設計工学演習Ⅰ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 設計工学演習Ⅰ
科目番号 0044 科目区分 専門 / 必修
授業形態 演習 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 講師作成の資料による
担当教員 植木 直重

到達目標

1.機械構造物の設計者として、工学系知識以外に企画、品質、コスト、納期、試作評価に至るまでの具体的な検討手法を理解し、企業における設計者の役割および設計工学プロセスを具体的に説明することができる。
   
2.機械工学系設計者が習得しておくべき主要な機械要素部品として、ボルト、軸受、歯車、バネの設計方法を、また加工技術として鋼の表面処理法、腐食現象を理解する。

3.交通関係機械部品の設計工学の知識として不可欠な、疲労安全率、寿命を求める手法を具体的に説明することができる。

4.アルミニューム製自動車用車輪の設計の仕組みを説明することができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1企業における設計者は、工学系の知識以外に、品質工学、信頼性工学などを駆使するとともに、法規、規格、企業化調査、コスト、納期、試作品評価など多岐に渡る検討を行い、顧客の要求仕様を満足していることを確認しなければならない。設計者は工学系の知識以外に規格、企業化調査、コストなどの検討と、試作品の評価試験を行い顧客の要求仕様を満足していることを確認しなければならない。設計者は顧客の要求仕様を満足しなければならない。
評価項目2機械構造物の設計者は、ボルト、歯車、軸受、バネ、などの主要な機械要素部品を個々の部品の設計法を駆使し設計するとともに、更には最適な溶接、表面処理、塗装などの応用加工施工法を適用して、顧客の要求仕様を満足しなければならない。機械構造物にはボルト、歯車などの機械要素部品が用いられ、更に溶接、表面処理などの加工技術が適用されるが、顧客の仕様を満たす設計が適用されなければならない。機械構造物には都度ボルト、歯車などの要素部品が使われ、更には溶接、表面処理などが適用される。
評価項目3鋼構造物の疲労強度は疲労試験から得られるS-N線図で評価されるが、機械構造物ではその構造物に発生する平均応力と変動応力、用いられている材料の耐力と疲労限度から耐久限度線図を適用して得られる疲労安全率が、顧客の要求仕様を満足しなければならない。鋼構造物の疲労強度はS-N線図から求めることができる。更にはこれらの結果を適用した耐久限度線図から得られる疲労安全率は顧客の要求仕様を満足しなければならない。機械構造物の設計においてはその構造物の疲労安全性を評価し設計しなければならない。
評価項目4自動車用車輪はタイヤ内圧とボルトによるハブへの取付けにより弾性変形したのち路面からの反力として変動する輪荷重を受けている。この様に複雑な負荷に対しては歪みゲージ計測と実体車輪の疲労強度評価から安全率と走行寿命を計算する設計が行われる。自動車用車輪は複雑な複合的負荷を受けるので、歪み測定と実体車輪の強度を元に設計される。自動車用車輪では、実体品を用いた計測により設計が行われる。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (4) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2a) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2c) 説明 閉じる
システム創成工学教育プログラム学習・教育目標 D-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 設計工学とは、工学系の知識を活用した設計プロセス以外に企画、品質、コスト、納期、試作評価に至るまで、様々な知識を駆使して要求された仕様に合った製品を社会に送り出す技術である。本講義では企業が取り入れている設計業務の仕組みおよび主要な機械要素部品の設計法を学習し、具体的な事例として鉄道台車用車輪、自動車用車輪の設計業務の内容を学ぶ。
授業の進め方・方法:
 前期は企業が設計の際に行なっている種々のプロセスについて学ぶと共に、機械構造物に主に用いられる代表的な機械要素部品の設計法と鋼の疲労について学び理解を深める。
 後期は交通関係部品として、鉄道台車用車輪・車軸およびアルミニューム製自動車用車輪を事例に取り上げ、設計時に企業が実際に行っている設計手法を学ぶ。
注意点:
関連科目:
 応用数学、材料力学、金属材料学などとの関連が深い。
学習指針:
 今まで学んできた工学系学問以外に、企業が設計時に取り組むアプローチ、主要な機械要素部品の設計法および交通関係部品の設計に用いる鋼の疲労を学び総合的な設計力を理解する。
自己学習:
 設計工学で学ぶ総合的な知識は物を生産するあらゆる業界で広く応用できるので、日常生活の中から具体的なテーマと解決手法を自習する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 設計の概念 企業において設計者が担うべき役割について説明できる。
2週 企業における設計 企業で行われている設計とは何かを説明できる。
3週 設計のプロセス 企業で行われる設計の手順と仕組みを説明できる。
4週 設計で決定する事項 設計で何を決めるのか、どう評価するのかを説明できる。
5週 法律と規格 設計上考慮しなければならない法律と規格を説明できる。
