完全ガスをはじめとする作動物質の性質と状態変化を学び、サイクルの熱効率の導き方を学ぶ。つぎに工業的に重要な蒸気と蒸気サイクルについて学ぶ。さらにエントロピー概念とエクセルギー概念からエネルギーの有効利用について学ぶ。
この科目は企業で冷熱機器の研究開発を担当していた教員が、その経験を活かし、熱サイクルなどの設計・分析手法について講義形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
講義形式の授業である。毎回の授業で課題を課し、理解を深める。
注意点:
本科目は、授業で保証する学習時間と予習・復習及び課題レポート作成に必要な標準的な自己学習時間の総計が、90時間に相当する学習内容である。熱力学の知識体系はシンプルで基礎概念になれると全体構造が見えてくるから、講義ではノートをきちんと取り、基礎概念を体と頭に馴染ませること。またテキストの演習問題には詳しい解答をつけているのでやってみること。
合格の対象としない欠席条件(割合) 1/3以上の欠課

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 温度と熱および圧力と仕事(1) 熱力学的概念である温度、熱量、比熱、顕熱・潜熱等について理解する。圧力と圧力がなす仕事について学び、閉じた系の絶対仕事を計算することができる。
2週 圧力と仕事(2)および熱力学の第一法則と内部エネルギー 開いた系の工業仕事の計算ができる。ジュールの実験とエネルギー保存則について学び、内部エネルギーの概念を入れたと閉じた系のエネルギー式を理解できる。
3週 熱力学の第一法則とエンタルピーおよび完全ガスの状態式、内部エネルギーおよび比熱 開いた系のエネルギー式と流動系のエネルギー式を導くとともにエンタルピーの概念を理解できる。完全ガスの圧力-体積-温度間の関係式、内部エネルギーおよび比熱の特性について理解できる。
4週 完全ガスの熱力学第一法則の式 完全ガスの熱力学第一法則の式を理解する。
5週 完全ガスの状態変化

完全ガスの等温変化、等容変化、等圧変化、断熱変化の式、ポリトロープ変化とその際の熱と仕事について学ぶ。
6週 可逆変化・不可逆変化とカルノーサイクル 状態変化における可逆過程・不可逆過程について学び、最大熱効率であるかルノーサイクルの出力と熱効率について学ぶ。
7週 クラジウスの積分とエントロピー カルノーサイクルからクラジウスの積分を導き、エントロピーと呼ばれる状態量が導かれるに至った経緯を学ぶ。
8週 中間試験
2ndQ
9週 完全ガスの状態変化とT-S線図 完全ガスの様々な状態変化をT-S線図とp-v線図に描き、授受される熱量・仕事量を扱う。
10週 熱力学第二法則とエントロピー増大の法則 不可逆過程においてエントロピーが増大することを学び、エントロピーの概念に慣れる。
11週 不可逆変化と熱力学第二法則 不可逆過程があると、熱サイクルの性能が低下することを学ぶ。
12週 内燃機関の熱サイクル オットーサイクル、ディーゼルサイクル、サバテサイクルについて仕事と熱効率について学ぶ。
13週 ガスタービンサイクルおよびエクセルギーとアネルギー ブレイトンサイクルについて仕事と熱効率について学ぶ。そして、熱エネルギーが有するエクセルギーについて学び、エネルギーの有効利用を考える。
14週 熱力学の一般関係式 熱力学で用いられる種々の一般関係式について学ぶ。
15週 熱力学の一般関係式 熱力学で用いられる種々の一般関係式について学ぶ。
16週 期末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野熱流体熱力学で用いられる各種物理量の定義と単位を説明できる。4前1
閉じた系と開いた系、系の平衡、状態量などの意味を説明できる。4前1
熱力学の第一法則を説明できる。4前1,前2,前3,前4
閉じた系と開いた系について、エネルギー式を用いて、熱、仕事、内部エネルギー、エンタルピーを計算できる。4前1,前2,前3,前4
閉じた系および開いた系が外界にする仕事をp-V線図で説明できる。4前1,前2,前3,前4
理想気体の圧力、体積、温度の関係を、状態方程式を用いて説明できる。4前1,前2,前3,前4
定積比熱、定圧比熱、比熱比および気体定数の相互関係を説明できる。4前1,前2,前3,前4
内部エネルギーやエンタルピーの変化量と温度の関係を説明できる。4前1,前2,前3,前4
等圧変化、等積変化、等温変化、断熱変化、ポリトロープ変化の意味を理解し、状態量、熱、仕事を計算できる。4前5
熱力学の第二法則を説明できる。4前6,前7,前9,前10,前11
サイクルの意味を理解し、熱機関の熱効率を計算できる。4前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13
カルノーサイクルの状態変化を理解し、熱効率を計算できる。4前6,前7,前9,前10,前11
エントロピーの定義を理解し、可逆変化および不可逆変化におけるエントロピーの変化を説明できる。4前6,前7,前9,前10,前11
サイクルをT-s線図で表現できる。4前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13
分野横断的能力汎用的技能汎用的技能汎用的技能課題の解決は直感や常識にとらわれず、論理的な手順で考えなければならないことを知っている。3
どのような過程で結論を導いたか思考の過程を他者に説明できる。3
態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性目標の実現に向けて自らを律して行動できる。3
日常の生活における時間管理、健康管理、金銭管理などができる。3
技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を認識し、技術者が社会に負っている責任を挙げることができる。3
その時々で自らの現状を認識し、将来のありたい姿に向かっていくために現状で必要な学習や活動を考えることができる。3
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業や大学等でどのように活用・応用されるかを説明できる。3
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業等でどのように活用・応用されているかを認識できる。3
企業人として活躍するために自身に必要な能力を考えることができる。3

評価割合

試験課題相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合90100000100
基礎的能力0000000
専門的能力90100000100
分野横断的能力0000000