基礎電気回路

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 基礎電気回路
科目番号 0017 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気工学科 対象学年 1
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「電気の基本としくみがよくわかる本」,ナツメ社,福田 務 著 … この科目専用の教科書ではなく,5年間通して参考にする本
参考書:「はじめて学ぶ 電気回路計算法の完全研究」,オーム社,永田 博義 著 他
   :「中学生の知識で数学脳を鍛える」,大和書房,鈴木 貫太郎 著
補助教材:適宜準備
担当教員 石飛 学

到達目標

・直流回路の基本用語について,定義と意味を理解して記号と単位が書ける。
・電気エネルギーと帯電現象の関係がわかる。
・オームの法則をベースに,電気抵抗の性質,直並列接続の合成抵抗,分圧と分流がわかる。
・電流源と電圧源の性質がわかる。
・キルヒホッフの法則を用いて回路の解析ができる。(枝電流法,網目電流法)
・重ねの理,テブナンとノートンの等価回路,ブリッジ回路を用いて回路の解析ができる。
・ダイオードの等価回路を描き,LED駆動回路の設計ができる。(太陽電池の等価回路も描けること)
・整合条件を理解している。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1直流回路の基本用語について,定義と意味を理解して記号と単位が書け,定義から基本式が導出できる。直流回路の基本用語について,定義と意味を理解して記号と単位が書ける。直流回路の基本用語について,定義と意味を理解しておらず,記号と単位も書けない。
評価項目2電気の位置エネルギーを使って,対象とするものの電気的特性が説明できる。電気エネルギーと帯電現象の関係がわかる。電気エネルギーと帯電現象の関係がわからない。
評価項目3オームの法則を使って,電気抵抗の性質,直並列接続の合成抵抗,分圧と分流の特性を説明できる。オームの法則をベースに,電気抵抗の性質,直並列接続の合成抵抗,分圧と分流がわかる。電気抵抗の性質,直並列接続の合成抵抗,分圧と分流について理解できていない。
評価項目4電流源と電圧源の性質がわかり,使うことができる。電流源と電圧源の性質がわかる。電流源と電圧源がどんなものかわからない。
評価項目5電流,電圧,電位の特性(キルヒホッフの法則)を,図で描きながら説明でき,回路解析に利用できる。キルヒホッフの法則を用いて回路の解析ができる。(枝電流法,網目電流法)枝電流法,網目電流法が使えない。
評価項目6重ねの理,テブナン,ノートン,ブリッジの中から適したものを瞬時に選択し,回路解法に利用できる。重ねの理,テブナンとノートンの等価回路,ブリッジ回路を用いて回路の解析ができる。重ねの理,テブナンとノートンの等価回路やブリッジ回路を回路解法に用いることができない。
評価項目7誤差まで考えて,LED駆動回路の設計ができる。ダイオードの等価回路を描き,LED駆動回路の設計ができる。(太陽電池の等価回路も描けること)安全なLED駆動回路が設計できない。
評価項目8整合条件が成り立つときと,条件からずれたときの電力特性を説明できる。整合条件を理解している。整合条件を使えない。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
電気の世界で使われる電圧,電流などの基本用語や使用される単位を理解し,またキルヒホッフの法則や等価回路変換など,回路解析に必要な基礎理論とその使い方を習得する。上記の学習を通して,多くの中学校や塾で勧められてきた学習の仕方(演習を数こなして,解答パターンをそのまま暗記し積み上げていく学習法)から離脱し,アルゴリズムを構築していくこれからの方法を身につけることが真の目的である。
授業の進め方・方法:
電気って何?からスタートし,電気の基本用語の習得と回路の解析方法に重点をおいて講義を進めていく。直流回路(回路パズル)を中心に扱い,LED駆動回路の設計,太陽電池や環境に関わるトピックス等も取り上げる。この授業では,電気工学科とはどんなところか? この先どうなっていくのか? どのように勉強したら良いか等の話題も提供する。
注意点:
特別な天才でない限り,ほとんどの中学校や塾でやらされてきた次の考え方,勉強方法が通用しない。
1) 演習を数こなして身につけ,そのパターンを当てはめていく考え方
2) 授業中板書の写しに専念し,後で読み返しながら問題演習する方法
3) 定期テスト前に問題演習を繰り返し,パターンを身に着ける方法
小学生のように無垢になって,「暗記する」から「“なぜ” を通して理解する」に戻してほしい。最初慣れないかもしれないが,板書の全コピーを止めて必要な個所だけメモし(口頭で“重要”と念押しする個所は特に大事。耳を使って!),その場で考え修得するよう努めてほしい。一方的な授業はつまらないので,質問攻撃を望む。疑問点が残った場合,放課後等利用して早めに質問や相談に来ること。
次の授業までに前の授業の疑問点を全て解消する復習中心の学習を心がけること。できれば,理解度に限らず絵を描きながら基本事項を他者に教え,本当の理解に至っていなかった箇所のあぶり出しと伝える側の視点にたったアクティブラーニングを行ってほしい。

