概要:
熱を動力に変換することによって人類は巨大な工業社会を形成し生活を豊かにしてきた。熱力学の講義では、熱・動力変換装置としてのサイクルやその変換効率を学ぶことを主たる目的とする。そのために、まず熱や仕事に関する基礎概念やエネルギー保存則を学び、次に完全ガスをはじめとする作動物質の性質と状態変化を学び、サイクルの熱効率の導き方を学ぶ。つぎに工業的に重要な蒸気と蒸気サイクルについて学ぶ。さらにエントロピー概念とエクセルギー概念からエネルギーの有効利用について学ぶ。
この科目は企業で冷熱機器の研究開発を担当していた教員が、その経験を活かし、熱サイクルなどの設計・分析手法について講義形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
講義形式の授業である。毎回の授業で課題を課し、理解を深める。
注意点:
本科目は、授業で保証する学習時間と予習・復習及び課題レポート作成に必要な標準的な自己学習時間の総計が、90時間に相当する学習内容である。熱力学の知識体系はシンプルで基礎概念になれると全体構造が見えてくるから、講義ではノートをきちんと取り、基礎概念を体と頭に馴染ませること。またテキストの演習問題には詳しい解答をつけているのでやってみること。
評価の対象としない欠席条件 (割合)1/3以上の欠課
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
温度と熱および圧力と仕事(1) |
熱力学的概念である温度、熱量、比熱、顕熱・潜熱等について理解する。圧力と圧力がなす仕事について学び、閉じた系の絶対仕事を計算することができる。
|
2週 |
圧力と仕事(2)および熱力学の第一法則と内部エネルギー |
開いた系の工業仕事の計算ができる。ジュールの実験とエネルギー保存則について学び、内部エネルギーの概念を入れたと閉じた系のエネルギー式を理解できる。
|
3週 |
熱力学の第一法則とエンタルピーおよび完全ガスの状態式、内部エネルギー |
開いた系のエネルギー式と流動系のエネルギー式を導くとともにエンタルピーの概念を理解できる。完全ガスの圧力-体積-温度間の関係式、内部エネルギーの特性について理解できる。
|
4週 |
完全ガスの比熱および熱力学第一法則の式 |
完全ガスの比熱の特性および熱力学第一法則の式を理解する。
|
5週 |
完全ガスの状態変化
|
完全ガスの等温変化、等容変化、等圧変化、断熱変化の式、ポリトロープ変化とその際の熱と仕事について学ぶ。
|
6週 |
可逆変化・不可逆変化とカルノーサイクル |
状態変化における可逆過程・不可逆過程について学び、最大熱効率であるかルノーサイクルの出力と熱効率について学ぶ。
|
7週 |
クラジウスの積分とエントロピー |
カルノーサイクルからクラジウスの積分を導き、エントロピーと呼ばれる状態量が導かれるに至った経緯を学ぶ。
|
8週 |
中間試験
|
|
2ndQ |
9週 |
完全ガスの状態変化とT-S線図 |
完全ガスの様々な状態変化をT-S線図とp-v線図に描き、授受される熱量・仕事量を扱う。
|
10週 |
熱力学第二法則とエントロピー増大の法則 |
不可逆過程においてエントロピーが増大することを学び、エントロピーの概念に慣れる。
|
11週 |
エクセルギーとアネルギー、内燃機関の熱サイクル(1) |
熱エネルギーが有するエクセルギーについて学び、エネルギーの有効利用を考える。また、オットーサイクルについて理解する。
|
12週 |
内燃機関の熱サイクル(2) |
ディーゼルサイクル、サバテサイクルについて仕事と熱効率について学ぶ。
|
13週 |
ガスタービンサイクル |
ブレイトンサイクルについて仕事と熱効率について学ぶ。熱サイクルにはタイム式とパート式があることを理解する。
|
14週 |
熱力学の一般関係式 |
熱力学で用いられる種々の一般関係式について学ぶ。
|
15週 |
熱力学の一般関係式 |
熱力学で用いられる種々の一般関係式について学ぶ。
|
16週 |
期末試験
|
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 熱流体 | 熱力学で用いられる各種物理量の定義と単位を説明できる。 | 4 | 前1 |
閉じた系と開いた系、系の平衡、状態量などの意味を説明できる。 | 4 | 前1 |
熱力学の第一法則を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
閉じた系と開いた系について、エネルギー式を用いて、熱、仕事、内部エネルギー、エンタルピーを計算できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
閉じた系および開いた系が外界にする仕事をp-V線図で説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
理想気体の圧力、体積、温度の関係を、状態方程式を用いて説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
定積比熱、定圧比熱、比熱比および気体定数の相互関係を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
内部エネルギーやエンタルピーの変化量と温度の関係を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前4 |
等圧変化、等積変化、等温変化、断熱変化、ポリトロープ変化の意味を理解し、状態量、熱、仕事を計算できる。 | 4 | 前5 |
熱力学の第二法則を説明できる。 | 4 | 前6,前7,前9,前10,前11 |
サイクルの意味を理解し、熱機関の熱効率を計算できる。 | 4 | 前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13 |
カルノーサイクルの状態変化を理解し、熱効率を計算できる。 | 4 | 前6,前7,前9,前10,前11 |
エントロピーの定義を理解し、可逆変化および不可逆変化におけるエントロピーの変化を説明できる。 | 4 | 前6,前7,前9,前10,前11 |
サイクルをT-s線図で表現できる。 | 4 | 前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13 |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 課題の解決は直感や常識にとらわれず、論理的な手順で考えなければならないことを知っている。 | 3 | 前6,前7,前9,前10,前11,前14,前15 |
どのような過程で結論を導いたか思考の過程を他者に説明できる。 | 3 | 前6,前7,前9,前10,前11,前14,前15 |
態度・志向性(人間力) | 態度・志向性 | 態度・志向性 | 目標の実現に向けて自らを律して行動できる。 | 3 | 前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16 |
日常の生活における時間管理、健康管理、金銭管理などができる。 | 3 | 前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16 |
技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を認識し、技術者が社会に負っている責任を挙げることができる。 | 3 | 前10,前11,前12,前13 |
その時々で自らの現状を認識し、将来のありたい姿に向かっていくために現状で必要な学習や活動を考えることができる。 | 3 | 前10,前11,前12,前13 |
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業や大学等でどのように活用・応用されるかを説明できる。 | 3 | 前12,前13 |
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業等でどのように活用・応用されているかを認識できる。 | 3 | 前12,前13 |
企業人として活躍するために自身に必要な能力を考えることができる。 | 3 | 前12,前13 |