技術者倫理

科目基礎情報

学校 明石工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 技術者倫理
科目番号 0001 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 建築・都市システム工学専攻 対象学年 専1
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 教科書:齊藤・坂下編:「はじめての工学倫理」、昭和堂その他、適宜プリントを配付
担当教員 伊藤 均

到達目標

(1)技術者の業務はどのような特徴を持つか、またそれに対応して、技術者の負う倫理的責任はどのような内容のものかを理解すること。
(2)技術者はその日常業務において、どのような倫理的問題に直面する可能性があるかを理解すること。
(3)技術者に関係する、特に上記の問題に対処する際に重要な社会制度にはどのようなものがあるかについて、十分な知識を身に付けること。
(4)(1)~(3)の理解や知識に基づいて、技術者が出会う典型的な倫理問題に対して、有効な対処策を考案できる能力を身に付けること。
以上のうち(1)~(3)は学習・教育目標(C)に、(4)は学習・教育目標(A)に関係する。
目標を達成するためには指定テキストの事前学習が必要である。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1技術者業務の特徴と技術者の倫理的責任を十分に理解している。技術者業務の特徴と技術者の倫理的責任を理解している。技術者業務の特徴と技術者の倫理的責任を十分に理解できていない。
評価項目2技術者はどのような倫理的問題に直面する可能性があるかを十分に理解している。技術者はどのような倫理的問題に直面する可能性があるかを理解している。技術者はどのような倫理的問題に直面する可能性があるかを理解できていない。
評価項目3技術者に関係する重要な社会制度について十分な知識を身に付けている。技術者に関係する重要な社会制度について知識を身に付けている。技術者に関係する重要な社会制度について知識を身に付けていない。
評価項目4技術者が出会う倫理問題に関して有効な対処策を考案できる能力を十分に身に付けている。技術者が出会う倫理問題に関して有効な対処策を考案できる能力を身に付けている。技術者が出会う倫理問題に関して有効な対処策を考案できる能力を身に付けていない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育目標 (A) 説明 閉じる
学習・教育目標 (C) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
現代人の日常生活は、高度に発達した科学技術の上に成り立っている。この科学技術は、専門知識を身に付けた技術者によって運用されており、技術者は、その専門知識に基づいて、科学技術を適切に運用していく責任を、社会に対して負っているのである。この責任は、現在その重要性を増してきており、また社会の関心も高まっている。この授業では、技術者の負うこの責任に関してその具体的な内容、それを果たす際どのような問題が生じるか、また、その対処手段について考察する。
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。毎回最後に授業内容のまとめや意見等を書いて提出するようにし、それを小レポートとして評価する。
本科目の連絡員は面田が担当する。
注意点:
本科目は、授業で保証する学習時間と、予習・復習及び課題レポート作成に必要な標準的な自己学習時間の総計が、90時間に相当する学習内容である。授業では、ビデオや新聞記事等を使用し、昨今の事故や企業モラルに関する事例を多く取り上げる。授業中、適宜参考資料等も紹介するので、専門分野以外のことにも広く関心を持って取り組んでほしい。
合格の対象としない欠席条件(割合) 1/3以上の欠課

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 なぜ技術者倫理なのか
技術者を志すものがなぜ倫理を学ぶ必要があるのか。技術者と倫理とのつながりを、今日の社会的背景や、工学系学協会による倫理綱領の制定等から明らかにし、学び、意義を確認する。
技術者と倫理とのつながりを、今日の社会背景や倫理綱領等との関係から理解する。
2週 チャレンジャー号事故1
技術者倫理においてもっとも有名な、スペースシャトル・チャレンジャー号の事故を取り上げ、組織における技術者の判断と、経営者の判断について述べる。
技術者判断と経営者判断の特徴や関係に関して理解する。
3週 チャレンジャー号事故2
前回に続いて、チャレンジャー号事故の事例を手掛かりとして、組織におけるリスクマネジメントが有効に機能するために、技術者はどのような責任を負うかを考える。
組織のリスクマネジメントのために技術者に要求される責任や能力を理解する。
4週 東海村JCO臨界事故1
JCOの臨界事故を取り上げ、日本の製造業を支えてきた改善活動の意義と、それが直面している課題、またそれに対して技術者がどのように関わるべきかを考える。
改善活動の意義と課題に関して理解する。
5週 東海村JCO臨界事故2
前回に続いて、JCO臨界事故を取り上げ、集団としての組織が陥りやすい集団思考について述べ、安全や品質を確保するために、技術者はそれにいかに対処すべきかを述べる。
集団志向の特徴と、それに対処して安全を実現するために必要な能力を習得する。
6週 内部告発1
近年導入された公益通報者保護制度に関して、その趣旨、現行法に対する批判、さらにはこの制度と技術者との関係について解説する。
交益通報者保護制度についての知識を習得し、その課題を理解する。
7週 内部告発2
前回に引き続き、内部告発を取り上げる。コンプライアンス体制充実の一環として、相談窓口等を設置する企業が増加している。この動きが、組織と個人の関係に有する意義を考察する。
適切な組織内行動をするためにはどのようなことに留意しなければならないかを理解する。
8週 製造物責任法
技術者にとってもっとも関係の深い法律と言われる製造物責任法に関して、その内容を確認し、技術者がそれをモノづくりの思想として定着させていくことが重要であることを述べる。
製造物責任法についての適切な知識を習得し、ものづくりの思想として活用できるようにする。
4thQ
9週 知的財産
特許制度や著作権などの制度が、技術の開発等にとって有する意義を確認するとともに、情報技術の発達等による、この制度の抱える課題等を考察する。
知的財産権についての知識を習得し、ものづくりにおけるその意義を理解する。
10週 ボパール事故1
史上最大の産業事故といわれる、インド・ボパールでの農薬工場事故を取り上げ、グローバル化の進展で今後ますます増加するであろう、海外での技術活動に伴う問題について述べる。
海外での技術活動において直面する問題についての知識を習得する。
11週 ボパール事故2
前回の内容に基づき、技術の展開には、それを取り巻く社会条件や文化、歴史、思想等との相互作用が深く関わり、技術者がそれを考慮に入れる必要性があることを考察する。
前回学習した内容に対する理解をさらに深め、海外での技術活動のために有効な方法を習得する。
12週 六本木ヒルズ回転ドア事故1
回転ドアの事故の後に行われたドアプロジェクトの活動を紹介し、失敗学の考え方や意義、リスク管理におけるハインリッヒの法則等について述べる。
失敗学とハインリッヒの法則についての知識を習得する。
13週 六本木ヒルズ回転ドア事故2
前回の内容に基づき、技術者もまた、其々が技術者としての文化を背景に持っており、それに起因する問題を克服するために、知識の伝承をいかに行うかが重要であることを述べる。
技術を理解し、有効に活用するためには、技術思想を的確に把握し、伝えることが必要であることを理解する。
14週 ユニバーサルデザイン
新たな技術の展開は、新たな権力闘争や差別を生み出す政治的側面を有すること、それに対し、ユニバーサルデザインの試みは、技術を民主化する試みであることを確認する。
ユニバーサルデザインという思想と、それを実現するために必要な制度について理解する。
15週 技術者倫理の射程
技術者による新たな技術開発は、情報社会や医療といった分野にさまざまな影響をもたらしている。
技術者は、これら他の分野の倫理とどのようなかかわりを持つべきなのかを考察する。
技術者と現代社会との関係、技術者は社会においてどのように位置づけられるべきかを理解する。
16週 期末試験実施せず

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

最終レポート小レポート・意見発表合計
総合評価割合6040100
基礎的能力6040100
専門的能力000
分野横断的能力000