設計工学演習Ⅱ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 設計工学演習Ⅱ
科目番号 0046 科目区分 専門 / 必修
授業形態 演習 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 講師作成の資料による
担当教員 植木 直重

到達目標

1.機械構造物の設計者として、工学系知識以外に経営分析、信頼性工学や統計的分析法を学び、企業における設計者の役割および設計プロセスを具体的に表すことができる。
   
2.工学系設計者として習得しておく主要な機械要素として、ボルト締結理論および軸受、歯車の設計法を、また加工技術として溶接法、鋼の表面処理法、腐食現象を理解する。

3.交通関係機械部品に適用される、疲労限度設計法と損傷許容設計法、および疲労安全率、線形累積被害則を適用した寿命評価、破壊力学を用いたき裂の進展挙動を求める手法を具体的に説明することができる。

4.自動車用車輪の現在の設計の仕組みとその評価方法を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1起業における設計者は顧客の要求仕様を満足するために、材料や工学系の知識以外に、法規、規格、経営分析、品質工学としての多変量解析やCP値評価、信頼性工学としてFMEA解析などを多様に駆使しなければならない。設計者は工学系の知識以外に法律、規格、経営分析さらには品質工学や信頼性工学の手法を活用した評価を行い顧客の要求仕様を満足しなければならない。設計者は顧客の要求仕様を満足しなければならない。
評価項目2ボルト締結体においてナットの締付けトルクを軸力に正確に伝達ための締付け法は角度法である。締付け時には摩擦力の確保が重要となる。歯車の歯元の強度はルイス式で、歯面強度はヘルツ式で計算される。軸受はラジアル荷重とアキシャル荷重のどちらを支持するかで大きく2つに分けることができる。ボルト締結体では軸力を確保するためにトルクレンチによる締付けが行われる。 歯車の設計では、歯元の強度と歯面の強度が重要である。軸受けには支持する荷重により2種類のタイプがある。ボルト締結とは、ナットを規定トルクで締付けることである。 歯車は動力を伝達する機械要素であり、軸受は回転体を支える機械要素である。
評価項目3機械構造物の疲労に対する余裕度を示す疲労安全率は、平均応力と変動応力、さらにはその材料の耐力と疲労限度を耐久限度線図に適用し得ることができる。またS-N線図に線形累積被害則を適用することで寿命評価をおこなう。破壊問題が深刻なケースでは、破壊力学のパリス則や応力拡大係数K値を求めてき裂の進展挙動を評価する。機械構造物の疲労は耐久限度線図を適用して安全率で評価する。 き裂の進展と破壊の有無に関しては、破壊力学から求めた応力拡大係数や破壊靭性値を適用し評価する。機械構造物は疲労破壊しないように設計しなければならない。
評価項目4自動車用車輪はタイヤ空気圧等による平均応力と、走行中の路面からの輪荷重による変動応力を受けるが、ばらつきも大きく複雑な負荷を受けている。そこで室内試験機に実体車輪を供試し、車体の振動加速度等市場で発生するばらつきを変化させての歪み応力の測定と疲労試験から疲労安全率や走行寿命を求める設計が行われる。自動車用車輪は複雑な複合的負荷を受けるので、歪みゲージによる実体車輪の応力測定と疲労試験を元に設計を行なっている。自動車用車輪では、実体品を用いた計測により設計が行われる。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2a) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2c) 説明 閉じる
システム創成工学教育プログラム学習・教育目標 D-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 現在の設計工学は、工学系の学問のみならず経営工学、信頼性工学および統計的分析法を駆使して要求された仕様に合った製品を作り出す総合技術である。本講義では企業が取り入れている種々の合理的な設計全般を学習し、具体的な事例として自動車用車輪の設計業務を通しその設計手法を学ぶ。
授業の進め方・方法:
 前期は企業が取り入れている経営分析、信頼性工学および統計的分析法について学ぶと共に、機械構造物に主に用いられる機械要素部品の設計法と鋼の疲労および破壊力学について学ぶ。
 後期は交通関係部品として、鉄道用輪軸と自動車用車輪を取り上げ、企業が実際に行っている疲労限度設計法、線形累積被害則による寿命評価法および破壊力学を応用した評価の事例を学ぶ。
注意点:
関連科目:
 応用数学、材料力学、金属材料学などとの関連が深い。
学習指針:
 今まで学んできた工学系学問以外に、経営分析、信頼性工学、統計的分析法、機械構造物の設計にとって重要な主要な機械要素部品の設計方法、疲労限度設計法、線形累積被害則を適用した寿命評価法、および破壊力学を学び総合的な設計力を理解する。
自己学習:
 設計工学で学ぶ総合的な知識は物を生産するあらゆる業界で広く応用できるので、日常生活の中から具体的なテーマと解決手法を自習する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 設計の概念 広義の設計における担うべき役割について説明できる。
2週 企業における設計 企業で行われている設計とは何かを説明できる。
3週 設計のプロセス 企業で行われている設計の手順と仕組みを説明できる。
4週 設計で決定する事項 設計で何を決めるのか、どう評価するのかを説明できる。