6週 試作と評価技術 設計試作品を評価する方法を説明できる。
7週 前期中間試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
2ndQ
9週 工学系知識Ⅰ(材料) 機械構造物に用いられる主要な材料とその特長を説明できる。
10週 工学系知識Ⅱ (表面処理等) 鋼製品に対する表面処理法および溶接法が説明できること。
11週 機械要素設計Ⅰ(ボルト) ボルト締結理論について説明できる。
12週 機械要素設計Ⅱ(歯車、バネ) 歯車およびバネの設計方法について説明できる。
13週 機械要素設計Ⅲ(軸受等) 軸受、接手の設計方法について説明できる。
14週 疲れ強さ 疲労、残留応力について説明できる。
15週 前期末試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
後期
3rdQ
1週 鉄道台車の運動 鉄道台車の運動を説明できる。
2週 鉄道用車輪の設計 鉄道用車輪の運動と設計方法を説明できる。
3週 鉄道用車軸の設計 鉄道用車軸の運動と設計方法を説明できる。
4週 自動車用車輪の運動 自動車用車輪の運動を説明できる。
5週 自動車用車輪の設計 自動車用車輪の設計手順を説明できる。
6週 自動車用車輪の法規と規格 自動車用車輪の設計において適用される法規と規格を説明できる。
7週 後期中間試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
4thQ
9週 自動車用車輪の強度評価 自動車用車輪の強度評価方法を説明できる。
10週 自動車用車輪の走行試験 自動車用車輪の走行試験方法を説明できる。
11週 自動車用車輪の寿命 自動車用車輪の寿命評価方法を説明できる。
12週 自動車用車輪の問題点 自動車用車輪の市場トラブルとは何かを説明できる。
13週 自動車用車輪の対策 市場トラブルに対処する主要な対策を説明できる。
14週 設計工学の今後 今後の設計工学で学ぶ知識の展望を説明できる。
15週 学年末試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野機械設計機械設計の方法を理解できる。3前3,前4
標準規格の意義を説明できる。3前5
許容応力、安全率、疲労破壊、応力集中の意味を説明できる。3前14
ねじ、ボルト・ナットの種類、特徴、用途、規格を理解し、適用できる。3前11
ボルト・ナット結合における締め付けトルクを計算できる。3前11
ボルトに作用するせん断応力、接触面圧を計算できる。3前11
軸の種類と用途を理解し、適用できる。3前13
軸の強度、変形、危険速度を計算できる。3前13
軸継手の種類と用途を理解し、適用できる。3前13
滑り軸受の構造と種類を説明できる。3前13
転がり軸受の構造、種類、寿命を説明できる。3前13
歯車の種類、各部の名称、歯型曲線、歯の大きさの表し方を説明できる。3前12
すべり率、歯の切下げ、かみあい率を説明できる。3前12
標準平歯車と転位歯車の違いを説明できる。3前12
標準平歯車について、歯の曲げ強さおよび歯面強さを計算できる。3前12
歯車列の速度伝達比を計算できる。3前12
専門的能力の実質化共同教育共同教育クライアント(企業及び社会)の要求に適合するシステムやプロセスを開発することができる。3前3,後14
企画立案から実行するまでのプロセスを持続可能性の実現性を配慮して実行することができる。3前3
品質、コスト、効率、スピード、納期などに対する視点を持つことができる。3前3
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識・教養が、企業及び社会でどのように活用されているかを理解し、技術・応用サービスの実施ができる。3前2,前3,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
地域や企業の現実の問題を踏まえ、その課題を明確化し、解決することができる。3前2,前3,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
問題解決のために、最適なチームワーク力、リーダーシップ力、マネジメント力などを身に付けることができる。3前4,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、幅広い人間性と問題解決力、社会貢献などの必要性を理解できる。3前1,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、生きる喜びや誇りを実感し、知恵や感性、チャレンジ精神などを駆使して実践創造的な活動を楽しむことを理解できる。3前1,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、社会に対して有益な価値を提供するために存在し、社会の期待に十分応えられてこそ、存在の価値のあることを理解できる。3前1,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
企業人としても成長していく自分を意識し、継続的な自己研さんや学習が必要であることを理解できる。3前1,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13

評価割合

試験演習・レポート合計
総合評価割合8020100
基礎的能力201030
専門的能力601070
分野横断的能力000