学修単位の履修上の注意

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 イントロダクション 授業の概要や進め方を理解する。また,電気とは何でどこにあるのか(電荷,帯電,電流等)理解する。
2週 電気の大きさとは? 導体と絶縁体,電気抵抗,イオンとはどんなものか理解する。その上で,電気の大きさの表し方を習得する。
3週 電流の定義,エネルギーとは? 電流の定義とその特性,各種エネルギーと電気エネルギーの関係,エネルギーが高い・低い,保存則とは何かについて理解する。
4週 エントロピー増大の法則,エクセルギーとは? エネルギーとエクセルギーの違い,エントロピー増大の法則とはどんなものか理解する。
5週 仕事とは? 電気エネルギーと電力 仕事とは何か?,「エントロピー増大の法則」について確認し,エネルギーや仕事量の表し方,電力,電力量等について習得する。
6週 電位,電圧,GNDとは? エネルギーの観点から電位,電位差,電圧が何を表しているのか理解する。また,接地,アース,グランドについて理解する。
7週 直流回路,起電力とは? 電流を循環させる回路と起電力について理解した上,演習を通して直流電圧源の扱い方を修得する。
8週 確認と演習 回路図の書き方を身につける。また演習を通して,これまで学んだ技術を定着させる。
2ndQ
9週 抵抗とオームの法則 電池,電気抵抗とオームの法則について理解する。
10週 抵抗の性質 電気抵抗の性質と抵抗率,導電率について理解する。また直列,並列接続した抵抗の合成抵抗値の求め方を身につける。
11週 分圧と分流,電圧源と電流源 複数個の抵抗をもつ直流回路の計算法,分圧および分流の考え方を身につける。また電圧源,電流源,ショートとオープンについて理解する。
12週 電圧降下,回路網からキルヒホッフの法則へ 電圧降下,回路網と回路網の法則(キルヒホッフの法則)を理解し,これを用いた計算法(枝電流法)を習得する。
13週 枝電流法 枝電流法を用いた直流回路の解析法を身につける。
14週 直流回路演習(1) 演習を通して,枝電流法を修得する。
15週 確認と演習 演習を通して,これまで学んだ技術における未完成部を見つける。
16週 理解度確認テスト これまで学んだ技術を定着させる。
後期
3rdQ
1週 網目電流法 網目電流法を用いた直流回路の解析法を身につける。
2週 直流回路演習(2) 演習を通して,網目電流法を定着させる。
3週 重ねの理 重ねの理とこれを用いた回路解析法を身につける。
4週 LED駆動回路の設計Ⅰ ダイオードの扱い方(等価回路を含む)とLED駆動回路の設計方法を身につける。
5週 LED駆動回路の設計Ⅱ E系列について理解する。また複数 LEDをもつ回路の設計方法を身につける。
6週 ダイオードを含んだ直流回路,太陽電池 演習を通して,ダイオードを含んだ直流回路の考え方を学ぶ。演習には太陽電池も含める。また,太陽電池の能力を最大限に引き出す方法についても修得する。
7週 v-i特性のグラフ 抵抗,ダイオード,電圧源,電流源とこの組み合わせによるv-i特性をグラフで描けるようにする。
8週 確認と演習 演習を通して,これまで学んだ技術を定着させる。
4thQ
9週 テブナンの等価回路(鳳-テブナンの定理) 演習を通して,「テブナンの等価回路」の導出法を習得する。
10週 ノートンの等価回路,帆足‐ミルマンの定理 「ノートンの等価回路」の導出法を習得する。また,ノートンの等価回路を使って,帆足‐ミルマンの定理を導出できるようにする。
11週 直流回路における整合,ブリッジ回路 直流回路における整合およびホイートストンブリッジについて理解する。
12週 ブリッジ回路の応用 ブリッジ回路を応用した各種回路パズルを通し,回路の簡単化させる方法を身につける。
13週 2年生に向けてⅠ
回路素子(L,C,R)について,Δ-Y変換,アナログからディジタルへ,俯瞰力のトレーニング等,クラスの状況に合わせて内容を選択する。
選択した内容を習得する。
14週 2年生に向けてⅡ
回路素子(L,C,R)について,Δ-Y変換,アナログからディジタルへ,俯瞰力のトレーニング等,クラスの状況に合わせて内容を選択する。
選択した内容を習得する。
15週 確認と演習 演習を通して,これまで学んだ技術における未完成部を見つける。
16週 理解度確認テスト これまで学んだ技術を定着させる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路電荷と電流、電圧を説明できる。4前2,前3,前4,前5,前7,前8,前9,前12
オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。4前6,前8,前12
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。4前11,前12
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。4前10,前12
ブリッジ回路を計算し、平衡条件を求められる。4後11,後12,後15
電力量と電力を説明し、これらを計算できる。3前9,前10
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。1
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。4後1,後15
網目電流法を用いて回路の計算ができる。4前13,前14,後15
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。4後8,後9,後15

評価割合

定期試験その他(課題,授業態度(授業に積極的でない場合に減点))合計
総合評価割合8020100
基礎的能力8020100
専門的能力000
分野横断的能力000