5週 法律と規格 設計上考慮しなければならない法律と規格を説明できる。
6週 工学系以外の知識 設計品の品質を評価する品質工学および統計的分析手法を説明できる。
7週 前期中間試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
2ndQ
9週 工学系知識Ⅰ(材料) 機械構造物に用いられる主要な材料とその特長を説明できる。
10週 工学系知識Ⅱ(表面処理等) 鋼製品の表面硬化法、表面処理法、溶接法を説明できる。
11週 機械要素設計Ⅰ(ボルト) ボルト締結理論について説明できる。
12週 機械要素設計Ⅱ(歯車、バネ) 歯車およびバネの設計方法について説明できる。
13週 機械要素設計Ⅲ(軸受等) 軸受、継ぎ手の設計方法について説明できる。
14週 疲れ強さ 疲労、残留応力について説明できる。
15週 前期末試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
後期
3rdQ
1週 破壊力学 き裂がある時のき裂の進展挙動と破壊現象を説明することができる。
2週 鉄道台車の運動 鉄道台車の運動を説明できる。
3週 鉄道用車輪、車軸の設計 鉄道用車輪、車軸の設計方法を説明できる。
4週 自動車用車輪の運動 自動車用車輪の運動を説明できる。
5週 自動車用車輪の設計 自動車用車輪の設計手順を説明できる。
6週 自動車用車輪の法規と規格 自動車用車輪の設計において適用される法規と規格を説明できる。
7週 後期中間試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。
4thQ
9週 自動車用車輪の強度評価 自動車用車輪の強度評価方法を説明できる。
10週 自動車用車輪の走行試験 自動車用車輪の走行試験方法を説明できる。
11週 自動車用車輪の寿命 自動車用車輪の寿命評価方法を説明できる。
12週 自動車用車輪の問題点 自動車用車輪の市場トラブルとは何かを説明できる。
13週 自動車用車輪の対策 市場トラブルに対処する主要な対策を説明できる。
14週 設計工学の今後 今後の設計工学で学ぶ知識の展望を説明できる。
15週 学年末試験 授業内容を理解し試験問題に対して正しく解答することができる。
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し、理解が不十分な点を解消する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野機械設計機械設計の方法を理解できる。4前2
標準規格の意義を説明できる。3前5,後6
許容応力、安全率、疲労破壊、応力集中の意味を説明できる。3前14
ねじ、ボルト・ナットの種類、特徴、用途、規格を理解し、適用できる。3前11
ボルト・ナット結合における締め付けトルクを計算できる。3前11
ボルトに作用するせん断応力、接触面圧を計算できる。3前11
軸の種類と用途を理解し、適用できる。3前13
軸の強度、変形、危険速度を計算できる。3前13
軸継手の種類と用途を理解し、適用できる。3前13
滑り軸受の構造と種類を説明できる。3前13
転がり軸受の構造、種類、寿命を説明できる。3前13
歯車の種類、各部の名称、歯型曲線、歯の大きさの表し方を説明できる。3前12
すべり率、歯の切下げ、かみあい率を説明できる。3前12
標準平歯車と転位歯車の違いを説明できる。3前12
標準平歯車について、歯の曲げ強さおよび歯面強さを計算できる。3前12
歯車列の速度伝達比を計算できる。3前12
専門的能力の実質化共同教育共同教育クライアント(企業及び社会)の要求に適合するシステムやプロセスを開発することができる。3前2
企画立案から実行するまでのプロセスを持続可能性の実現性を配慮して実行することができる。3前3
品質、コスト、効率、スピード、納期などに対する視点を持つことができる。3前3
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識・教養が、企業及び社会でどのように活用されているかを理解し、技術・応用サービスの実施ができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
地域や企業の現実の問題を踏まえ、その課題を明確化し、解決することができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
問題解決のために、最適なチームワーク力、リーダーシップ力、マネジメント力などを身に付けることができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、幅広い人間性と問題解決力、社会貢献などの必要性を理解できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、生きる喜びや誇りを実感し、知恵や感性、チャレンジ精神などを駆使して実践創造的な活動を楽しむことを理解できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
技術者として、社会に対して有益な価値を提供するために存在し、社会の期待に十分応えられてこそ、存在の価値のあることを理解できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13
企業人としても成長していく自分を意識し、継続的な自己研さんや学習が必要であることを理解できる。3前3,後2,後3,後4,後5,後6,後9,後10,後11,後12,後13

評価割合

試験レポート合計
総合評価割合8020100
基礎的能力201030
専門的能力601070
分野横断的能力000